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5 ユリアの決意

 テディはユリア達に謝って見せたが、その内容は理解しがたかった。

 セドリックが事前に尋ねたときも、返答は同じだったという。

 とはいえ、こんなにも小さな子どもを保護者の元に返せないというのは問題である。

「何か事情があるのであろうな。仕方がない、私が陛下にお尋ねしてみよう。精霊の加護を受けている子どもだ。陛下が知らない、ということはないだろう。」

 マグリッドはそう言って、テディを抱き上げた。

「身元が判明するまでは、この侯爵家で過ごすがよい。そなたはユリアの命の恩人だからな。丁重に持てなそうではないか。」

 そう言って、幼いテディの頭をよしよしと撫でる。

 ユリアは知っている。自分のこの可愛いもの好きは、父から受け継がれたものだということを。

 マグリッドはデレデレと表情を緩めている。命の恩人云々言っているが、きっとテディを思う存分可愛がりたいだけだ。

「ささ、皆様、お嬢様はお目覚めになったばかりですよ。」

 メルの苦言に、家族の面々は名残惜しむように部屋を出ていった。

「ありがとう、メル。とりあえず湯浴みがしたいわ。」

「はい、そうおっしゃると思って準備しておりますよ。ぬるめにしておくように伝えてありますが、痛みが増すといけないので、長湯は厳禁でございます。」

 メルは本当にできた侍女である。

 それから入浴介助に若い侍女がやってきて、ユリアははっとした。

「ねえ、クレアとベルはどうしているのかしら。」

 セシリア王立学園で侍女を務めていた二人、同じ馬車に乗っていたが、それから見かけていない。

 メルは表情を曇らせ、返答に困ったように黙り込んだ。そして、

「命は、無事でございます。」

 と答えた。

「つまり?はっきりと教えてちょうだい。」

 覚悟して尋ねた。

「クレアは頭を殴打されたために頭部から出血がありましたが、意識も戻り、今は安静にしております。ベルは・・・・・お嬢様が連れていかれないようにと随分暴れたらしく、数カ所を殴打された挙句、背中を刃物で切りつけられ、今は昏睡状態でございます。」

「・・・・そう。」

「旦那様の指示により、今後、クレアは男爵家に連絡を取り、実家に帰って静養するように手配しております。ベルは動かせぬほど重症ですので、当分は侯爵家の客間で看病することとなります。」

 ユリアはベッドの上掛けをぎゅっと握りしめた。

 テディのおかげでことなきを得たが、犯人はそれほど本気だったのだ。

 今も身体は痛むけれど、意識が明確であった時間が短いからか、どこか夢の中の出来事のような感覚があった。しかし、実際に馬車は襲われ、大きな怪我を負ったものがいる。

「犯人が誰か、何が目的だったのか、はっきりとさせないとね。」

 四代侯爵家の一人娘であり、第一王子であるアレクシスの婚約者に敵意を向けたのだ。これは悪質な犯罪行為であり、重罪だ。許されることではない。

 護衛がついている侯爵家の馬車をわざわざ狙ったのだ。単純な金品目的とも思えない。

 今頃になってユリアは自分が無事であることが奇跡のように思えた。

 テディがいなかったら、今も囚われたままだったかもしれない。いや、命を失っていた可能性もある。

「弱ったままではいられないわね。」

 その後、ユリアはメルの言ったようになるべく短時間で湯浴みを済ませた。そして、傷を負った二人の侍女を見舞いにそれぞれの部屋を訪れ、事件の解決を固く心に誓ったのである。

 





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