『うさぎvs半魔』
アミリエが森に戻ったことを確認し、構えるさおき。同様に、うさぎの精霊も火球を用意して構えた。
「で、どうするんだ?シンプルに俺とやりあう方がいいか?それとも、ボコしてあげよっか?」
「自分が勝つこと前提なんだね」
「まあな。負ける気がしねぇ」
「じゃあ、僕も本気でやっちゃおっかな!」
「本気でこいよ?さもないと勝っても勝った気しないから」
特になんの武器も持っていないし、うさぎも小さいため主に魔法での戦いになる。
『ヘルプよろしく。終わったらさっき言ってたおまえの体の件、考えてやるから』
『考えてやる、じゃなくて用意してください』
『へいへい』
これで勝ちが確定し、軽く腕まくりをするさおき。そして、自分を囲むように切風を展開させる。
「それじゃ、行くよ!」
声と同時に、全方位から火球が飛んでくる。何度も飛んでくるが、それを切風で防ぐ。だが何回も耐えられるわけでもなく、火球が飛んでくるまでの数秒で、回避した。
「さて…」
アミリエに聞かされた話の中から、このうさぎについてのことを必死に思い出す。
「基礎三属性が精霊トップ、か…」
今さらだが、さおきは魔法に関しての属性について理解度が曖昧だ。ゆえに、
『基礎三属性の解説ですか…』
呆れたようにネメシスがため息を吐いた。
『よろしく。俺は目の前のうさぎに集中するから』
『じゃあ手短にに説明しますよ?基礎三属性は火、水、風の三属性でそこから派生した魔法が炎、氷、雷魔法になります。対処法は自分でなんとかしてください。そろそろちゃんと勉強してください』
軽く愚痴られるも、しっかりスルーするさおき。今目の前にうさぎは火、水、風の魔法しか使ってこない。
さおきは闇、氷、風の魔法しか使えない。あとは付与とか最近まったく使っていない変身くらい。だから、風魔法を使うとすぐに火魔法で相殺されるどころか逆に危なくなってしまう。
(風は封印だな。あとこいつ結構本気で殺しに来てないか?)
内心、呟くとすかさず火球が襲ってくる。
『さおき!聞こえるー!?』
急にアミリエの声が聞こえた。同時に、全身に激痛が走る。
「ーーッッ!」
少し降りて、その場で胸を抑える。それでも、今度は切風みたいな風の刃がついた火球が飛んでくる。
やむをえず一番使いたくなかった、氷の礫をたくさん用意し、それで迎え撃つ。
『さおき、返事はしなくていいから。今から私の実験に付き合って!』
一方的に話を進められるさおき。なにか言い返したくても今は痛みが治るのを待つのとうさぎの相手で手一杯。とても会話できる状態ではなかった。
『というわけでよろしく!うまくいくことを期待してるよ!』
さっきと変わらず、テンションが高いように思えるような声だった。
『はい、じゃあやりますよ。左手に力を込めて、魔力を貯めて』
ネメシスに言われるままに、左手を力強く握って魔力を集めるさおき。すると、黒い紋様が左手に浮かび上がる。
『これは……初めて見ましたよ。手に紋様が浮かぶ魔神は』
『それはどういう……っ!』
再び、さおきが黒く、小さな竜巻に包まれる。
「きたか…」
そう呟くと、さおきから距離を取るうさぎ。うさぎもまた、自分に周囲の魔力を集める。
パァァァーーン!!
強い衝撃とともに、さおきを囲んでいた竜巻が消滅する。そこから現れたのは、黒い翼を身に宿し、左手に黒い紋様を浮かべて、目の輝きが失われているさおきだった。
『調子はどうですか?私の魔力が馴染めてきたおかげで、案外簡単に魔神化できましたね。もっとも、今のあなたは厳密に言うと“半魔”ですけど。』
半魔。つまり、半分の魔神だということをすぐに理解するさおき。それでも、湧き上がる力がの量が多すぎて、必死に抑えていた。
『これでまだ半魔って、おまえら魔神はどんだけ強いんだよ』
『あなたの場合はもっと強くなれますよ?まだ全然訓練などをしていないせいですごくレベルが低いですし、これでも元は人間なのであなたは限界突破ができるはずですから、これが全て重なればとんでもない化け物の完成です』
『おまえは俺を何だと思ってるんだよ…』
この話の間にも、もちろんうさぎからの猛攻は続くのだが、テキトウに作った魔力壁で防御ができる。いってしまえば、今のさおきは無敵状態だった。
「僕も、久しぶりにやってみたかったんだよね!」
周囲の魔力がうさぎに集中する。そして、うさぎから黄色いオーラをまとった。
『これが、限界突破です。魔神化同様、自分の能力を倍以上に引き上げます。魔神化と違うところは、限界突破は魔神化とは違って永久に続かないところですね』
ここから、うさぎと半魔の戦いはその様相を大きく変えていくのだった。




