『なにかと大変でした』
その前に、テレポートも作っておいた。
『座標を登録いたしました。』
(これでいつでも帰ってこれるな。)
『いえ、1km圏内じゃないとテレポートできません。』
(え?まあ大丈夫か〜)
『それでは。』
「行くか!」
「うん!」
俺たちは森に入った。すると早速…
「あ、いた。」
ウィクが教えてくれた。本当にいた。結構でかいやつ、あれがおそらく大角で小さいやつが小角だろう。
「それじゃあやるか!」
俺は大事なことを忘れていた。なに作るか考えてなかった。
「よーし!殺ーるぞー!」
「なにしれっとこわいこと言ってんの!?ていうか、なに作って攻撃するか決めたの?」
「ん?そんなのとっくに決まってるけど?」
まじかー。あの勢いでしか物事を進めないバカがもう決めてるのかー。
「よいしょー!」
なんか出来始めた。最初はなんか変なものでも出てくんのだろうと思っていたが…
「完成ー!」
剣。計8本。持って攻撃するものではなく、投げる用に剣の刃の部分だけしかなかった。
「ーーーおりゃー!」
刃がイノシシたちに向かって飛んでいく。
「ーーーーーーッッッッ!」
あっという間に8体死亡。俺もやらないとな。
「ーーーーーーッッ!」
俺も魔力を集中させて…ってなに作ればいいんだーー!
「さおきくん!急いで攻撃して!こいつら、数が増えてきてる!」
考えていたせいで周りをみてなかったが、かすかに足音がする。イノシシたちが近づいてきているのだ。
「わかった!」
急がねば。とりあえず、剣でも作って太刀打ちしよう。
「集中させてっと!」
できた!我ながら、いい出来ではなかろうか。
「ーーーーーーッ!」
イノシシたちが来た。大きいやつしかいなかったため大角の方だろう。何匹かのイノシシが同時にさおきに襲いかかる。
「これで!」
「さおきくん、接近戦は!」
「ーーーーーーッッ!」
「え?」
このとき、俺は思わぬ事故に遭った。そう、剣が…
「砕けた…のか?」
そう、ボロボロに砕けたのだ。おそらく、やつらの角が原因とみていいだろう。だからさっきウィクが、接近戦は!って言ったのか。
「もーっ!しょうがないんだから!」
俺に襲いかかってきたイノシシはウィクの刃によってやられ、俺は一命を取り留めた。
「ごめん!」
「さっきのでわかったでしょ!接近戦はダメ!」
「りょーかい!」
接近戦がダメ。ならば遠距離からでイノシシたちが来る前にやるしかあるまい。
「ーーーーーーッッッー!」
また来た。さっきよりも多い。
「これならどうだ!」
俺は氷の礫を作り、それを使って遠距離から戦った。
「ーーーーーーッッ!」
効果はある。だが、ウィクのように一つで一匹とはいかず、5つか6つくらいで一匹だった。
「ーーーーーーッッ!」
「こりゃ、キリがねぇぞ!逆にこっちが包囲されてそうだ!」
「もうとっくに包囲されてたけどね!?」
ウィクが怒っているのか驚いているのかがわからない。まあバカだと思われたということだけは変わりないな。
「ねえ、今から魔法作れる?風系の。考えがあるんだけど…」
「試してみる。」
(なあ、今から急いで風系の魔法、作れるか?)
『問題ありません。ただし、命の保証はしませんよ?』
(作れるのならそれでいい。どんな代償でもいいから今すぐに実行してくれ!)
『承知しました。どうなっても知りませんよ?』
(何にでも耐えてやるよ!)
俺は意識を元に戻し、再びイノシシに応戦する。
ーーーーーーッッ!ーーーーーーッッ!
俺は普通に体を動かせていた。なら、あいつの言っていたことはなんだ?ただ、地面が揺れていることが気にかかった。揺れはだんだん激しくなり…
「さおきくん、なにが起きてるの!?」
焦り気味にウィクが聞いてきた。おそらく、地震が起きていると思ったのだろう。
「地面が揺れてることだろ!我慢してくれ!もう少しで完成だから!」
「速くしてー!」
俺もそうしたいわ!正直、結構な時間揺れている。これから一体なにが…
不安と緊張に包まれ、イノシシの応戦をしていた。
*
揺れ始めてから少しの間がたった。俺たちは殺されるとも知らずにガンガンこっちに向かって来るバカなイノシシたちを向かい撃っていた。
そのときだった。誰も思わぬことが起きたのは。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!
すごい地響きとともに…
「う、うそでしょ?」
ウィクが驚くのも無理はない。その出来事を起こしている本人ですら、驚愕に目を見開いていたのだから。
そう、木が、数え切れないほどに、上に上がったのだ。俺はすぐに問いかけた。
(おい!聞いてねぇぞ!どういうことだ!)
『だって、あなた、どうなってもいいんでしょ?』
たしかに始める前に、『どうなっても知りませんよ?』とは言われた。けど、俺はどうせ魔力を大量に持っていかれることだと思っていた。
(たしかに、どうなってもいいと解釈してもいいようなことは言ったが…)
『言いましたよね?どうなってもいいって。それだけです。他に言うことは?』
案外手厳しい…。でもたしかに俺は言ったからな。今度からは慎重に判断をしなければ。
「さおきくん、そろそろ?」
「ああ、もう少し待ってくれ。」
『大木、計100本消費して風の魔法を作ります。扱い方は氷の魔法と同じなので。』
(だからね、突然来ないでくれる?)
