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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
5 さおき、半魔になった編
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幕間 『侵略計画』

「さてとエンリルくん。言ってしまえば、君はこの僕ら魔王間の決まりを破ったわけだ。代償はきちんと払ってくれるんだよね?」


「だから、さっきから言ってるだろ。僕がこの侵略を成功させればいいだけのことでしょ?」


「確かに、そうだね。でも、もし負けたらどうするんだい?聞くところによると、剣聖という僕らに劣らぬ実力の持ち主がいるそうじゃないか」


「それに関して僕から話すことはなにもない。これだけは言っておくよ。もちろん剣聖を倒すことも計画の中に入ってる」


「へー。」


大きな会議場に響く二人の魔王の声。そこ以外には、他七人も魔王も全員出席していた。特に、エンリルとエレボスしか話してなく、それ以外の魔王はエンリルの発言に対し、頭を悩ませていた。


「俺はエンリルの肩は持たんが、この侵略に対して是非を問うつもりもない。俺ももし国がエンリルんとこみたいになったら、こんな方法を取るかもしれねぇからな。」


エレボスとエンリルの言葉しか飛び交っていないかった会議場に【強欲の魔王】トートの発言が飛び交う。同時に、このーーー


「あたしは反対だよ!人間どもの方にあたしたちがl手を出せば、あんなに繊細なものやうまいものを作れる人間が減る。それはあたしにとっても、あたしのとこのやつらに対しても不利益しかない」


声を荒げて言い放ったのは、【暴食の魔王】エアだ。他の魔王と比べて、なにもかもがとりわけ小さい彼女は、持っている領土だけは魔王の中で一番大きい。そのため、彼女の発言により、状況がさらに深刻化していくこととなる。


「なあ、俺はこのことに首突っ込まなくていいか?めんどそうだし。侵略するなら勝手にやってろっての」


重い口調で言ったのは、【怠惰の魔王】カーリーだ。彼はその名の通り怠惰で、とても政治をするのに向いておらず、この魔王間の雑談の場以外には、代理の政治家を用いるほどだ。


「俺もそうしてもらおうかな」


「私も。エンリルに同情ができない魔王なんていないと思うわ。今こそうまくやっていけてるけど、誰だって、国の危機に陥ったことはあったでしょ」


最後に、【色欲の魔王】イシュタルと、【傲慢の魔王】ユウピテルが発言。そして、それら全てを聞いていたエレボスが全員の意見をまとめる。


「つまり、反対1票、賛成0票、どちらでもが6票と言った感じだね。……というわけでエンリルくん」


さっきまで軽かった口調が真逆のように重くなる。そしてーーー


「君のこの行動の是非は決まらなかった。だが、皆もするなとは言っていないから、侵略をしてもらって結構。だけど、終わったらそれなりのペナルティが付くし、失敗すればさらに付く」


「わかってる。今ここに集った僕と同じ魔王たちに改めて感謝を申し上げたい」


そう言って、立ち上がって深くおじぎをするエンリル。その後、この場はすぐに閉ざされたのだった。


「貴様が【嫉妬の魔王】エンリルだな。はじめまして」


城に戻ると、人間の使者がなぜかいた。人間とは手を組むはずがないのだが…

そもそも、警備の兵たちをどうやって掻い潜ってきたのだろうか。だが、今はそれどころではない。思考を切り替えると同時に咳払いをして、


「君、何者?」


「私はただ、北の帝国の皇帝からあなた様に向けて派遣された使者でございます」


「そんなバカな。僕の城の警備は厳重というほどじゃないけど、こんな隠密特化な人間をのこのこと入らせるようなことはしないと思うんだけど」


すると、その使者がすぐに床の膝をつけ、


「それなら申し訳ございません。すこし、手荒な事をさせていただきました」


つまり、兵たちを数人倒して入ってきたと。それならおかしくもない。


「わかった。で、用件は?」


「全て話すと、我が皇帝はあなた様がこれからエルドラドに侵略を開始することを把握しておられます」


「なんだと!?」


どうせ貿易をしようとかそういうくだらない話をしにきたのかと思っていた。

それなのにーーー


「その情報、どこから入った」


ひとまず、からかわれてるだけという可能性もあるため、なにも動じない。


「それは国家機密でございます。続きですが、こちらの文書をいただいております。」


そう言って、文書を差し出してきた。エンリルは迷うことなくそれを受け取る。そして、すぐに開封した。


「お返事をそのまま持ち帰るように言われております。なので、申し訳ないのですが、私のために一室用意していただくか、そのまま口頭で私にお伝えください」


使者の言葉など、まったく耳に入らず、エンリルは文書に釘付けになっていた。


【はじめまして。【嫉妬の魔王】エンリルよ。そこにいる使者から聞いておるやもしれぬが、わしは貴様の計画を全てではないが、あらかた知っておる。そこでじゃ、】


文書はここで終わっている。続きが気になるところだが、エンリルにはそれが容易に想像できた。


「手を組む、と」


「いかにも。我ら帝国は、あなた様とともにエルドラドを墜とそうと計画しております」


北の帝国。寒さが厳しく、ある一定の同じ食材しか手に入らないし、産業も盛んではないが、帝国と呼ばれるだけあって、軍事力は他と比べて格別だ。

しかも、計画を把握されているのであればおそらく動機も把握済みである可能性が高い。そのままエルドラドの土地をよこせと言ってくるかもだが、その場合は条約を結べばいい。

しかたない。この交渉は言うまでもなく帝国側が有利だ。もしここで拒否してしまえばエルドラドにこの情報が流れるかもしれない。それだけは避けなければならない。ならば、


「その提案に乗る、と伝えておけ。後日、僕自らがそちらの帝国とやらに行って、詳しい話をしようじゃないか」


「承知いたしました。では、私はこれで」


その使者はすぐに影のように黒くなって、消え去った。同時に、帝国では、軍の準備が着々と進んでいたのだった。


魔王たちです。数ヶ月の登場(笑)

それと気づいた方もいらっしゃると思いますが、ペンネームを『空翠』から最初期の『じゅじゅ』に戻しました。初心忘るべからず、です!

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