14 耳と尻尾1
(どうしようどうしようどうしよう)
バクバクと心臓が音を立てる。
このままではまずいことはウィリアムが一番分かっている。
もうこのまま転移ゲートの魔法陣を描いて、魔塔へ移動してしまおうか。
でも、お世話になった侯爵家の人々に何も言わずに去るなんてことはできない。
テディの体に耳と尻尾が生えてから、何度か魔法陣の改良に挑戦してみたが、結果は惨敗だった。
(獅子の姿よりはマシだろうか・・・)
「お耳生えてるの、おねえちゃんこわがるかなあ」
テディは不安そうにウィリアムを見上げた。
(まただ・・・また、ぼくの力が足りないせいで・・・)
ウィリアムは泣きたくなった。
「そうだ、帽子です!帽子を被りましょう」
とてもいい案だと、この時は思ったのである。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ユリアは王妃とのお茶会から帰宅するとすぐに、父親に帰宅の挨拶をし、王妃とお茶会で話した内容の全てを報告した。
変わり身の話を聞いたマグリッドは複雑な顔をしていたが、ユリアに感想を述べることはなかった。
自室へ帰り、侍女の手を借りてドレスを脱ぎ、家用のドレスに着替えると、アレクシスのことを考えた。
王妃の話だと、パーティーの後に真実を話すとのことだった。それが、ユリアを苦しめるものなのか、または歓喜させるものなのか、考えても分かるわけがない。
アレクシスだと思って見ていた者は身代わりで、魔法で認識を混乱させられていたのだとすれば、ユリアがこれまで信じていたものは何だったのだろうと、虚しくもある。
けれど、同時に期待もしてしまうのだ。もしかすると、アレクシスも未だ、ユリアを思ってくれているのではないかと・・・・・。
考えても仕方がないと思い、悪い考えを振り払うように立ち上がったユリアは、
(よし、こんな時はテディに会いに行って癒されよう!)
と、部屋と出たのであった。
侍女にテディの居場所について尋ねると、午後からずっとウィリアムと共に、中央の大広間で過ごしているとのことだった。
侯爵家で他貴族を招いてパーティーを行う際に使用する、屋敷内でも一番広い場所だ。
(健康状態について調べるって言っていたと思うのだけれど、そんなに広い場所が必要だったのかしら)
ユリアは疑問に思ったが、加護のことについては王妃教育でも詳しくは学んでいないため、深くは考えなかった。
荘厳な装飾を施した大広間の扉は大きな開き戸である。
ノックをするような扉ではないのだが、突然入るのは失礼だろう。
「テディ、ウィリアムさん、ユリアです。入ってもよろしいかしら」
「あ、おねえちゃんの声だー」
扉の向こうから、何やらくぐもったようなテディの声が聞こえたかと思うと、すぐに扉が開く。
ユリアはその衝撃に目を見開いた。
「え・・・・?」
「テディ様が着ぐるみを着たいっておっしゃったので、着せて見ました。か、かわいいですよねー」
そこにいたのは、疲れ果てたようにげっそりとしたウィリアムと白いクマの着ぐるみだった。




