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転星記  作者: 自分革命
第1章 世界騒乱編
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3話 初めての模擬戦 続


 フォーマンセルの模擬戦が開始し、ビル内にいる敵の位置を早々に把握するショウヤ。

 そんな彼に驚くチームメンバーたちだったが、気を取り直して、敵の待ち構える居城へと突き進むのだった。


 まずは、2階テラスの奥の扉に張り付いてる奴から叩く。

 テラスへ続くロビー正面一階、左の階段からミキトが行く。

 右から俺、サヤ、カリンが回り込む形で背後へと回ろうとする。

 階段の途中で敵がこちらに気付いたのか、そっと扉を閉めて、静かに奥の部屋へ後退していく。


 ミキトは俺たちに、二本指を額あたりで立てて、まっすぐ振るゴ ーサインを送った。

 俺たちは階段を上がって正面の壁を右へと通り過ぎ、奥へと続く道から回り込む。

 そして、敵は奥の階段から上がるために、敵に気付かれないようにゆっくりと奥へ進む。

 

 あれ?こいつ俺たちに気付いてなくね?

 こっちは常時、識道を発動してるから把握してるのに。

 向こうは今は識道を()()()()みたいだ。

 

 敵より先に奥の階段で待ち伏せする俺たち。

 こっちに向かってくる敵一人を後ろから挟むようにミキトがゆっくり追う。

 すると、コンコンコンッと何かを軽く壁にぶつける音がした気がした。

 俺のそばにいる二人にも聞こえていたようで、互いに何の音?と見つめ合う。


 すると、俺の識道に反応があった。

 3人一気に降りてきてミキトの方へ、いや、敵のレーダーであるこいつが元居た場所へ急いで駆けていくのが見える。

 まずい、何故かはわからないが、敵は俺たちの行動を把握していたようだ。


 俺は咄嗟に無線機へと叫ぶ。

 「ミキト!そこから離れろ!敵が3人そっちに---」


 と言いかけたところで、俺たちの前の正面の扉がバタンッ!と開き、男が突進してくる。

 

 「…!?」


 と、サヤとカリンが驚くのを他所に、俺は正面へ出て、戦技「纏道」を使う。

 

 「ダンッ!!」


 と、互いに体がぶつかってはじけ飛ぶように後ろへ吹っ飛ぶ。

 纏道を使ってる者同士がぶつかるとこうなるのか!

 急いで立ち上がり、超能力を発動しようとするが、サヤに後ろから引っ張られ、階段の上へと連れていかれる。

 

 「シューッ」


 と何かが音を立てつつ、色の濃いグレーの煙を周囲に拡散する。

  

 「スモークグレネードね。」


 と冷静にサヤが言う。

 待て待て、そんなの説明されてないぞ。

 驚きを隠せず、何でそんなものが?という表情でサヤを見る。

 するとサヤは察したのか、説明するように答える。


 「暴徒側はそういったものが支給されるの。毎回、違うものを渡されるけど、鎮圧部隊側にはそういったことは伏せられるんだよね。」

 「は?なんだそれ?初見殺しもいいところだ。」

 「そういうシチュエーションを演出するためでしょうね。」

 「…」


 してやられたな。

 しかも、敵が識道を使わず、こちらの位置を把握できたのは、どこかに監視カメラでもあって、それを使っていたのだろう。

 そして、識道を()()()理由は、纏道へ切り替えて、敵の接触に備えたからだろう。

 なんて用意周到なんだ。

 相手はプロ間違いなしだ。


 「まずいわね。相手の動きからして、相当なベテランでしょうね。」

 「しかも、超能力をこちらに見せずに、支給品だけで分断してきた。」

 「最初に練った計画を逆にこちらが受けることになるとはね。」

  

 まずい状況だ。

 ミキトが孤立し、俺たちは3階への階段にいて、そこの階段からは降りられない。

 なぜなら、煙をばらまいた敵は、今も下でこちらの迎撃に備えているからだ。

 今、不用意に下りれば最悪全滅もありうる。

 迎撃の術がなくても、十分な牽制になる。

 一人で3人を引き留める。まさにプロだ。


 しかし---

 

 「こっちも黙ってやられるわけに行かないわ!ショウヤ!」

 「ああ、()()()()だな。」


 俺たちはある作業を終えた後、3階の窓を割って下へ飛び下りる。

 カリンは纏道が使えないので、サヤに抱えて貰って降りた。


---ミキト視点---


 まずいな、この状況。

 向こうの3人がどうなってるか分からないが、 無線の内容からして、敵3人がこっちに向かってきてるらしいな。

 あいつらは多分奇襲を受けた。

 あいつらが奇襲を受けたってことは、敵側はこちらを撃破する準備が整ったってことだな。

 つまり、援軍は望めない。

 あいつら3人、足止めを喰らってる可能性が高い。

 この状況、まずは俺一人で何とかしなきゃな。

 と、考えていると、自分が通った後ろの扉が開く。


 「ギィ…」

 

