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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
5 さおき、半魔になった編
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『新たな始まり』



「で、」


有希の三つ編みを作り終えてから、ずっとアミリエがさおきに近い。朝食を食べ終えてから、それがさらにエスカレートしていった。


「ダーメ、昨日の夜一緒に寝られなかったんだから。これくらいは許してほしい」


と、本人は言っているが、いつもと比べて密着度が高い。いつもならただ腕を肩にかけて、たまに首に巻いてくるくらいだったのだが今日はいつもとは違って、さおきの右腕を取って、組んで歩いていた。


「あの、別に、それはいいんだけど…」


普通に恥ずかしい。今、ここには森に住んでいる精霊たちを除くとさおきたち四人しかいない。それでも、いつもとはなにかが違った。


「はいはい。イチャイチャしてないで、やるべきことやるよ。まず、ちょっと改良したいところがあるからさおきくんはバンド、リエちゃんは髪飾り外して」


ウィクにバンドを渡すと、すぐに亜空間を開いて入っていった。


「え?こんなところに作業所あんの?」


開けっぱなしだったため、そのままさおきとアミリエもウィクに続いて亜空間に入っていった。


少し歩くと、目の前に非常にきれいな工房があった。

中でウィクが目を保護するためか、鉄板のついた保護用のマスクをつけていた。


「ふぅ〜、ってどうかした?」


まるで何事もなかったかのようにすました顔でウィクがマスクを取る。


「いや、どうかしたって、まさかこんな場所があったとは…っていうか?」


「私たちの実験室に似てる」


アミリエたちの実験室がこの工房に似ていると言われて、妄想を膨らますさおき。そして、無性に今度はアミリエたちの実験室に行きたくなった。でも、急に忘れていたことを思い出す。それは、


「そういえば、有希はどこ行ったんだ?」


朝食を食べ終えてから、有希の姿が見当たらない。ずっとそのことを忘れていたのだ。


「有希はね、確かうさぎさんのところ行くーって言って飛び出してったよ」


「ありがと。後で探してみる」


そう言って、さおきたち二人はウィクの工房を後にした。


「さおき。お姉ちゃんの体の方はどうなったの?」


「あ…」


忘れていた。確か体を作る系の魔法を作るとは言っていた気がする。


『なあ、どうなったんだ?』


『………』


『おーい』


『……』


返事がない。昨日の夜、徹夜でもしたのだろうか。


「まったく返事が返ってこないんだよなぁ」


「ちょっと待ってね」


そう言って、その場でアミリエがさおきに寄りかかった。そして、さおきの精神内に再び侵入する。


『お姉ちゃんー!起きてー!』


アミリエの叫び声がさおきの精神内に響き、それはもちろんネメシスにだけでなく、さおきにも聞こえた。


『ちょっ!リア、俺とネメシスのこのトークルームに入れるのかよ!?』


『んん……なんでふかぁ〜?せっかく徹夜までふぃて作っらんでふから早く用意してください』


寝起き感をたっぷり漂わせた声でようやく返事が帰ってくる。


『じゃあ今から用意するからおとなしくベットで寝てろよ〜』


『わかりましたぁ』


スキルにあった”分身”を使用すると、目の前にさおきと何から何まで違わないさおきが現れた。


「うんうん、さすがお姉ちゃん。最初からすごく熟練された分身が作れるようになってる」


アミリエがすぐさま出来上がったさおきの分身をいろいろ物色している。さおきもよく見ると、服のしわとかちょっとだけ上にはねてる髪など、細かいところまで再現されていた。


『終わったぞー』


『りょーうかいです〜今すぐに目の前にいる分身と手を繋いでくださぁい』


言われた通りに、自分の分身の手を取るさおき。すると、さおきの中から黒い光が分身に流れ込んだ。


「完成ですね〜。それじゃ、私は眠いので、戻りますね〜」


そう言って、さおきの分身が勢いよくさおきに吸い込まれた。


『それじゃ…』


『おいまて!聞きたいこと山ほどあるんだが!?』


『あとにしてくださあ…』


すぐに眠りについた様子のネメシス。まだ昼にもなっていないから、また後で強制的に起こそう。うん。



             △▼△▼△▼△

「あ、先輩ー!」


引き続き森の中をぶらぶらしていると、案外すぐにうさぎとなにやら盛り上がっている有希を見つけた。


「先輩どうしたんですか?こんなとこまで」


「別に何も。ただ、どこに行ったのかなぁと思っただけ」


「そうそう、そんなことよりも、このうさぎさんすっごいいい精霊さんなんですよ!もうかれこれこの森を守って数百年になるらしいんですよ!他の代役の精霊さんがいないからって」


有希が手のひらに乗せているうさぎをさおきに差し出す。すると、周囲に衝撃波が走った。


「そんなに警戒されると少し悲しむなぁ。これでも、昨日の夜一緒に遊んだ相手じゃない」


「遊ぶ?あれがか?」


あの戦闘でのことは今でも覚えている。そもそも、昨日という1日で体がどれだけ変化しただろうか。さおき自身すら、まだ全容を把握しきれていない。そんな発展途上中に勝負を挑まれ、さらに変化した。今や、さおきはもうー


「君さ。人間なの?本当に」


「なにが言いたい」


「そのままの意味だよ。僕が君に挑んだ理由は紛れもなく、君の体の中にあるとてつもないほどの魔力があったからさ。まあ、その答えは昨日わかったからいいけど」


「こーら、2人ともそんなにギスギスしないの。うさぎさんも、森の安全のためにしたことなんですし、先輩もそんなに気にしないの!何事もなかったんだから」


危うく何事かが起きる寸前までいった激ヤバなうさぎが目の前にいますよー。

有希に言ってやりたかったが、有希がうさぎと結構仲良くなっていたため、やめにした。


そろそろ戻ろうとしたとき、アミリエがさおきの服を引っ張っる。そして、有希の髪を指差した。


「あれって、誰が作ったの?」


「俺だけど?どうかした?」


「え!?さおきって髪型とか作れるの!?」


心底驚いている様子だ。無理もないだろう。さおきと共に旅をし始めてまだ1ヶ月も経っていないくらいで、なおかつさおきが器用に物事をこなしている姿を見たことがないのだ。


「じゃあ、私のもできる?」


「有希みたいな三つ編みくらいしかできないけど、それでもいいならやってみるけど」


「やったー!じゃあ、終わったら実験開始だからね!」


「ん?実験って?」


実験。おそらく昨日言っていたどんな魔法も反射する鏡のことなのだろうかと発想を飛ばす。だが、アミリエの口から出た内容はそんなものではなかった。


「やることたくさんある!まずさおきがどこまで魔法と剣術ができるのか見てみたい。その後、申し訳ないけどさおきには実験代モルモットになってほしい』


「へ?」


「だからここ数日はお姉ちゃんと一緒に実験して、陣転書いて、試すっていう手順をどんどん繰り返す」


「あ、はい…」


こりゃまた大変そうなことになりそうだなと、再び気を引き締めるさおきだった。


お久しぶりになりますね。約2週間投稿ストップのサボりです(笑)と言っても、執筆しなかったわけじゃないんですよ!?どうやら、毎回最終回を書くと急に書けなくなる症なのです。というわけで2週間サボってたので2本分です。

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