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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
4 森にあった屋敷編
37/58

『壊れる心、そして慰められる』

最低週一投稿も出来なかったので、しばらく不定期更新で行こうと思います。

「ところでさ、俺たちここにきた一番の目的忘れてない?」


「「「はっ!」」」


「え?なに?」


まさかの3人同時に同じような反応が出た。息ぴったりじゃねぇか。

なんとまあ、あの2人はというと、


「はい?なにか用ですか?」


「い、いやぁ〜、別に、なにも〜」


ナルナがポーズをとって、ノルナがそれを描いていた。しかも、目まぐるしくナルナのポーズが変わり、ノルナのスケッチブックのページがめくれていく。


「あれは手を出さない方がいいやつだと思います」


「そうだな…まあ、楽しそうだし、いっか」


「ねえ、私たちもああいうのやってみない?」


ウィクとリアが俺たちのところまで来た。


「せっかく摘んできた花もあるんだ。やっぱりそれを描いてからにしよう」


俺はひとまず拒否した。それをウィクとリアは「えー」と言いたそうな目をして、戻っていった。


「先輩!できました!」


そう言いながら、有希がスケッチブックを見せてくる。


「どれどれ…」


うまく出来上がっていた。非常に上手だと思う。まず出た感想がそれだ。


それに、自分の着ている服の一部まで描かれていて、よく見てるなぁと思った。


(ってこんなのうますぎるだろ!どうすんの!?)


急に感傷に浸っていたさおきが正気に戻る。


(俺なんかが描いた絵がこんなにうまいわけないし…)


「どうですか?」


「あ、ああ、すごい、よくできてると思う」


自分をこんなにうまく描いてくれてすごくうれしい気持ちと、これから自分が描いたものが下手すぎることに対して、うれしい気持ちと不安が板挟みになっていた。


「うーん、イマイチですね…」


(なにが!?それをイマイチって言ったら俺のなんてイマイチ以下じゃん!)


内心、不安を叫ぶ。俺はゆっくりとスケッチブックを差し出して、


「あ、あのじゃあ俺もできあがったんだけど…」


有希に渡した。あまり自信はない。有希のレベルが高すぎるのか、はたまた自分の描くものが下手なのか。


今からの有希の反応でさおきの心が崩れかねない。


「………」


有希がさおきのスケッチブックを受け取ってからの沈黙。ほんの数秒しか続いていないのに、さおきにはそれが長く感じた。


「うん!今教えたことはちゃんとできてるし、いいんじゃないでしょうか!総合的に下手なのは否めないですが」


「あぁ……」


さおきの心に傷が入り、急速にビリビリに割れていく。


「せ、先輩?生きてますかー?」


「ぁぁ……」


有希がさおきの顔の前に手を出して左右にふるも、さおきはなにも応じない。完全に放心状態だった。


「ウィークさーん、リーエさーん、先輩がいろんな意味で死にましたー」


完全に棒読みでウィクとアミリエを呼ぶ有希。棒読みだとわかっていながらも、とりあえず有希のもとへ向かうウィクとアミリエ。


そして、さおきの描いた有希を見る。


「うーん…」


「これは…」


さっきまで体を伏せてまるまっていたさおきがすこし顔を上げる。


「「普通ね」」


(だからなに!?タイミング合わせてんの!?)


「ほらほら、拗ねてないで、ね!」


ウィクがさおきに手を差し伸べる。だが、さおきはその手を取らなかった。


「拗ねてないもん…」


「先輩、絶対拗ねてますよね?」


「かわいい…」


アミリエだけ、慈悲に満ちた目でさおきに手を差し伸べた。


「描こ。一緒に。私はうまいとか下手とか気にしないから」


頭を伏せた状態ではあるものの、その手を握るさおき。それを見て、アミリエが微笑すると、さおきの体に異変は起きた。


「なんだ…?このやけにむずむずするような感覚…」


「それは、私が初めてさおきと一緒に寝た日の夜に抜いたさおきのピンク色の世界の一部。さおきが私の手をとった時にさおきに戻った」


「はい?」


つまり、俺の”ピンク色な部分”が抜かれていたと。


「あの、リア。そのピンク色の部分って…まさか…」


「もし、一緒に寝たときに、さおきが興奮したらいやだから…そういうのはちゃんとさおきの気持ちを聞いてから」


(やっぱりかぁーー!っていうか、ピンク色の部分ってまぎらわしいわー!羞恥心かと思ったやないかぁーい!)


