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15 耳と尻尾2

「え、えーと、うん、かわいい・・・かなあ・・・?」

(一体なぜ?)

 なぜ、着ぐるみを着ているのか、そして、あんなに寝て、食べて、ユリアがお茶会に行く前にはまあまあ元気になっていたウィリアムが、倒れた時を彷彿とさせるくらい疲れているのは、なぜなのか。

「この中にテディが入っているの?」

「そうだよー」

 聞こえてくる声はいつものように愛らしいが、一番の疑問は、

(なぜ、着ぐるみの見た目がリアルな野生のクマなのかしら・・・)

 しかも、そのクマは今にも人に襲いかかりそうな、とても凶暴な顔をしている。

 着ぐるみにするのであれば、なぜもう少し可愛くできなかったのか、と問いたい。

「おねえちゃん、クマさんきらいー?」

 テディは不安そうに言う。

 ユリアはハッとして、否定する。

「そんなことはないわ、好きよ。テディはクマさんが好きなの?」

「うん。でもね、ネコさんの方がね、もっと好き」

「ひっ」

 ウィリアムが急に引き攣ったような声を上げる、が、彼が変なのはいつものことなので、聞こえなかったことにした。

「ネコさんかー、私もクマさんよりもネコさんの方が好きかな」

 絵本の中のクマさんはかわいいが、現実の熊さんを想像すると、ちょっと・・・いや、だいぶ恐ろしい。

 セドリックが狩に行った時に見かけたらしいのだが、人間より大きく力の強い熊は、ひどく恐ろしい存在だったと話していた。

(現実では遭遇したくはないわね)

「ところでどうして着ぐるみを着ているの?」

 ユリアの質問に、テディは一瞬声に詰まった。

「おねえちゃんを・・・こわがらせたくなかったからかなあ」

「・・・・・・?」

 その声はどこか不安そうで、真剣味を帯びて聞こえた。

 ユリアは再び尋ねた。

「私が、何を怖がると思ったの?」

「・・・・・ぼくのこと」

 ユリアは戸惑い、「クマさん」の顔と目が合うように、姿勢を低くした。

「なぜ、私がテディを怖がると思ったの?」

「小さいネコさんは好きでも、大きいネコさんのことは・・・・・きらいかもしれないから・・・」

 後半のテディの声は、涙ぐんで聞こえた。

 ユリアにはテディの言っていることの意味がよく分からなかった。けれど、何かに傷付いているこの子のその不安を、早く解消してあげたいと思った。

「心配いらないわ、テディ。私は大きいネコさんも、大好きなのよ」

 ユリアは微笑みながら、目の前の凶暴な顔を優しく見つめた。

「だから、着ぐるみを脱いでくれるかしら」

「おねえちゃんがぼくをきらいにならないなら・・・・・いいよ」

「嫌いなんかになるわけがないわ。あなたは私の命を救ってくれた、この世にたった一人の人だもの」

 ユリアはクマの頭をそっと掴んだ。そして、ゆっくりと持ち上げる。

 この状況を見守っていたウィリアムは、何も言わなかった。

 クマの頭をとったそこには、頭にふさふさの毛の耳を生やした、可愛い男の子がいた。

 ユリアは一瞬目を見張ったが、涙でぐしゃぐしゃの顔をした不安そうなテディをそっと抱きしめた。

「大好きよ、テディ」

 ユリアが伝えると、テディは堰を切ったように声を上げて泣いた。

 「うわーん」という声が、大広間に響き渡る。

 そして、その声をかき消すように、魔法使いの声が重なる。

「ぼくのせいなんですぅぅぅぅぅぅぅっ」

 また?!とユリアが思ってしまったのは、仕方がないと思う。

 

 



 


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