055
香美の顔を見た瞬間に、俺は全てを思い出した。
2004年10月28日、あの日をきっかけに俺は変わった。
俺は、あの後から望月とつきあうようになった。
高校を卒業してからも、俺と望月の恋愛は続いた。
大阪の大学を卒業した俺は、再び徳島の鳴本に戻ってきた。
望月 香美と結婚をしたのは、大阪から戻って二年後の24歳の時だ。
変わった過去を、俺は思い出していた。
テーブルに座った俺は、香美を見ていた。
栗色の長い髪、おっとりした目。
同じ三十四の筈だけど、全然オバさん臭を感じない。
むしろかわいらしさから、そのまま成長して美人になっていた。
「おはよう、香美」
「あら、今日は名前なのね」
「う、うん」
食卓は、二人分の料理が並んでいた。
なんだか、他の人と食事を食べるのは新鮮だ。
会社でも俺は一人で食べるし、今は黙食が一番なんて言われているし。
「おいしい?」
卵焼きを、俺は食べていた。
なにこれ、凄くおいしい。
甘くも無く、しょっぱくもない。
卵の焼き加減も、完璧だ。なにより、この味は……おふくろの味によく似ていた。
「うん、めちゃくちゃ上手いよ」
「褒めても、何も出ませんよ」
軽く笑って見せた、大人の香美。
エプロン姿も似合っている香美に、俺は幸せを感じていた。
(やばい、超幸せだ)
俺は、ぼんやりと香美を見ていた。
そんな香美だけど、少しお腹が出ていた。
「お腹が、出ているな」
「うん、何を言っているのよ?とうとうできたのよ」
「え?」俺は一瞬理解できなかったが、すぐに分かった。
「こ、子供?」
「そう、だからね……今からお買い物……いきましょ」
「行くって、時間、もう9時回っているし」
時計に目をやった、時間は朝9時をさしていた。
「あら、何を言っているの?今日は日曜日よ」
「え?マジ」
「マジです」
冷蔵庫に張ってある、カレンダーを確認した。この日は日曜日だ。
「本当だ……」
「うん、だからね……今日はあたしの買い物につきあってもらいます」
香美の満面の笑顔、俺は頭をかいて照れていた。
そう、俺の人生はあの高校生活で変わった。
俺は、香美と生きていく。俺には守るべきモノができたのだから。