「やっぱり私の言った通りじゃないですか!先輩の性欲が抜かれてたんですよ!」


(やめろぉぉぉーーーーーーーー!)


羞恥心が限界に達するさおき。再び顔を伏せてしまった。


「どのくらい抜いてたんですか?!全部?」


「だいたい20%くらい。さおきは元々そんなに変態じゃないってことはわかってるから」


さっき、アミリエのおかげで回復したさおきの心が再びボロボロになる。

身体が震えていた。


「あ、あの、リアさん?な、なんで、今、戻したの?」


声も震えていた。


(穴があったら早く飛び込もう…)


そんなさおきたちの中にさっきまで2人で楽しくしていた姉弟の姉の方がきた。


「どうしたんですかぁ〜?さおきさんの元気がないようですけどぉ〜」


ナルナだ。幽霊なのに、髪の毛が湿っているように見える。目まぐるしく動いていたせいで汗でもかいたのだろうか。


「まあ、あの、さおきくんの心を抉るようなことがいろいろありまして、今この状態です」


「でもまあ、そんなぁことよりも、うちの弟の体が透けて始めてるのぉ〜、ちょっと来てくれると助かるんだけどぉ〜」


有希もその場から立ち上がり、


「じゃあ、私とウィクさんが行ってくるので、2人はここで待っててください。それとリエさんはなんとか先輩を元に戻してください」


「そうね。リエちゃんのせいでさおきくんがこうなったし…」


「わかった。なんとかしてみる」


ウィクと有希はナルナと共に向こうの部屋まで行った。廊下に残ったのはさおきとアミリエだけになってしまった。


「どうしよう…」


正直、アミリエはさおきの心がこんなことで壊れるとは思っていなかった。こんなにメンタルがやられるとは思っていなかった。だから完全に想定外なのである。


「さおきー」


とりあえず、さおきと向かい合うように座って、手をかざす。だが、なにも反応がない。


「悪いことしちゃった…」


そう呟くと、アミリエはそのまま両腕を広げて、前からさおきを抱きしめた。


「なにか言ってよ…私もわざとじゃないから…」


少し泣けかけたようなちょっと高い声でアミリエが問いかける。すると、さおきが少しだけ体を揺すった。そして…


「だい…じょう、ぶ」


非常に小さな声だったがアミリエにはちゃんと聞こえた。


「もうっ、強がらなくていいの」


そう言って、アミリエは両手で伏せていたさおきの頭を強制的に持ち上げる。


さおきの顔は、伏せてたせいで真っ赤になっていた。表情は全くなく、まるで本当に心や感情が壊れたようだった。目にもなんの輝きもなく、死んだような目をしていた。


そのさおきにアミリエは自分の額をさおきの額に当てる。


「ほら。私だって悪いことしたんだから、なにかしてあげないと気がすまないじゃない…」


「ぁ……」


ひどく掠れた声と同時にさおきの目が輝きを取り戻す。


「大丈夫だ。ただ、これでわかったとは思うけど、俺のメンタルは弱い!自分で言うのもどうかと思うけど…」


アミリエを少しだけ引き離して、目を合わせながらさおきがなにもなかったかのようにいつもの調子で話す。


「リエちゃん!早く来て!私たちだけじゃ手に負えなさそうなの!」


ウィクがリアを呼びにきた。俺も立ち上がり、ふらつきながらも、ノルナのところへ向かった。


埋め合わせと言ってはなんですが、今日もしくは明日にもう一本か二本投稿します!

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