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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
1 勇者なんてやめた編
6/58

『運がよかった』

目覚めたらとなりにはすやすやと寝ているウィクがいた。


なんでウィクは俺といっしょのベットで寝てんだよ!この女神に思春期という時期は来なかったのか!?と思いつつ、起きたらめんどうなことになりそうなので起こさぬよう、ゆっくりと動いた。


ギギーー!


「!!」


ベットから降りるときによくあるマットレスの音である。さおきが慎重に動いたせいか、すごく大きな音がした。


まずい!このままでは起きてしまう!


「……んうぅ……」


よかった〜。まだ大丈夫。おそらく次やらかしたら終わりだな。俺はなんとか洗面台までやってきた。

だが、水の音は思ったより大きい。ちょっと水を出しただけで起きてしまうかもしれないのだ。


だから俺は結局着替えることにした。その途中に、最悪の事態は起きた。


「……んんー」


そう、ウィクが起きたのだ。ウィクはその眠そうな目を擦りながらベットから出た。


「ふぁーー。」


ウィクの着ていたバスローブは締め方が悪かったのか、はたまたウィク自身の寝相が悪かったのか、原因はわからないが、ゆるゆるでブカブカになっていた。


それに気づいたウィクは顔を真っ赤にして、すぐに布団に再び潜り込んだ。そして今、俺はジト目で見られている。


「さおきくん…」


「言っとくが、俺はなにもしていないからな。ていうか、俺もさっき起きたばっかだぞ。」


「そうだよね!うんうん!信じてたよ!」


100%俺がなにかしたと思ってただろ!してねぇよ!


「信じてくれてどうも。一応聞いとくがもし俺がなにかしてたら?」


「さおきくんのことをこれからずっと軽蔑してるところだった。」


ヒャー!危ない危ない。つまり俺は危うく勘違いによってこれからずっと軽蔑されるところだったのか!危ない危ない。


「あのさ、なんで俺たち同じベットで寝てたの?」


「ああ、最初はさおきくんがそっちで寝てたんだけどここ、ソファーとかそういうのないしお風呂場で寝るのも嫌だったから覚悟を決めてさおきくんと一緒のベットで寝たってわけ。」


「まあ、しばらくはこんな感じでやるしかないな。」


「しょうがないからね。まあもし私たちに新しい仲間ができたら一人目は絶対女子がいい!」


「なんで?」


「2人でベットに寝れるから!つまりさおきくんに襲われる可能性が減るわけ!まあ襲わないと思うけど。」


「当たり前だろ!俺そんなに変態じゃないからな!」


そんなこんなで俺たちは、毎日こんな朝を送るのだろうか。


俺たちは朝食を食べ終わったところだ。


「おいしかったね〜」


「なんか、元の世界と料理が似ている気がするんだけど…」


スープとかご飯とかあんまり変わってない。まさかこれは、


「それはねー、さおきくんと同じように異世界こっちに転生した人が確立させたと思うよ。実際、こっちって第二の人生だからやりたいことやってる人って多いんだよね。」


やっぱり。


「なあ、これからどうするんだ?」


俺は部屋のドアを開けながら言った。


「まずは、さおきくんが自分で起こした問題を解決してからにしようー!」


問題?俺なんかやらかしたか?


「どうやら自覚がないみたいだね。それじゃあ、外に出よー」


俺は言われるままに外に出た。外では、多くの村人が頭を抱えていた。俺は何をやっちまったかすぐにわかった。


「わかった?」


「ああ。水だな。」


そう、水。氷の魔法を作るために使った水。たしか、10万Lだっけ?


「どうするの?これは元に戻さないとやばいと思うけど。」


「ウィクはなんかないのか?」


10万Lだ。その数字でわかるが普通の量じゃない。それなりの方法がないと全部の田んぼに水を戻すのは無理だ。


「なんにもない。ていうか、これさおきくんが自分で起こした問題だからね!さおきくんが何か方法見つけて!私はそれに協力してあげるから。」


ああダメだこれ。方法がなかったら絶対俺一人の責任にするつもりだ。


「とりあえず、水には水源が付き物だから、村長さんに川とかないか聞いてみよう。」


「そうだね。」


俺たちは村役場に向かった。するとウィクが、


「そーーんーちょーーさーーーん!」


急に大声で村長さんを呼んだのだ。


「なにやってんだよ!こんなので村長さんが出てくるわけ…」


「いかがしましたか?勇者様とウィク様。」


ってほんとに出てきてるし!


「ドヤサーーー」


ドヤ顔をするなドヤ顔を。普通、こういうのは「今、村長はお忙しいので私からお伝えしておきます。」とかなるもんじゃないのか?

