表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JK望月 香美の渦  作者: 葉月 優奈
一話:よし、もう一度高校生をやり直すか
12/55

012

「葵は、僕が浮気をしたと言っていたな」

聖也が放つ言葉に、猫を探していた俺は驚いた顔を見せた。


「聖也が?マジか?」思わず俺が、聞き返してしまう。

「僕はそんなことをしない、というか女子とほとんど話をしないし」

「だよな、他の女子はおろか……葵にだって怯えている様子だし」

現在の俺が、聖也と遊んでいても女の影は全く感じない。


今日、聖也が女と話をまともにしているのを初めて見た。

それぐらい、女と聖也が絡んでいるのは珍しい。

メガネを、再びかけ直して呼吸を整えた聖也。


「小五の春、僕は葵と別れた。

3月のまだ肌寒い晴れた日の放課後、僕は葵にここに呼び出された。

呼び出されたこの寺で、僕と葵は猫を拾った」

「ん?猫を拾って別れたの?」

「うん、葵は別れを切り出そうとした。

だけど、言葉に詰まり葵はなかなか言い出せなかった。

そこで、軒下にいる猫を偶然葵が見つけた。

葵は、こう言ったよ『あんたの代わりに、あたしは猫に恋をしたから』と。

一方的に言って、僕と無理矢理別れたんだ」

「そうか……」子供らしいと言えば、子供らしい。

でも今の葵は、男子にも人気のようだ。

葵は、男子と何人もつき合っていた。男をとっかえひっかえしている噂が絶えない女。


それでも、葵が猫を大事にしているということか。

猫の写真を、聖也が持っているのも納得だ。

家族ぐるみで付き合っているのだから、葵のことを何でも知っているのも分かった。


「聖也の中学って、この辺りだっけ?」

「うん、少し離れているけど。

高校選んだのも、単に登校時間が十分ほど出歩いていけるからだし」

「うわー、メッチャ近いな。俺はチャリで、三十分ほどだから」

昨日初めて……ではないけどタイムリープ後に、初めて自宅からチャリで帰った。

自転車三十分の道のりも、大人になった俺は長く感じられた。

今なら、バスか電車で帰るだろうな。この当時は金が無いから、そんなことしないけど。


「でも、君が探す必要は無いだろう」

「探すよ」聖也が悟っても、俺は帰ろうとしない。


「どうして?葵の猫なんか、そのうちふらっと見つかるし」

「俺には、やらないといけないことができたから」

それは、赤ん坊……望月に頼まれたこと。

高校時代のあのときは、やろうともしなかったこと。


でも、タイムリープをして俺はこの時代に戻ってきた。

このままでは、間違いなく望月は失踪してしまう。未来は、はっきり分かっていた。

分かっていたからこそ、この未来は変えなければならない。


(望月を救う……ことになるのだから)

葵と近づき、望月にどうしても聞かないといけない。

ユメッチの正体を探り、望月の失踪を止めないといけない。

俺はそのためにも、猫を探して葵との誤解を解いておく必要があるのだ。


「理解できないな」

「聖也」

「どうして、葵の猫を探すんだよ?

葵と君は、一切何も関係ないはずだ!」

「葵と仲良くならないと……どうしてもいけないんだよ!」

叫んだ俺は、近くの草むらをかき分けて必死に猫を探す。やはり猫が見つからない。

それでも、俺は探すのを諦めずに続けていた。


「どうして……涼真。意味が分からないよ!」

「仲良くなるのに、理由がいるのか?」

「それは……」

「聖也は用事あるなら、帰っていいよ。俺一人で、探すから」

「……知らない」

聖也は最後に一言呟いて、去って行った。

探しながらも、俺と聖也の友情にヒビが入ったと俺は感じた。


(ごめんな、聖也。

お前が俺にやめて欲しいのは、わかるけど……今はダメだ)

心の中で聖也に謝りながら、俺はそれでも寺の中で猫を探していた。



……聖也が去っても、俺は捜索を続けた。

一人で探し、それでも見つからない。

日は傾いてきて、寺の周囲もだんだんと暗くなっていた。


「ガト……どこだ?」

俺は声をかけながら、寺の周囲を探していた。

寺の中、周辺を探しながらも見つからない。

他の猫はいるけど、黒い猫で縦縞の毛並みで額にキズのある猫はいない。


俺はそれでも茂みという茂みを探していると、後ろから一人の人間が近づいてきた。

人間の気配を感じてふり返すと、そこには紺のブレザーを着た葵の姿が見えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