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41 本物のアレクシス

 嵐のようだった夏季休暇は終わり、セシリア王立学園は久しぶりに会えた友人との再会でにぎわっていた。  

ユリアはどこか信じられない気持ちでいた。

 本当にアレクシスは、この学園で自分と関わりをもってくれるのだろうか。

 殊更にゆっくりとした歩調で進む。

 夏季休暇明けの初日である今日は、学生全員を講堂に集め、学園長の話を聞いて終了だ。

 講堂の席は基本的には自由だが、なんとなく身分の高い者が前に座るようになっている。

 講堂会館の入り口から中に入ると、複数の生徒が中扉の前で待ち合わせをしているようだった。

 そしてそこには、

「おはよう、ユリア」

 とびきり美しい微笑みを浮かべたアレクシスがいた。

 周囲のざわめきが一瞬止まったような気がする。

「一緒に座ろうと思って待っていたんだ」

 アレクシスは腕を曲げ、ユリアをエスコートするそぶりを見せた。

 ユリアはそっとその腕に自分の腕をかける。

「び・・・・・・っくりしました」

「なんで?」

「いや、だって・・・」

 周囲の学生たちも、突然のアレクシスとユリアの近さに、目を見張っている。

 これまでの距離感と違いすぎて、「夏季休暇に何があった!?」と興味津々だ。

「ユリア、私はね」

「?」

「久しぶりの学園生活が楽しみで仕方ないんだ」

 アレクシスは第一学年の夏に倒れ、夏季休暇明けから学園に通っていたのは泥人形のアレクシスだった。

 およそまともな学園生活ではなかったのだ。

 ユリアも辛かったが、アレクシスの方がずっと辛かったのだろう、と今なら思える。

「ええ、楽しみましょう、全力で」

 ユリアは力を込めて言った。

 以前もそうだった。周りの視線や噂話に気を取られて自分を見失ってはいけない。

 自分にできることを、全力でやっていれば、結果はついてくる。

 残り少ない学園生活だが、アレクシスと楽しめるなんて最高だ。

(そうだ、ここにアレクシス様がいるということは・・・・)

 ユリアは周囲を見回した。

 すると、

「あ・・・見つかっちゃいましたね」

「ウィリアムさん!」

 そこにはアレクシスの従者として学園に来ているウィリアムがいた。

 見つかったと言いながら、どこか嬉しそうだ。

 ニコニコしているウィリアムに、ユリアもほっこりした気持ちになる。

 認識阻害の魔法は、その存在を知っている者には効かないのだ。

 そして、あともう一人。

「あなたが、リュシードね」

 ウィリアムの隣にいた生徒は、声をかけられ、ユリアに軽く礼をとる。

「はい、ユリア様、僕がリュシード=カザウォルニアでございます」

 彼こそが、泥人形アレクシスを支え続けた影の功労者だ。

 生徒会に席を置いていたアレクシスの仕事を実際に請け負っていた彼は、宰相ギャレット=ムーデュアルお墨付きの秀才らしい。

 彼がいなければ、泥人形アレクシスの学園生活は立ち行かなかっただろう。

 アレクシスが無理に生徒会に所属していたのは、放課後に自由時間がない方が、アレクシスに接触しにくる人を牽制しやすく、また補佐しやすかったからだという。

「これからよろしくお願いしますね」

「こちらこそ」

 挨拶をすませ、アレクシスと腕を組んで、講堂へと入る。

 現れた二人の姿に、周囲がざわついた。

 アレクシスはまるで気にしていないように、堂々と視線を浴びながら講堂の一番前にユリアを誘導していく。

 アレクシスはきっとここで、学園中に知らしめようとしている。

 第一王子アレクシスの婚約者が、ユリア=シュマルフ侯爵令嬢だということを。

 皆が知っていて、けれど危うく思われていたその関係を、ここで正したいのだ。

 ユリアはそれが分かり、ゆっくりとアレクシスを見つめた。

 アレクシスはユリアに優しく微笑むだけだ。

(さあ、始まりだ)

 ユリアは新しい学園生活の幕開けを感じた。


 


 

  

 

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