まあ、出てきたのだからちょうどいい。用事を済ませるとしよう。


「あの、水のことなんですけど…ここの近くに水源となる川とかないんですか?」


「水源ですか。ないことはないのですが、最近水の出る量が減ってきておりまして…」


おぉ〜。ちょうどいい。これで元に戻せばある意味で一石二鳥だ。


「その水源はどこにあるんですか?」


「道が狭いのでご案内いたします。少々お待ちください。」


「「わかりました。」」


ちょっとしたころ、ごっついマッチョの人が来た。


「こちらの方が案内役です。」


「勇者様とウィク様、今回案内をさせていただきます。よろしくお願いします。」


礼儀正しいな。それとも、俺の身分が高いせいか?


「「よろしくお願いします。」」


そうして、俺たちはこの村の水源に向かった。


俺たちは水源に続いている道を歩いていた。だが、その道は…


「ねえ、この道さ、狭いというより歩きにくくない?」


「同感だな。」


その道は狭くはなく、土がドロドロしていて一歩歩いたらすぐに足を上げないと沈んでしまう、いわば沼のような道だった。


「勇者様とウィク様、大丈夫ですかーー?気をつけてくださいーーー」


「わかりましたーーーーーー」


「ていうか、あの人、歩くの速すぎない?」


ウィクも気に掛かっていたらしい。無論俺も途中から、なんでこんなにマッチョでごっつい俺の体重の2倍以上の重さはありそうな人が沈まないのか気に掛かっていた。


「たぶんここ歩くの慣れてるんじゃない?」


応答する。事実、ここを歩いただけで俺の体力の半分が持っていかれた。


「ねえ、魔法で飛べないの?」


?それは思いつかなかったな。たしかにそうだ!魔法で飛べばいいんだ!


「それだ!今からやってみよ!」


俺はいくつか試した。追い風を吹かせたり、その風を強くして風に乗ったりなどいろいろやった。だが合うものはひとつもない。


「さおきくん、速くしないとおいてくよーー!」


「わかったーーー!」


どうするか。試しに下から風を吹かせてみるか。


ーーーーーーッッ!


風を強くし、その風に乗って上まで行ってそこから追い風を吹かせて飛ぶという方法だ。

風速を強めるとだんだん体が風に乗ってきた。そこで完全に浮かび上がった瞬間に弱めて追い風を吹かせる!


「いけーーー!」


俺は追い風をふかせた。体は前にすごいスピードで進んでいる。


「お、おお、ってうわぁぁぁーーーーー!」


「ん?あれって?」


ウィクは空にすごいスピードで進む物体さおきを見た。


「ストップ!ストップーーーー!」


風を弱めた。ちょうど湖らしき大きい水たまりが見える。おそらくそこが水源だろう。


「あれ?うわぁぁーー!死ぬーーーー!」


俺は今、湖の真上で風を完全に止めた。つまり何が起きるのかというと、俺はあの湖に落ちる。


「はぁ〜。しょうがない人。」


ーーーーーーーーーーーッッッッ!


「うわぁぁーーーーー!」


?痛みがした。普通、湖に落ちたら冷たさがするのではないのだろうか。


「大丈夫?さおきくん。」


「?ここは…」


俺は小屋?小屋なのか?どこかの木製の建物に落ちた。


「俺はたしか魔法で飛んで、たしかあの湖の真上で止まって…」


「私が魔法でさおきくんをあの小屋の上まで飛ばして、それでさおきくんはここに落ちたってわけ。」


俺は天井を見た。たしかに大きな穴があいている。どうやら俺はほんとにウィクに飛ばされたらしい。


「なあ、なんかアドバンテージないのか?」


俺は服についたほこりをはたきながら言った。


「あるけど?でもさおきくんの方でいいのが出たらそれにしよっかなって。」


「じゃあアドバンテージ使えばいいじゃん。なんで俺を使ったの?」


怒ってはいない。でも少しはイラついている。


「だって、いつも同じものに固執してたら人って成長できないじゃん?だから新しいのが欲しかったの。ちなみに、私が持ってるアドバンテージは全部攻略法があるから。」


「え?」


まじか。じゃあ攻略法あるなら、いずれ負けるってことじゃん!


「はい!驚いている暇はないからね!」


そう言って、ウィクは俺の頬を両手で押した。


「今から水を元に戻すよ!」


「やるか!」


俺もちょっとやる気になった。立ち上がり、水源である湖の様子を見た。別におかしそうなところも異常も感じない。水がすごくきれいで澄んでいる。


「なあ、これの湖が水源なんだよな?」


「そうだけど?」


「別に変なところとかなくね?」


「私もそう思ってたところ。」


うーん、水の量は多そうだもんなぁ。


「今、村に水が思うように引けない理由は昔は底が見えなかったこの水源に底が見えたからなんだって。」


「!!」


「どうしたの?」


「いや、なんでもない。」


もう信じるしかない。この女神、人の心読めるな。

でも、湖だもんな。いつか資源は尽きるものだし…


「で、これからどうするかなぁー」


俺はなにか案はないかという意味を込めてウィクをチラッと見た。


「ちゃんとさおきくんがどうするか考えてね!」


ダメだーーー!やはり何もヘルプしてくれない!


