33 テディとアレクシス2
この作品を読んでくださった方、また「ブックマーク」「いいね」「評価」をしてくださった方、ありがとうございます。誤字報告も参考にさせていただいております。こうして反応を返していただけるたびに、本当に読んでくれてる人がいるんだなあ、とニマニマしております。誤字、多くて本当にすみません・・・・・反省。
さあ、ようやくヒーローが大人になりました。本当に時間がかかりました。
この先を少しでも楽しみにしてもらえたら、と思います!
ユリアは事件ぶりに王宮に足を踏み入れた。
ウィリアムの魔法で建物は以前と変わりなく保たれていた。
破損したテーブルやグラスや食器などの後片付けも、魔塔の魔法使いが率先して行ったらしい。
魔法とは便利なものだ。
しかし、肉体の治癒に関しては相当難しいらしく、治癒魔法と呼ばれる分野は、非常に繊細かつ失敗ができないものだということで、安易に使えるものではないらしい。
一歩間違えれば、人を殺してしまいかねないのだという。
ユリアにはその難しさは分からなかったが、人の生き死にを魔法が操作できるようになることの恐ろしさは、なんとなく感じた。
だからこそ、アレクシスの治癒能力は、人間の領域を超えていると言える。
アレクシスが避難所に集まっていた人全員を癒したおかげで、怪我をしたままだったのは、別室にこもっていたマルティナ侯爵家の人だけだったらしい。
一番わがままを言った人たちが、一番損をしたのではないかと思う。
ユリアが馬車を降りると、すぐにアレクシスが迎えに来た。
どこか嬉しそうに見えるアレクシスは、ユリアがよく知る13歳までのアレクシスのようだった。
「よく来たね、ユリア」
手を取られ、エスコートされる。
それだけで嬉しかった。
アレクシスはユリアを庭園のガゼボに案内する。
花と緑に囲まれた美しい庭園の中央に、八角形の屋根と柱だけの建物。その中に、白いテーブルと椅子が並べられてある。
ユリアは昔、この場所に来たことがあるのを思い出した。
(一番最初に、アレクシスから花を贈られた場所だわ)
「好き」の意味が、まださほど深刻さをもっていなかった頃。お互いが眩しいほどに純粋だった。
「どうぞ座って」
アレクシスが言うと、侍女たちがお茶とお菓子の用意を始める。そして、一通りのセッティングが終わると、その場から誰もいなくなった。
「父が全部話すように約束をしていたらしいのだけど、私から直接話した方が、説明しやすいと思ってね」
懐かしいアレクシスの優しい口調に、ユリアは少し泣きそうだった。
「私自身も、今回父から話を聞いて、初めて知ったこともいろいろあったんだけれど、ユリアには全部知ってほしいと思う。長い話になるけど、聞いてほしい」
ユリアは覚悟をもって頷いた。
「まず、ユリア、その・・・ショックを受けるかもしれないんだけど」
ごくりと唾を飲む。
「私とテオドール・・・テディは、同一人物なんだ」
「・・・・・・」
ユリアは頭が真っ白になり、笑顔を繕いながら手元の小さなお菓子を手に取り、かぶりつく。
(美味しいわ)
食感はさっくりしているのに、中はしっとり。
丸くて、いろんな色があって可愛いお菓子。
間に挟んであるのはチョコレートかな。
口の中であっという間に溶けてなくなる。
さすが王宮のデザートだ。
(うん、今度うちの料理長にも作れるか聞いてみよう)
「ユリア・・・ごめんね。私にはテディの記憶もそのままあるんだ」
足元から頭のてっぺんまで、一気に熱が駆け巡る。
現実は逃避できなかった。
ーーーーあーん、パクッ。
昨日見た夢が蘇る。
蒸気が噴き出しそうに真っ赤なユリアの顔を、アレクシスは心配そうに覗き込んだ。
(いや、もう、今もうこの顔面無理・・・・・!)
「ユリア、大丈夫かい?君が怒っても仕方がないと思う。原因は全て私の弱さだから・・・」
どんどん落ち込んでいくアレクシスに、ユリアは自分を落ち着かせようと深呼吸をした。
「アレクシス様、私、怒ってなんていません。ただ・・・恥ずかしかっただけです」
「じゃあ、怒っていないのかい?」
「ええ」
あまりに心配そうなアレクシスの頭に、ユリアは獣耳が見える気がした。
「ただ、ちゃんとなぜそういうことになったのか、説明してほしいのです」
「分かった」
アレクシスはほっとしたように話し始めた。
「ユリアは亡くなった側妃のマリーベル様を覚えているかい?」
「え、ええ。挨拶したことがあるっていう程度でしたけれど、可愛らしいお方だと思いました。まだお若買ったのに、ご病気でお亡くなりになったとか」
「そう。私も今回、父上から聞いて知ったのだけれど、マリーベル様は・・・・・心を病んで、自ら命をたたれたんだそうだ」




