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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
5 さおき、半魔になった編
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『宣戦布告』

その後、声のボリュームを大きくして語り始めたアミリエ。でも、ウィクから出た腹からグゥーという音と同時に現実に引き戻された。


「まあ、5分だけだし。すぐに経つでしょ!いってらしゃーい!」


ウィクに背中を押されて、さおきが半ば強制的に精霊の森から追い出される。


「さぁて!」


勢いよく空へ飛び上がる。すると、すぐに自分に起きている変化に気づいた。

そして、後ろにいるアミリエに問う。


「なあ、俺の翼ってこんなに現実味あったか?もっと…その、二次元的な物じゃなかったか?」


実際に黒い羽までついている。まるでアミリエみたいな本物の悪魔族デーモンが持つ翼みたいだ。


「お姉ちゃんの血が混じった時点でそのくらいの変化はする。あと、一番の変化は…ってもうすぐわかるね」


「?」


よくわからなかったさおきだが、すぐになにのことか身をもって理解した。


自分で作ったはずの千里眼が前の戦闘以上に遠くまで見えるようになっている。しかも、建物を透視することもできるようになっていた。


「これが変化?だとしたら思ったよりショボいんだけど…」


「まだまだ。こんなものじゃない」


覗くと、案外すぐに町が見つかったためそのまま飛んで向かう。

急に飛んだため心配して後ろを向くも、アミリエがちゃんとついてきていた。


だが、さおきはそれどころじゃなかった。


「なにこのスピード!?前の比じゃないんだけど!?」


とても速い。否、速いという単語だけでは表せないほどの速さだ。町まで1分くらいの予定だったのだが、数秒で着いてしまった気がする。


ブレーキも非常にかけやすく、その際に翼が動いて黒い羽がいくつか空に舞う。


「なあ、これって俺の全体的な身体能力が向上してない?ネメシスのせいでさ」


「そんな感じ。今のさおきの強さは端的に言えば魔物と戦う前の20倍以上。私と比べたらまた劣ってるけどそこらの上位魔物や……そうね、アルドラなんて余裕じゃない?」


現実的な例を出されて、少し戸惑うさおき。


(つまり、この王国の騎士団の副団長なんて余裕だと。そしたら、王国最強になるんじゃね?)


一瞬だけ気分が思い上がったさおきをすぐにネメシスが冷水をかけるかのように冷やす。


『いえ、剣聖がいます。このエルドラド王国って、実は私が生きてたころからあったんですよ。今でもまだ滅びてないのが不思議なくらいですが、剣聖がいると聞いたことあります。さすがにその人間には勝てない…』


剣聖。異世界転生では絶対に避けては通れないよくある作中最強キャラ。イケメンで優しいイメージしかない。


『へ、へぇー、け、剣聖なんて、いるんだー』


完全棒読み。空中でボォーっとしていたさおきの頬を引っ張るアミリエ。ネメシスとの会話は強制中断される。思ったよりも痛かった。


「時間ないし、早く行くよ!」


町までおりる。夜の7時にも関わらず、お店が立ち並び賑わっていた。


「なあ、今7時くらいだよな?」


「いいんじゃない?おかげでこっちも早く終わるし」


そう言って、さおきたちは並んでいるお店から買うべき物をさっさと購入する。案外すぐに終わったのだが、アミリエの注文した魔力結晶が見つからないのだ。


「やっぱり、売ってないだろ。魔力結晶なんて、絶対洞窟とか行かないと採れなさそうだし…」


「そうみたい…昔は売ってたんだけど…」


「まあ、それはなんとかなるんだけど…」


まだ1日も経ってないのにアミリエがいつものように自分の肩に両腕をかけて、顔を覗かせているのが慣れない。


「あれ?もしかして照れてる?」


「い、いやぁ〜?そんなこと〜」


「うんうん、初デートの割にはなにもないからなにかないかなぁって思ってたんだけど、さおきの照れてる顔が見れてよかった」


アミリエから目を逸らすさおきだったが、とある単語が頭に引っかかった。


「は、初デート?」


“デート”という言葉に引っかかるさおき。さおきはこれをただの買い出しだと思っているため余計に鮮明に残っている。


「だって、これデートでしょ?私たち二人しか来てないし」


少し焦りを見せながら、さおきが続く。


「さ、流石に違うだろ…これ、ただの買い出しだし?」


「さおきがそうなら私は別にいいよ〜私はこれをデートだと思ってるから」


非常に機嫌のいいアミリエ。このようなアミリエをこれから見れるのは数えるほどしかないと判断したさおきは、デートに関してこれ以上なにも言わなかった。


「それで、どうするんだ?魔力結晶。もう時間ないけど…」


急いで食材などを買ったものの、残り時間は1分を切っている。やはり5分だけというのは無理があったのだ。帰らないと森が消えてしまう。それだけは避けなければならない。


「作ろうと思えば作れるし。私が自分でなんとかする」


「じゃあ、帰るか」


「もうちょっと時間が欲しいところだけど、しょうがない…」


そのままアミリエを乗せた状態で森まで戻ったさおきたち。森が見えたのだが、うさぎの精霊が待ち構えていた。


「どうした?ちゃんと5分いないに着いたけど」


「……」


「おい、なにか返事をし」


さおきが喋っているのを割り込むように喋り始めたうさぎの精霊。


「君さ…なに、その力。だだ漏れだよ?君から闇の魔力が漂ってくる。それも尋常じゃないほどに」


「なにが言いたい?」


「勝負しようよ。今から君と僕がここで戦うの。僕に勝ったら森に戻っていいよ。あ、アミリエさんは戻っていいからね?」


うさぎの精霊の申し出など受けるまでもないかのようにうさぎの精霊を後にして森に入ろうとするさおき。だが、


「っ!」


結界が貼られていた。アミリエは通れるのだが、さおきは通れない。


「無理だよ。君には通れない。しかも、こんな夜に人間は来ない」


「やるしかないみたいだな…」


ここで無理に結界を壊すこともできるが、そんなことをすれば森全体に影響が出るかもしれない。


「さおき、ダメだよ…」


アミリエの言葉に頷くさおきだったが、すぐにアミリエが手のひら返しするように、


「ごめん!やっぱ頑張って!」


両手を合わせると買った食材の入った袋を持って、森の中に入っていった。


「感謝するよ。アミリエさん」


小さな声で呟いた。


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