『そろそろ慣れたでしょ?いいじゃないですか!』
(よくねぇわ!)
ていうか、100本って。環境破壊もいいとこだぞ!
「さおきくん!」
また意識が…って言ってる場合か!
ーーーーーーッッッ!
「伏せて!」
言われるままに従った。
「やー!」
巨大な氷塊?が直撃。俺はまた一命を取り留めた。
「もーっ!しっかりして。」
「そう言われても、体が…」
急に重たくなった。氷の魔法作ったときよりひどい。
「さおきくん!しっかりして!大丈夫!?」
「ウィクはそっちに集中、しろ。俺は、まだ、いける。」
「声がかすれてるじゃん!」
「問題、ない。」
魔力の消費量が多すぎたのだろう。だんだん眠たくなってきた。まぶたが、重い。
『風の魔法、魔力3000を消費し、創作完了いたしました。あなたの残り魔力は100です。』
これじゃ付与出来ねぇじゃねぇか!どうする。何か他に手は…
『ほんと、世話の焼ける人ですね。今回だけですよ。』
ん?なんか体にちょっとだけ力が…
『あなたの魔力メーターを限界まで開放しました。これでウィク様に付与してあげてください。』
(サンキュ。あとで元に戻してくれよ。)
『もちろんじゃないですか。』
その返事が聞けてうれしいぜ。
「ウィク!欲しかった品だ!」
俺は、残りの魔力を使ってウィクに風の魔法を付与した。
「ようやくね。私の力、見せてあげる!」
そういうと、ウィクは俺の方へ走って来た。俺は魔力の消耗が激しすぎて、なにが起きるのか分からなかった。
「これでもアドバンテージあるんだからね!」
アドバンテージ?あとでゆっくりと聞こうじゃないか。
「風よ、我の命令に従い、目の前の脅威を滅せよ!刃風!」
目の前のイノシシたちが俺たちの方に来ようとした瞬間に倒れていく。俺にはどういう仕組みなのか聞く気力ですら残っていない。
迫ってくる大角イノシシも小角イノシシもみなもうダメだと確信したのか、急いで逃げていく。
△▼△▼△▼△
イノシシたちを倒してから少したつころ、あたりにモンスターの気配はなく、村は歓喜に包まれていた。村長がなかなか帰って来ない勇者とその連れを探しに森に入ってからすぐのことだった。
倒れた少年の名前を叫び、目に涙をためていた少女の姿を見かけたのは。
「さおきくん!起きて!お願いだから!」
さおきの体は依然重く、その体を抱えていたウィクの腕に体重を預けていた。
「……ウィ…ク…か」
「さおきくん!よかったー!」
「…泣く、な…よ。こんな…こと、で。」
さおきの声はイノシシ討伐していたときよりさらにかすれていた。
「だって!ほんとに死んじゃうのかと思ったんだもん!」
「魔力、を…」
「はい!これ!」
魔力が体に流れてくる。眠たさはなくなったが立つことはできなかった。
『だから言ったじゃないですかー!』
なんか怒ってるみたい…
(ごめんな。今度からは気をつけてやるから。)
『ほんとに、そうしてください!私も危険な提案は避けますので、お互い気をつけましょ。』
(そうだな。)
『魔力がもう入りませんよ。』
(わかった。)
「ウィク、止めてくれ。」
止まった。それでも体が動かない。
「これは…勇者様!大丈夫ですか!?」
誰か来た。おそらく村人だろう。
「えっと、誰ですか?」
体が動かない俺の代わりに聞いてくれた。
「すいません。私が勇者様たちがモンスター討伐をお願いされた村の村長でございます。」
村長、か。こりゃまた大物がきたな。
「さおきくん、動ける?」
「ごめん、体が動かないんだ。あとで行くよ。」
「ダメ。こんな状態のさおきくんをおいていけるわけないじゃん!」
「ええ、我々としてもそのつもりでございます。すぐに手配戻って手配を行いますので少しお待ちください。」
「わかりました。」「わかりました。」
俺たちは少し待つこととなった。
「なあ、イノシシたちは…」
「私が全部倒した!」
すぐ近くにはイノシシの死体が自然と積み上げられていた。数え切れないほどだ。
まあ、それだけ俺たちが倒したのだろう。
ほとんどはウィクで俺が倒したイノシシの数はせいぜいあのなかの10%くらいだろう。それ以下かもしれない。
それだけウィクの力とアドバンテージが大きいのだ。そういえば、
「なあ、アドバンテージって?」
「ああ、それはね、前にさ、下の世界見るの楽しいって言ったじゃん?」
「そうだな。」
「それでどの世界のも見れて、それでこの世界のもみてあらかじめ予習しといたってわけ。」
「だからあの一気に敵を殲滅するあの魔法も…」
予習で見たってわけね。やはりこの女神、あなどれないな。
その後、村の担当者が俺を担架に抱えて村へ戻った。




