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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
5 さおき、半魔になった編
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『強制終了させられました』

また夜遅くに申し訳ないです…m(_ _)m

「そちらも、ですか」


口が勝手に動く。急に動いた口を塞ごうと、両手を動かそうとすると右手しか動かなかった。


『そうそう、魔神化するとこの場合は体の主導権が分かれるので。だから早く私の体を用意してって言ってるんです』


『確かに…』


体が半分しかない感覚を身をもって実感するさおき。まるで、左半身が石にでもなったみたいに重たく、動かせなかった。


「ちっ、さすがに硬いな。こっちは限界突破してるってのに…」


限界突破して魔力量や魔法の精度、それにさっきと比べ物にならないほどの魔法を連発するも、さおきを囲む結界がなかなか破れない。


「おりゃぁぁーーー!」


万策尽きたのか、うさぎがその小さな手を丸めて、全力で結界を一回殴る。

そんなことで割れるはずがないと確信し、立ち尽くすさおきだったが、結界が見事に粉々になった。


「ちょっ!まじかっ!」


割られた瞬間、全方位から風の刃、火球、上からは大量の水が避ける隙もなくさおきに押し寄せる。


『これが形成逆転ってやつですね。浮かれてたからですよ』


『とりあえず、主導権を俺によこせ!なんとかすっから!』


この数秒でなにができるか。左手に浮かべる魔神の紋様を見つめ、考えついた。


「ーーーっっ!!」


避けるにも避けられる時間がない。なら、


「迎え撃つまでーー!」


そう言って、獄炎(ヘルフレイム)をうさぎが使っていた火球状に用意して周囲にばら撒く。そして、


『これ、使ってもいいんだよな?そうだよな!?』


圧をかけるようにネメシスに問うさおき。焦燥感が増しているせいか、返事を聞く前に行動に移そうとしていた。


『って、もう使おうとしてるじゃないですか。いいですよ』


魔力増幅アンプリフィケーション


なぜか自分のスキルとして存在していたこの能力。その名の通り魔力を増幅させるものだった。


「これはさすがに凌げないでしょ…」


ようやく勝負の流れが良くなって大きく息を吐いたうさぎだったが、予想だにしないことが目の前で起こる。


「爆発!?」


四方を全て三属性の魔法で包囲し、なおかつその全てがさおきに襲いかかるようにした。普通なら3つの攻撃が全て被弾したときの衝撃がくるはずなのに、爆発が起きたのだ。


「嘘でしょ…いくらなんでもこれを防ぐなんて……また結界を張るにも絶対に10秒くらいは必要だし…」


終わったあと、その爆煙の中から人が一人出てくる。紛れもない、さおき本人だった。


「どうやって防いだの?これを防げる人間は見たことないんだけど」


平然を装ううさぎ。だが内心は信じられずにいた。限界突破しててなおかつ今できる最高状態の魔法を撃ち込んだ。しかも三属性だから全て相殺するためには同レベルの魔法を使う必要がある。しかも三属性もだ。とてもあの数秒間でできることじゃない。


「ちょっとな。無傷じゃすまなかったけど。おかげで大ダメージとはいかなかったよ」


「魔神、なの?君」


さおきの左手を指差しながら、うさぎが距離を取る。この質問もその時間稼ぎようなのだとすぐにさおきは理解した。


「それは秘密ってやつだなぁ〜」


そう言って同じ距離を保とうと、うさぎが下がる分だけ近づくさおき。


「仮に君が悪魔でも魔神でもなかったとしても、悪魔族デーモンとなんらかの繋がりがあるのは事実だろうね。アミリエさんも悪魔族デーモンみたいだし」


一緒にウェリンドに会いに行ったときから知ってるのに、あたかも知らなかった風に装う。こんなことはもう意味がないということを知っておきながらも、少しでもさおきに圧をかけようとする。そんなときだった。


「ストォォーーーープ!!」


さおきとうさぎが同時にその声が聞こえる方向を向き、その方向に強烈な二人の殺気が届いた。


「ひっ!」


「ウィク、どうしたんだ?」


ほうきに乗っているウィクだった。その殺気に押されたのか、その場で止まってしまった。


さおきが殺気をなくすと、ウィクが引き続きさおきの元ヘと飛んでいく。


「なにしてんのよ!リエちゃんに会ったっていう長老って人が激おこ状態だよ!特にうさぎさんは早く戻ったほうがいいよ!」


うさぎも殺気を消して、大きなため息を吐いた。


「はぁ…今回もダメだったか」


そう言って、森へ飛んでいくうさぎ。さおきとウィクも、一緒に森の中に戻っていった。


こうして、一人の半魔と一匹のうさぎの争いは幕を強制的に閉じられることとなったのだった。

             △▼△▼△▼△

「先輩なにしてたんですか!それに左手のこの紋様はなんなんですか!」


森の木に寝室が用意されていて、そこに戻ると有希が歩み寄ってきた。


「リエちゃんも、なんで止めなかったの?その場にいたんだよね?」


この場で、アミリエだけが笑っていた。そのアミリエがさおきの左手を取り、


「私も初めて見た…手に紋様を浮かべる魔神!」


「聴いてない!」


さおきの左手を離し、アミリエが顔に笑みを浮かべたまま、話始めた。


「この戦いはさおきにとってもいい経験になったと思う。私とお姉ちゃん的にも、さおき自身が魔神化できる可能性が見えてきたからすごくよかった!」


「「……」」


無言でさおきにジト目を向ける有希とウィク。


(先輩、ちょっと後で付き合ってください)


(は?なんで)


(なんでもです!)


目で激しくバチり合う二人。やがて、さおきの魔神化も解けた。


「魔力切れね。長さも短くはない。だから……さおき、いつか自分で魔神化できるよ!」


「あ、ああ」


有希に連れられてさおきは外に出て、近くの森の中に入った。


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