「…んーー」


ダメだーーーーーーーーー!なにもない!

俺は頭を掻きながらなにかないかと考えていた。


考え始めてしばらくたった。


「さおきくんーー?まだーー?」


「もうちょい待ってくれ!」


「速くしてよーーー」


「………」


速くしろと言われてもなぁ!なんにもないんだよ!


待てよ…もう一度状況を整理しよう。今、この水源は水が尽きそうなんだ。尽きそうなんだ。尽きそう……

ん?待てよ?じゃあ水をまた出せばいいんじゃないか?


「なあ、この湖にさ、空洞作れる?」


「どういうこと?」


「だから、この湖のど真ん中に空洞作って、湖の底に行って、水を叩き出すんだよ。」


「ふーん。やるじゃん。ちょっと待ってね。」


なんでこんなに上から目線なんだ!?まさか俺を試してた?


ーーーーーーッッッッ!


突然湖の真ん中に風の柱が出現した。それもその真ん中のところを囲むように。近くにいた鳥たちはみんな飛んでいき、湖方向に飛んで来れないとほどの強い風だった。


囲み終わったあと、大木ですら離れているのに揺れてしまうほどの勢いの風が上に向かって吹き、そこの水が一気に内側から外側に出ていく。


「まあこのくらいかな!」


水を全部出し終わったらしい。相当な量だ。中央の水がなくなってその分、周りの水の量が増えて溢れている。これで水が増えなかったら俺、どうしよ…


「よし!早速見てみるか!」


俺はそのウィクの作った風の柱の中に入ろうとさっきと同じように飛んで入ろうとしたら…


「うぎゃ!」


弾き飛ばされた。


「まあ当たり前の結果を見たまでだね!」


だからドヤ顔をするなドヤ顔を。ってこのままだと…


「また落ちるーーーーー!」


「ったく、ほんとにしょうがない人。」


ーーーーーーッッッ!


またさっきと同じようにウィクに飛ばされた。


「あ、ありがと。」


「飛び方は…こう!」


ウィクの足元に小さな竜巻が現れた。すごく小さい。でもウィクはその竜巻に立つことで空を飛べている。

俺もグズグズしてはいられない。


「えっと………こうか!」


俺も竜巻をつくり、飛ぶことができた。


「創造力はないけど、学習能力は高いのね。」


「ああ、ほんと、せめて学習能力が高くてよかったよ。」


「上まで行くよ!」


「了解!」


俺たちは上に行った。すごい景色だ。雲一つなく、森が作る緑の世界が広がっている。


「降りるよ。」


ちょっと移動したらすぐに降りることになった。風の柱で真ん中の部分が囲まれている。


「さおきくん、これは結構大変なことになりそうだよ…」


下に何かいるのか?わからなかったため、もうちょっと近づいてみた。


「おいおいおい…なんでこんな湖の底にこんなやつがいるんだよ…」


ジャストサイズで大きなモンスターがいるじゃねぇか!しかも、なんの動きもない。大抵、水中で生きる生物は水がなくなったら呼吸ができなくなるんじゃないのかよ!?


しかし、あのモンスターを倒さなければ水源は戻らないのだろうか。あのモンスターが必ずしもこの湖の水の湧き出るところを塞いでいるとも限らない。でも、あのモンスターが1番の原因と見ていいのではないだろうか。


「あれを倒す…のか?」


正直、やる気がしない。あんなに大きなモンスター、今の実力じゃ倒せる気がしない。どうするか…


「さおきくん、頭が固いね。無理に倒さなくてもいいのに。」


「?じゃあどうするんだ?」


「だから、さおきくんの考え通りだったら、あのモンスターが水の湧き出るところを塞いでいるとしたら、あのモンスターを動かせばいいんだよ!」


たしかに。もっともだ。ウィクの言う通り、無理に倒す必要はない。


「とりあえず、ちょっとあのモンスターの近くに行って見る。ウィクはそこで待ってて。」


「はーい。」


俺はモンスターの近くまで行った。おかしいほど落ち着いている。まさか、俺たちの存在に気づいてないのか?


