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23 フレディ=カイゼン3

「お待ちください殿下!」

 国王の執務室の前に立っていた騎士たちが慌てて止めようとするが、フレディの勢いは止まらなかった。

 国王を護るためとは言え、騎士として王子に傷を付けるわけにはいかない。とりあえずフレディの体には触れずに止めるため、ただただ扉の前で体を張る。

「どけろ!」

 乱暴な言葉使いをする王子に驚きながらも、国王を護るために命をかけると己の剣に宣誓をした騎士たちだ。許可がないかぎりは何人たりとも、通すことはできない。

「何事だ、騒がしい」

 騒ぎに気付いた宰相のギャレットが扉を開ける。

 扉の前にいたのは、興奮冷めやらぬ幼い王子だった。

「これはこれはフレディ殿下、どうされましたかな。騎士たちが困っておりまずぞ」

「話があるんだ、お父様に会わせてくれ」

 目を吊り上げ、肩を怒らせるフレディに、ギャレットは敢えて穏やかに対応した。

「陛下は今執務中ですが、何のお話でしょう。何ならこのギャレットがお伝えしますよ」

「お前では駄目だ。お父様から直接お聞きしたいんだ」

「分かりました。では陛下にお声かけしてみましょう」

 ギャレットは扉を閉め、一旦中に入る。

 フレディは両手の拳を固く握りしめながら、再び扉が開くのを待った。

「お待たせしました、殿下。陛下の許可が下りました。中へお入りください」

 フレディの姿に、エドワードが立ち上がる。

「どうした、フレディ。お前がこんなふうに訪ねてくるとは珍しい」

 エドワードは戸惑ったようにフレディに近付いたが、フレディは父親を睨みつけながら、少し距離を取った。

「ぼくの侍女のメアリはどうしたのですか」

 エドワードは表情を変えなかった。

「新しい侍女から聞いておらぬのか?」

「ぼくはお父様から聞きたいのです」

「ほう、なぜ?」

 落ち着き払った父親の態度に、フレディは怒りが増幅するのを感じた。

「侍女は言いました。メアリは里に帰ったのだと・・・。でもメアリは・・・メアリはぼくに言ったんだ。もうここ以外、居場所はないんだって、だからずっとぼくの側にいるって・・・!」

 自分を侮っている相手への怒りが収まらない。我慢するために唇を噛んでいたのだろう。わずかに血が出ていた。

「それに、聞いたんだ。メアリはもう死んでるって、アレク兄様に殺されたんだって・・・!」

 体の震えが止まらない。涙は溢れ、フレディの目に映るエドワードの姿がぼやけていく。

 エドワードとギャレットは厳しい顔付きになり、目を合わせた。

「・・・・すまなかった、フレディ。母を失って間もないお前に、乳母の死まで知らせるのは酷すぎると思ったのだ。私が侍女たちに嘘を言うように指示した。彼女たちを許してやってほしい」

「では、やはりメアリは・・・・・」

 フレディは勇気を振り絞るように言った。

「お父様、真実を・・・・どうか真実を、お教えください!」

 フレディの嘆願に、エドワードは悲しげに頷いた。

「お前の言う通り、メアリは里に帰ったのではない。王宮で亡くなったのだ」

 フレディは、最後の望みの糸が、プツンと切れたような気がした。

 体から力が抜け、膝をつく。

 メアリが自分の名前を呼ぶ声が聞こえるような気がした。

「だがな、アレクシスが殺したというのは誤解だ。彼女は、自死だったのだから」

(そこまでして、兄様を庇うのか・・・・・)


ーーーー次期国王のアレクシス殿下が王宮に務める侍女を殺したなど、醜聞もいいところです。陛下は何があっても殿下をお護りするでしょうね。


「なぜ、彼女が自死などをしなければならないのです」


ーーーーしかし、人の口に戸は立てられぬ。私がこうして噂を知っているようにね。恐らく、噂が落ち着くまで、アレクシス殿下はどこかで静養をする、とでも言って、王宮から姿をお隠しになるのではないですかな。


「彼女は王族の毒殺を企み、アレクシスはその毒を飲んでしまった。幸い、命は取り留めたが、ことを成したと誤解した彼女は、その場で自分も毒を飲んだのだ」

 フレディはもう、誰を信じればよいのか分からなかった。

 分かっているのは、自分を慈しんでくれたメアリはもうこの世にいない、ということだけ。

「兄様は今はどこに・・・・・?」

「アレクシスは毒の後遺症を癒すために王宮にはおらぬ。ーーーところで、フレディよ」

 涙を流しながら呆然とするフレディに向かって、エドワードは尋ねた。

「侍女が殺されたなどという話は、誰から聞いたのだ」

(だれが、言うものか・・・・)

 フレディの心をじわじわと闇が侵食していった。

 きっと、エドワードはキャロラインとその子どもたちさえいればいいのだろう。

 双子の兄姉も、お互いがいればいいのだ。

 フレディを求めている人なんて、もう、この王宮の中には誰もいないのだ、と・・・・・。

 

 

 

 

  

 

 

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