 開いた瞬間、一気に部屋の中へ駆け込む3人。

 しかし、ぱっと見、あたりに敵の姿は見えない。


 「カランッ」

 「ん?なんだ?」

 「ただの空き缶だ。」

 「なんでこんなところに---」

「おい、静かにしろ」


 と床を()()()()()()空き缶に反応するメンバーをリーダーらしき人物が鎮める。


 「ザァァ」

 「イワ。そちらの状況を教えろ。」


 一人が無線機で、ショウヤたちの足止めをしている人物へ、状況を教えるように乞う。


 「ザァァ」

 「こちらイワ。現在3人の足止めをしている。奴らが下りてくる気配はない。が、警戒しろ。3階で何かしてるようだが、奴らが別の階段から降りてくる前に、その1人を仕留めろ。」

 

 無線特有の砂嵐の音の後、早口でイワという人物は情報共有する。

 

 これにミキトは「さすがの連携だな。まじでプロじゃん。さては自衛隊卒のやつらか?状況は思った通り最悪。こっちは一人で向こうは1人に足止め。ったく冗談きついぜ」と心の中で囁く。

 それと同時に、「俺がまだ物陰に隠れて見つかってないってことは、レーダーは今無線で応答した奴1人だな?不幸中の幸いか」と考える。

 

 「了解。すぐに終わらせる。」

 

 無線を切ると、男は姿の見えないミキトへ脅しをかける。

 

 「おーい、早く出てきな。降参すれば痛い目見なくて済むぞ。こっちも子供を傷つける趣味なんか無いんだ。早く出てきてくれ。」

 「カンッ」

 「うわっ!?」


 すると、メンバーの一人の顔面に、何かがぶつかる。

 顔面にぶつかって床へ落ちた物を見てみると、先ほど床を転がっていた空き缶だった。

 

 「なんだ---」

 「バキッ」

 「ぐはっ」


 と、今度はリーダー格の人物の後ろからいきなり机が吹っ飛んで激突する。

 机の重さに耐えられず、床へ倒れるリーダー格の男。

 すると、奥のロッカーの物陰から、一人の人影が見えた。

 

 「盾ぇ!」

 「了解!」

 

 リーダーが叫ぶと、すぐにメンバーの一人が倒れた男の前に立ち、拳と拳を合わせる。

 すると、目の前に大きなガラスが出現し、飛んでくる物を弾いていく。

 続けて、もう一人の男が中段で拳を構え、空中に正拳突きをくりだす。

 すると、見えない波状の風圧が、人影のいたロッカーをぺしゃんこに叩き潰す。

 間一髪で物陰から出てきた人物の全貌があらわになる。


 「よう、兄ちゃん。やってくれたな。」

 「詰みだ。観念しな。」


 と男たちは負けを認めるよう、威圧してくる。


 「はっ!詰みだって?何言ってやがる。勝負はこれからさ!」


 と威勢よく3人へ襲い掛かっていくミキト。

 同時に、両手に持っていた、直経5センチくらいの鉄の球体を勢いよく投げつける。

 

 「いいね!気に入った!その意気やよし!」


 と勇猛果敢に正面から突撃してくる少年を3人で迎え撃つ。

 「まだ掛かるか-」と考えるミキト。

 ミキトの両手から離れた二つの鉄球は、リーダー格の男めがけて飛んで行く。

 すると、


 「無駄だっ」


 と言って、拳を合わせて見えない壁を創り出す。

 しかし、その見えない壁が鉄球を弾くことはなかった。

 

 鉄球は、壁に当たる直前で軌道を変えて、周り込み、一番後ろの男の頭と脇腹へと目掛けて一気に加速して飛んで行く。


 「ガキンッ!ダンッ」

 「ドスッ」

 「がはっ」


 一つは空気の波動で弾かれ、後方の壁へめり込む。

 もう一つは鈍い音を立てて腹に炸裂した。

 当たった個所からは血が出ている。


 ミキトの能力。軌道操作(きどうそうさ)

 自分の手から投げたモノの軌道を自由自在に操れる能力。

 一度投げたモノは、一度()()()()()()()()()、転がっていた空き缶のように、軌道操作の対象となり続ける。

 また、投擲した物の速度を半化させることが出来る。

 つまり、投げられなくても動かすことさえできれば、飛ばすことが出来る。

 

 「くそっ!器用な奴だ。超能力と纏道を同時に使い分けやがった。」

 「それは、こっちのセリフだ小僧…ガフッ」

 

 「いい攻撃だ。だがな、出てきたのは失策だったな。」

  

 リーダー格の男は、自身の右手を持ち上げて、指をパチンツと鳴らす。

 バンッと音を立てて床が爆発する。

 

 「なっ!?」


 凄まじい痛みと共に、崩れ落ちるように倒れるミキト。

 下を見ると床が削れており、何かが爆発したような跡が残っていた。

 そして、自分の足を見るミキト。


 「いっ!?おいおい…冗談じゃない。」

 