「おいおいおい…」


上空からはただの緑色のモンスターにしか見えなかった。だが、近づくと誰でもわかる。これは…


「ワニか!」


「?なんてーーーーー?」


ウィクは俺の独り言が聞こえたのか聞いてくる。なんか気になって降りてきたらしい。


「さおきくん、これって、あの、あれだよね、あの、アマゾンってとこにいる、やつ、だよね!」


最後に急に肯定した!まあ、わかっているみたいだし、言うまでもないか。


「ああ、あれだよ。でもさ、重そうじゃん。」


「それか、やっぱりっちゃおっか!」


「だからそんな言葉急に言わないで!ゾクってするでしょ!ゾクって!」


「そう?」


「そう!」


まあでも具体的な案がない限り、ただ倒しても元には戻らないだろうな。


思考する。でも俺は自分がバカバカしく思えてきた。なぜあのワニの下に水が湧き出る場所があるという前提で考えているのだろうか。なぜ、あのワニが全ての原因だと思っているのだろうか。


『こんなのはいかがでしょうか。』


(?)


俺はおとなしくあいつの話を聞いた。そして、実行に移す。


「さおきくん、やっぱりろうよ。それ以外に方法がないし。」


「それ以外の方法を今思いついた。」


さて、さっさと終わらせるとしようじゃねぇか!



「癪だけど、のってあげる。あと、私のこの魔法ももう長持ちしなさそうだから急いでね!」


「りょーかい!」


まず第一段階。あのワニは寝ていることはすでにわかっている。だから…


「眠っているワニさんや!そろそろ起きたらどうですか!」


そう言って俺はワニの口が開いた瞬間に大量の氷塊を叩き込んだ。


「!!??」


起きた。ここで第二段階!


ワニが動いた瞬間、ワニですら想像を絶する大事件は起きた。


地響きがする。今回のは俺がやっているわけではない。ウィクも驚きを隠せていない。それどころか今から何をするつもりなんだといわんばかりに俺を見ている。俺がやったわけじゃないんだけどな。


ーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!


「え?」「あ?」


変な声が出てしまった。そんなことはどうでもいい。何が起きたのかというと俺の勘は見事に的中し、ワニの下から水が吹き上げ、噴水のようになった。その勢いはすさまじいものでワニは空に上がっていた。


「魔法解除!さおきくん、速くそこから離れて!」


反応するのが遅れ、ウィクより事態を把握するのが遅くなった。今起きていることを簡単にまとめるとつまり、俺はこのまま同じ場所にいたらワニの下敷きになってしまうのだ。


なんとか離れることができた。ワニが落ちてくる。


ーーーーーーーーーーーーッッッッ!


「キャッ!冷たい!」


水しぶきと衝撃がとにかくすごい。近くの木々が水びたしになってしまった。そして、小屋は崩れているほどだ。ん?待てよ。あの小屋には俺たちの案内をしてくれた人がいるんじゃ…


「僕は大丈夫なので!気にせず!」


いや〜、タフ!あんな大きな小屋が崩れたら大抵の人はつぶされて死ぬだろう。なのにあの人は無傷だ。村のスーパーマン説あるぞ。


「さおきくん、あのモンスターは?」


「ああ、あのワニなら…」


おそらくまた湖の中に沈んだのだろう。これ以上、あそこで寝ないでほしいところだ。

こんな裁きを受けたわけだしもうあそこでは寝れないだろう。

まあとりあえず、今ので大量の水が噴き出たわけだし、少なくとも10Lは困らないのではなかろうか。

これでやることは終わったわけだし…


「帰るか!」


「うん!」


俺たちはそのまま飛んで村へ戻った。

水源の水の量も元に戻り、村人に再びいつもの生活が戻った。


ーおまけー

ワニを倒した後俺たちは村に戻り、夕食を食べていた。


「やっぱりおいしいね!」


ウィクが言う。実際、ここの宿のランチサービスってやつなのだろうか?がたしかに美味い。だが今日は…


「うっ…ピーマン…」


そう、嫌いなピーマンが入っているのだ。


「さおきくん、ピーマン嫌いなの?」


ウィクが笑いたいのを必死に抑えているのが目にとれてわかる。まあこればかりはしかたない。


「よーし!ここは…」


ウィクが俺の箸を持って俺の皿に置いてあるピーマンを掴んだ。


「はい、あーーん!」


!?ここにきてあーんだと!?笑ってんのか!?いや笑ってるな。


俺は自分で自分を突っ込む。実際、中学生が見た目の年齢が10歳くらいしかない明らかに年下の女の子にあーんされている。これは恥ずかしいどころじゃない!


「食べるから!自分で食べるから!」


「姉様と同じでさおきくんもチョロいね。」


「それは人前でいうものじゃない!」


こうして、俺は嫌いなピーマンをしかたなく食べたのだった。


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