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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
4 森にあった屋敷編
34/58

『準備』

また遅れて本当に申し訳ございません!

「ん?あ、姉上!?」


ノルナが俺たちを見た途端に息を荒くして、飛んでくる。姉だったのか…

ナルナもノルナの方に向かう。俺たちは足を止めた。


再開の抱擁をかわそうとするのを見ると感動的なシーンだが、お互い幽霊であるためその抱擁もかわせなかった。


「感動シーンが一瞬でちょっと悲しいシーンになったな…」


俺がそういうと、ウィクがうんうんと頷いていた。


「で、ノルナ。試しに絵を描くってのはどうだ?」


さっきからずっと抱擁を交わそうとする2人の中に割り込んで入りながらノルナに買っていたペンとスケッチブックを渡そうとした。


「あ、そっか」


無理だった。俺もノルナが幽霊であることを忘れていた。


「ちょっと、いい?」


そう言ってリアが腕をなんとか伸ばして、俺からペンとスケッチブックを取った。おかげで、体が前に傾いて落ちそうになったのを俺が支える羽目になってしまった。


「むぅ……」


有希の方でなにか声がした。よく聞こえなかったためなにも聞こえなかったことにした。

 

リアが俺から降りて、ペンとスケッチブックを床に置いた。


「離れて、さもないと幽霊になっちゃう」


俺は後ろに下がる。瞬く間にペンとスケッチブックの下に魔法陣が現れた。それが暗かった廊下をすぐに明るくし、俺たちは急に明るくなったため、目を伏せてしまった。


光が消えたころには、すっかりペンとスケッチブックが透明になっていた。


「もう一度取ってみて」


「わかりました!」


ノルナが期待に胸を膨らませて、ペンとスケッチブックを取る。


「すごい!掴めました!これで自分も絵が書けます!ありがとうございます!」


そう言ってノルナがスケッチブックを開き、ペンを構えてすぐにでも描きたがっている。


「あの…初対面で申し訳ないのですが…私の分はないですよね?」


ナルナのふわふわが消えた。真面目なときはちゃんとするやつなのだとわかった。


俺は一応亜空間から用意した分のペンとスケッチブックを取り出す。ペンは1本多く用意していたが、スケッチブックはなかった。


「ごめんな。ペンはあるけど、スケッチブックがないんだ…」


「大丈夫です。ノルナの紙を分けてもらえばいいので」


「じゃあ、もう一度頼む」


それが…リアがなぜか俺の肩のところまでいつも通りの姿勢に戻っていた。


「あの…これも…」


「後で…その…」


顔を赤らめていた。俺にはなにを言おうとしているのか全くわからなかった。


「膝枕…して、ほしい…」


すごい小声だった。おそらく、歩いて一歩くらいの距離しかないナルナにすら聞こえなかっただろう。


俺は戸惑ったが、リアはいつも昼寝をするため、おそらく寝る場所がないのだろう。


「いいぜ。だから頼む」


「ほんと!?」


頷くと、リアが微笑みながら俺から降りて、さっきのようにペンを透明にした。


「これ、どうなってるのかしら。ほんと、私たちじゃ触れられないようになってる…」


ウィクが透明になったペンを取ろうとするも、透けてしまって取れない。


「大丈夫か?後ろ、いるぞ?」


「ええ。距離はあるし」


(本当に、怖いのやら怖くないのやら…)


でも確かに、どうやって幽霊が使えるようにしてるのか気になるな…


「じゃあ、おやすみ…」


「え?」


慌ててなんとか倒れ始めていたリアをキャッチした。


「リエちゃん、どうしたの?具合でも悪い?」


「多分魔力を使いすぎたんだと思う。さっき…いや、なんでもない」


あのやりとりは話さないことにしよう。俺はともかく、リアまで非難されるわけにはいかない。


「準備も整ったわけだし、なにか描きますか!」


有希が両手にペンとスケッチブックを持っていつのまにか玄関の前にいた。


「リエちゃんどうするの?このまま地面に寝かせるわけにもいかないし…」


「ああ、それなら俺がなんとかするから気にしなくていい」


「そう。じゃあ、行こっか!」


「あの…」


「私たちここから出れないんですよねぇ〜」


少し申し訳なさそうに言ったノルナに対し、ナルナはストレートに言った。


「じゃあ、私たちがなにか花とか摘んでくるからちょっと待ってて」


そう言ってウィクと有希が出ていく。


「さおきくんは来ないのー?」


ウィクの声が廊下に木霊する。それに俺は大声で


「リアのことがあるから俺はいいー!」


「じゃあリエちゃんのことは頼んだわよー!」


ウィクたちは、再び花を摘みに出ていった。


             △▼△▼△▼△

「はぁ…」


歩きながら有希の口からこぼれた大きなため息。それにはさまざまな感情が混ざっていた。


「どうかした?今日なんか有希さん調子が変だよ?」


「あの、少し変なことを聞いてもいいですか?」


「いいよ!なんでもきなさいな!」


そう言って胸を張るウィク対し、有希の顔がだんだん赤くなる。


「その、リエさんは先輩…いえ、さおきくんのことが好きなんですか?」


「……」


ウィクはその場で凍ったかのように足も止まり、瞬きすらしていないように思えるほどに固まっていた。


「ついにそれに気づいてしまったのか…でも、やっぱり変だよね!私はほっといたけど」


「ですよね!毎日のように2人で寝てますし、さっきだってリエさんが膝枕してもらってましたし!」


「だよねだよね!」


声を張って言う有希に対し、ウィクは「だよね!」や「そうそう!」としか反応することができなかった。なぜなら…


(見たらわかるでしょ!肩に両腕ぶら下げてさおきくんの肩にあご乗せてる時点で絶対なにか特別な感情抱いてるし!)


「それで、それだけ?」


「はい。最初からあの2人は距離感が近いなぁと思っていたので…」


いらだっていた有希たちは、いつも間にかどこかすらわからないくらいに歩いていたその時である。


「すごいとこにきたね〜」


目の前に広がるのはさっきまでたくさん木が生い茂っていた森であると感じさせないほどに美しい湖の湖畔。その近くには色とりどりの花が咲いていた。


「とりあえずこの花たちに癒されましょうか!」


「そうね。」


             △▼△▼△▼△

「よしよぉし…」


俺はやさしくリアを撫でる。いつのまにかリアが両手で俺の右手を握っていたため、左手で不器用ではあるが撫でる。


その間、ノルナとナルナは思い出話をして盛り上がっていた。


「さおきさんはやけにアミリエさんに対してやさしいですねぇ〜」


さっきまで2人で話していたノルナとナルナが俺のところまでやってきた。うまい具合に俺たち3人でリアを囲んでいる。


「まあな…本当かどうかはわからないけど、たまに夢を見るんだ。そこで辛そうだったからせめて今は辛い思いはしてほしくないなぁって」


「そうですかぁ〜。それ、本当かもしれませんよぉ〜。本で読んだことがあるのですがぁ、もしかしたらさおきさんは転生者なのかもしれませんねぇ〜。転生者は昔の記憶が夢などで現れるらしいですぅ〜。」


「そうなの?」


(いや、俺そもそも転生者だし。だとしたらこの体に2つの魂が宿ってるってことか?)


「でも、確証がないですけどぉねぇ〜」


クリスマス編の続きを書きましたので続きが読みたい人はお願いします。

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