 ミキトの右足首から先がボロボロになって取れかかっていた。

 泣きそうなほどの痛みが襲う。

 しかし、それでも彼の目からは諦念など微塵も感じられない。

 そして、3人に対してうつぶせになったまま身構える。


 「見上げた根性だ。足を吹っ飛ばされてもなお戦う意思があるとは…正直、青いガキだと軽く見てたが、こりゃすごい玉だぜ。」

 「はっ、当然よ!最初からこうなることは分かってんだ。」

 「…何?」


 と、3人は訝しげな表情で、這いつくばった少年を見る。


 「まだわかんねぇか?俺は最初っから()()()だ。」

 「予め作戦が失敗したときの()()はとっておくもんよ!」


 すると、男たちはある異変に気付く。

 気付いたと同時に、奥の扉がバタンッと勢いよく開けられる。


 「おい!やばいぞ!逃げ場がない、どうする!?」


 とレーダー担当の男が慌てて部屋に入ってくる。

 と、同時に床から紫色の「(きり)」のような煙が部屋へ流れ込んでくる。


 「っ!?」

 「てめえ!何をした!?」


 リーダー格の男がミキトに叫び、もう一方の扉を開く。

 すると、一気に部屋へ紫色の霧が入ってくる。

 急いで口に手を抑える男たち。

 だが--


 「もう、遅いぜ。このフロアも下のフロアもこの霧が充満してる。」

 「くそっ、お前ら息を止めろ!発生源は多分1階からだ!」

 「3階へ行くぞ!」


 と急いで部屋から出る4人。

 「だから、もう遅いって。」一人残った部屋の中で呟き眠るように仰向けになるミキト。


 「ガンガンガンッ」

 「駄目だ!こっちは何かで密閉されてる!」

 「こっちだ!急げ!」

 「ああ!」


 煙を吸わないように、手短かに作戦を伝えるリーダー格の男。

 混乱し、周りが見えないが、声のする方向へ向かうメンバー。

 しかし、一人だけ困惑したまま立ち尽くしていた男がいた。

 その男はリーダー格の男である。

 

 「今の…俺の声か?一体だれが…!!!」


 ここで気付くがもう手遅れ。

 暴徒役の3人は急いで駆け、深い煙の中を抜けると---


 

  ---目の前にはショウヤたちが待ち構えていた---

 


---ショウヤ視点---


 「---この作戦で一人ずつ分断して狩っていこう。そしてもし、作戦続行が不可能になったら」


 「ショウヤ、お前の能力、()()()で道を塞げ!」

 

 「出来るだけでいい、なるべく人が通れないような硬くて密閉するような空間をつくれ---」

 

 具現化(ぐげんか)

 ショウヤの能力であるそれは、彼の想像した物を生み出す能力である。

 一度に生み出せる物はせいぜい、家庭用冷蔵庫一個程度の大きさだが、階段という狭所を埋め尽くすには十分である。

 また、生み出す物は無機物、有機物に関わらず生成可能。


 作戦会議での手筈を思い出し、3つの階段に具現化で、分厚い鉄板を生み出して、道を埋めた。


 「よし、完了だ!」


 そういいつつ、ショウヤはガスマスクを2つ作り出して、カリンへと一つ渡す。


 「---そして、密閉空間を創ったら今度はサヤ、その場所を()()()()()にしてやれ---」


 サヤの能力、催眠(さいみん)ガス。

 その名の通り、自身の体から無尽蔵の催眠ガスを放出する能力。ガスの濃度は調節可能。


 「一気に行くわよ!」

 

 と一階ごと、ロビーを一気にガスで満たすサヤ。

 2階までガスが充満する。


 「---最後にカリン。出来なくてもいい。でも、お前が勇気を出して言葉にしたその能力を使ってほしい---」


 一呼吸置き、ガスマスクを外すカリン。

 みんなの勇姿を見て、みんなに優しくされて。

 みんなの希望に応えたい!と彼女は思えたのである。


 「こっちだ!急げ!」

 

 カリンの口から太くてたくましい、男の声が出る。

 

 カリンの能力、擬声(ぎせい)

 一度聞いた声を、カリン自身に、その声主の記憶がある限り声を真似することが出来る。


 「…」


 照れてしまったのか、すぐにガスマスクをつけて、うつむいてしまう。

 そんな彼女にサヤとショウヤは微笑むように、笑顔を見せる。

 カリンもまた、そんな二人につられて少しニコッと笑って見せた。

 軍へ入隊してから1年間。

 初めて彼女は笑顔を見せた。


 

 すぐに、走る3人の足音が聞こえ、煙の中から出てくる3人の暴徒たち。

 と同時に、駆道と纏道を使用したショウヤが、一瞬にして2人の顔面を殴打して戦闘不能にする。

 纏道を使うサヤが、それに続き、ショウヤの作った棍棒でぶっ叩いて気絶させる。

  

 「あとは…」


 と、ショウヤが言いかけたところで、ガスの奥からリーダー格のが両手をあげたままこっちに向かってきて、


 「完敗だ!降参する!」


 と言って、その場に倒れて昏睡する。

 

 こうして、迅速な対応と連携で、ショウヤたちは見事勝利した。


 



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