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10 精霊の加護

 目の前で泣きはらした目を冷やしながら、とうもろこしのスープをおいしそうに飲んでいる魔法使いは、ユリアの目に妙に可愛く映った。

 ウィリアムはおもいきり泣いたことでスッキリしたのか、ニコニコしながらパンを頬張っている。

(ハムスターみたい・・・何だろう、ずっと見ていられる・・・)

 貴族のようにマナーを学んでいないからか、口に食べ物を詰め込み過ぎて、頬が膨らんでいるのだ。

 しかも、その様子を面白く思ったのか、隣ではテディが、「これもおいしいよ。」と次々に食べ物を勧め、勧められるままに頬張るウィリアムに、目をキラキラさせている。

 もう入らないだろう、というくらい頬が膨れているのに、そこに赤いプチトマトを押し込む。

 「おーっ」とテディが感心したように喜び、さらにブロッコリーを・・・。

「テ、テディ、テディも食べなきゃ、大きくなれないぞー」

 さすがにこれ以上詰め込むのは危険だ。

「ぼくも大きくなるー」

 テディはウィリアムに詰め込もうとしていたブロッコリーを自分で食べた。

 ユリアはほっと息をつく。

(なんかウィリアムさんて、自分の限界を知らなさそうなんだよね。)

「あの、ウィリアムさん、失礼を承知でお伺いするのですが、おいくつなんですか?」

 もっと他に聞くべきことはあるだろうに、ユリアは気になって仕方がないことを尋ねた。

「ぼく?そういえば、何歳だったかなぁ」

 ウィリアムはどこまで記憶を辿っているのか、指を折りながら自分の年を確認していた。

「たぶん、24歳じゃないかな。」

(自分の年齢なのに、「たぶん」て・・・しかも24歳って、30歳は超えていると思っていたわ。この人にちゃんとご飯を食べさせなければ。)

 ユリアは妙な使命感に駆られた。

「あのね、ぼくはね、たぶん4歳だよー」

(テディまでたぶん・・・)

 一体どうなっているのか。

「おねえちゃんは?」

「わたしは17歳よ」

 17歳・・・と呟きながら、テディは1から数を数え始め、17歳がどれくらいの年齢なのかを確認し始めた。

「あの、質問ばかりして申し訳ないのですが、テディとウィリアムさんのご関係はどういったものなのですか?」

 ユリアの質問に、テディとウィリアムは顔を見合わせた。

「えっと、ご存知かと思いますが、テディ様には強い精霊の加護があります。ぼくは、その精霊の加護について研究しているものでして、ご家族から頼まれて、テディ様の加護の力の調整をしているものなのです。」

(加護の研究・・・)

 なるほど、ウィリアムは平民だが、テディはどう考えても貴族だ。縁者といえど、血の繋がりはないのではないかと思っていた。しかし、それならばなぜ家族が迎えに来ないのだろうか。

「それで、この後少し、お時間をいただいて、テディ様の加護について調べさせていただきたいのです。なにやら、光の力で襲撃者を倒したと聞いています。もしかすると、体に不調をきたしているかもしれないので。」

「わかりました。それがテディのためになるのでしたら。」

「もちろん、テディ様の体のためです、ええ。」

 ウィリアムは力強くいった。

「そうだね、そろそろ魔法陣でピャーってやらないとお耳がピョーンて・・・」

「テディ様ー、それは内緒の話ですよー」

「あっ・・・」

 テディは慌てて両の手で口を覆った。

(いや、目の前で堂々と「内緒」って・・・)

 ツッコミどころの多い不思議な魔法使いだが、何だか憎めない。それに、テディを大切に思っているのは何となく感じられた。

「あ、あのシュマルフ侯爵令嬢様」

「はい、何でしょう。」

「実は、王妃様よりお手紙を預かってきております。昨日すぐに渡せばよかったのですが、不覚にも倒れてしまいまして・・・」

 面目ない、と頭をかきながら謝る。

「お持ちでしたら私がお預かりいたします。」

 給任をしていた侍女が、ウィリアムの横に立ち、声をかけると、魔法で保護された封筒がウィリアムの懐から出てきた。

(す、すごい!封筒にしわ一つない!)

 ユリアが驚いて見せると、

「いやあ、こんなことは本当に大したことないのです。」

 ウィリアムに生活力はなさそうだが、魔法が使えることは間違いなさそうだった。

「対象を保護する魔法陣の中に入って、魔力を発動させれば、1週間はもつはずです。王宮から遠方に手紙を出す際に使うことが多いんですけどね。ぼくが持っていくことになったら、王妃様が絶対に保護をかけろって・・・・・何でだろう?」

 王妃様はウィリアムのことをよく分かっているのだと、ユリアは納得した。

 実際、魔法がかかっていない状態で懐に入っていれば、倒れた挙句一晩ぐっすり寝た翌日には、しわっしわの封筒が出てきたことだろう。

 侍女が封筒とペーパーナイフをユリアに手渡し、ユリアはそっと中身を取り出した。

「招待状・・・?」

 セシリア王立学園に入学する前には、王妃教育の一環で、王妃主催のお茶会に参加したり、王妃の説く訓示を教わったりしていた。目鼻立ちがくっきり、はっきりした美人で、一見きつそうにも見えるが、とても優しい人だ。

 二つ折りのカードを開くと、そこには、お茶会への招待するという内容と、アレクシスのことについて話したい旨が書かれていたのであった。







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