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JK望月 香美の渦  作者: 葉月 優奈
一話:よし、もう一度高校生をやり直すか
15/55

015

猫が墓地でうずくまる、異様な光景だ。

既に日が落ちた霊園で、倒れている猫。

その猫は、結構大きな猫だった。


「違う!」すぐに否定する葵。

葵が探しているガトでは無いことは、俺も分かった。

あの猫は、黒っぽい毛並みだし、額にキズもあった。

だけどこの猫は真っ白な毛並みで、髭が無い。

首輪をしている猫が、気絶をしていてうずくまっていた。


「この猫、髭が無いな。そういう種類か?」

「これはペルシャ猫ね」

「詳しいな」

「猫は好きだから……でも髭が無いわね。

ペルシャ猫の髭は、とても長くて立派な髭があるのよ」

「そうか……というか」

「抜かれている」

猫を見た瞬間に葵は、怪訝な顔に変わった。


それと同時に気を失っていたペルシャ猫は、黄色い目を開こうとした。

だけど、目玉がくり抜かれていて目玉が無かった。


「目が無い?」

「なんで、こんなことを」

俺と葵が、猫を見ながら愕然とした。

俺たちに気づくと、警戒してすぐに離れていた。

なんだか、猫が怯えている様子にも見えた。威嚇の仕草も、俺たちには見せていた。


「威嚇している?」

「そうね、警戒しているわね」

「あ、逃げた」走って逃げるペルシャ猫。

しかし、目が見えないのでまっすぐ走れない。フラフラと歩いていた。


「なんか不思議な猫ね」

「酷い悪戯をしている奴がいるのね。許せないわ」憤る葵。

「ああ、みたいだな」髭を抜かれた猫に、目玉の無い猫。

あのペルシャ猫は、まもなく闇の中に消えていった。


「だとしたら、心配よね」

「そうだな、悪戯する奴がいるし」

「あっちにも」

暗さに慣れたのか、猫を悪戯されたことに憤りを感じたのか、葵が次の塊を見つけた。


急いで近づくと、やはり猫だった。

黄色っぽい毛並みで、うずくまっていた。

顔を見ると、やはり髭が無く気絶をしていた。


「な、なんなのよ。ここは猫の墓場?」

「落ち着け、葵!」

「落ち着いていられないわよ、心配で」

「ガトが気になるよな」

髭を抜かれた猫、気絶した猫が墓地にいた。

飼い猫が見つからなければ、葵が焦るのは当然だ。

だが、それ以上に葵は次の塊を闇の中から見つけていた。


「あっちにも、そっちにもいるぞ」

「ああ、おそらくいるかもしれない」

「いた」葵は、一つの塊を指さしていた。

その塊を見つけて、携帯電話を明かり代わりに近づいていく。

葵が近づいた先には、一匹の黒い猫。

首輪がついていて、額にキズもアリ、縦の縞も見えた猫、全てが合致していた。


「ガト……どうして」

その場に、しゃがみ込んだ葵。

やはり、そこには髭が抜かれた猫が一匹気を失っていた。

落ち込む葵の後ろで、俺は黙って立っているしか無かった。


(胸くそ悪い光景だ)

俺の感情にも自然と、憤りがあった。

目はつぶっているが、はっきり分かった。目がくり抜かれていた。


「誰がこんなことをしたのよ?」叫ぶように言う葵。

怒りが、少し離れてもはっきりオーラで感じられた。

葵は、ものすごく怒っていた。

それはそうだ、大事な飼い猫の髭を抜かれて、目玉をくり抜かれたのだから。


「葵……」

「大丈夫、アオイは平気だから……」

優しく猫を抱きかかえる葵。

心の中で、飼い猫をこんな風にしたいヤツを恨んでいるのだろう。

誰がそんなことをしたのだろう、俺も自然と怒りがこみ上げてきた。


「ねえ、学原」

「ん?」

「あたし、あんたの事を誤解していたわ」

「突然、どうしたんだ?」

「あんたはいい奴よ、本当に。今までの事は謝るわ」

そういいながら、葵はガトを抱いたまま俺の前に立っていた。


「ごめんなさい!」

今までの罪を悔い改めるように葵が、驚くほど素直に頭を深々と下げていた。



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