『順当に進む殲滅』
「さて、妾たちも始めるとするかのぉ」
「なにをするんですか?」
アルドラがこの近くの地形図と人型の駒らしき物をテーブルに置いた。
「妾はこれでも副団長なのじゃぞ?なにもしないというわけにもいかのじゃ。というわけでこれじゃ!」
駒が浮き上がり、地図の上に立ち上がる。そして、たくさんの駒が地図上に出現した。
「なんですか?このチェスみたいな感じの…」
「これが妾の能力じゃ。戦場にいる敵と味方をこうして駒に分けて状況を把握することができるんじゃよ」
「これでですか?」
有希が駒を手に取る。すると、アルドラが少し荒ぶった調子で、
「すぐに置くのじゃ!大事故になりかねんぞ!」
「は、はい!」
有希がすぐさま、駒を元の場所に戻す。胸を撫でおろしたアルドラが続けた。
「この駒はのぉ、本人の魔力からできておるんじゃ。つまり、この駒とそやつの命は繋がっているのじゃ」
「つまり、この駒を壊すと…」
「そやつは死ぬ、というわけじゃ。絶対に触るでないぞ。よいか」
「わかりました。ここでおとなしく戦況を見守ります…」
(私、なにもできないのか…)
有希の心にはこの戦いが始まってからずっと、激しい劣等感が渦巻いていた。
(私、ただのお荷物じゃん…少なくとも先輩でも戦うことくらいはできるのに。私はなにもできない…)
「アルドラさん、ちょっといいですか?」
「なんじゃ?」
同じ頃、戦場はというとーー
「ひゃっほーい!」
背に黒い翼をつけたさおきに多くの魔物が動揺し、その隙にさおきがどんどん殲滅していた。
もちろん剣を用いた接近戦だったのだが、さおきが符呪“獄炎”を使っていたこともあり、案外簡単に進んでいた。
「……」
一方、アミリエは無言で、地面に向けて広範囲魔法を連発し、多くの魔物が地に引きずり込まれる。
(つまんない…)
と、心の中で呟きながら。
さらにもう一方ではーー
「試してみよっか。せっかくもらったし」
ずっとほうきに乗って、魔物と距離を取りながら切風だけで魔物を殲滅していたウィク。
切風は広範囲魔法で順調に進んでいたのだが、さおきからもらった闇魔法を試したくなっていた。
(あまり期待するなとは言われたけど、ちょっとくらいなら大丈夫よね!うんうん!)
ずっとこの言葉を自分に言い聞かせていた。
「まあ、なにかあったらヘルプしてもらうということで!」
そう呟き、さらに魔物と距離を取る。
「まずは…」
右手を前に出して、発動する感触を確かめる。
「おぉ〜。これが獄炎ってやつなのね〜」
手のひらのすこし上に表れたのは獄炎。これを、出しては消す。出しては消すという行為を何度も繰り返す。そして…
「切風。」
左手で小さな切風を出す。
「付与をこうして、っと!」
途端に、なにも色がない透明な切風が赤黒く染まる。
「やったぁー!できたー!」
まるで新しいおもちゃを手に入れたようにはしゃぐウィク。あまり身動きが大きすぎると、ほうきから落ちてしまうため、はしゃぎきれなかった。
「じゃあこれを…」
少し下降し、それでもなお、魔物と距離を取る。
「切風に、符呪“獄炎”ね!」
そう呟きながら、刃に獄炎がついた切風を連発。
普通に魔物たちが刃によって切り裂かれるだけでなく、獄炎が飛び散り、死体すら残らない。
おまけに、獄炎が飛び散ることによって近くにいる魔物へと燃え移り、燃えて死ぬ魔物も少なくない。
△▼△▼△▼△
「うむ…」
戦場でなにが起きているかはわからないが、すごい勢いで魔物側の駒が減っていく様子を見たアルドラが首を傾げていた。
「お主ら、本当に何者なんじゃ?この尋常じゃない数の魔物、普通なら騎士が一万騎で討伐に出ても半日はかかるぞ。それを、まだ20分しか経っていないのにもう半分じゃ…」
「まあ、私たちですからね!」
胸を張って、言い切る有希だが、それを見てアルドラが冷たい言葉をかける。
「お主はなにもしておらぬがな」
「うぅ…それを言ったら私のここでの存在価値ゼロじゃないですか…」
悔しそうでも、笑いながら有希は呟く。
「まあ、それはよいのじゃ。わしが聞きたいのは、この数万対3人という普通なら負けが確定している戦いをどうしてこんなに魔物側がボコボコなのかということじゃ」
新しく用意された紅茶の入ったティーカップを手に取り、改めて咳払いをしてアルドラが言った。
「私が見るにですね、ウィクさんが今まで私がみたことがない魔法を使ってますね。多分新しくその場で開発したのではないでしょうか。」
「うむ。それで?」
有希が引き続き千里眼を使って、さおきたちの様子を見る。アルドラは、再びティーカップを手に取り、紅茶を口にしていた。
「それでアミリエさんはどんどん倒していってますね…。で、先輩はずっと獄炎がついた剣を振り回してますね〜。見た感じ、アミリエさんは淡々とこなしてますが、ウィクさんと先輩はすごく楽しそうです」
「ーーっ!」
「大丈夫ですか!?」
激しく蒸せてしまったアルドラ。有希から渡されたティッシュで、こぼれた紅茶を拭く。
(楽しそう…じゃと?まさか、この状況を楽しんでしんでおるというのか?こっちとしては、これ以上騎士を出すと危なかった状況なのじゃが、まあよしとするかのぉ…)
「さて。引き続き戦場の監理の続きじゃ。いつなにが起きるかわからんしの」
「そうだ!アルドラさんにもあげましょうか?千里眼」
「あげる?おかしなことを言うもんじゃのぉ。能力を渡すなど、不可能に決まっておるじゃろ。そうしたら我々も苦労せんわ」
「まあまあ、騙されたと思って。ね?」
「わかったのじゃ…」
有希がアルドラの背後に立つ。そして、輝く光がアルドラを包み込んだ。
「終わりです!目に魔力を集中させてみてください」
渋々、まだ有希のことを信じきれないアルドラだが、一応目に魔力を集中させた。
「これは…、なんということじゃ…こんなことが、あってもよいのじゃろうか…」
「いいんです!」
自分が千里眼を使えるようになったことをひどく驚いているアルドラ。まだ、この事実を信じられていない感じで、唖然としていた。
最近、自分で読み返してみたら思ったよりも誤字が多くてびっくりしました!なにかおかしいところや変だと思ったことがあれば遠慮なく誤字報告をお願いします!
m(_ _)m




