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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
4 森にあった屋敷編
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『みんなで絵を描きましょう!』

「はい!がんば!」


俺はもう何度目かすらわからないがもう一度ウィクを押す。そんななか、リアが割り込んできた。


「一度この幽霊さんの話を聞いてみない?じゃないと、なにも始まらない」


確かに…と俺も頷くとウィクがそれに拍車をかけるかのように、


「そ、そうよね!まずは幽霊さんの意見も聞いてみないとね!」


というわけで、俺たちはノルナに質問をいくつかする。俺が「なあ、」と言いかけた瞬間、ウィクが先走り


「ここにはなにもないし、お腹とか空かないの?」


「幽霊なので…その、死んでるから食べなくてもいいというか…」


「「「へぇ〜」」」


なぜかリアと有希までもがウィクの話に乗った。その後、ウィクは立て続けに質問をした。しかもどれもあまり関係ないものを…


パンッ!


俺が手を思いっきり叩いて、ウィクたちの話を一旦ストップさせる。強すぎたせいで両手が真っ赤になっていた。


「なに?」


ウィクが何食わぬ顔で俺をみてくる。


(いや、なに?ってこっちのセリフだけどな?)


「なあ、なにかやり残したこととかないのか?例えば、買いたいものがあって買えなかったとか、そういう感じの」


改めてノルナに問う。それに対し、ノルナは首を傾げていた。


「やり残したこと…ですか。ちょっと時間ください」


俺はその待ち時間にウィクを強制的に後ろへ引っ張って有希の隣に行かせた。早く終わらせたいから邪魔をするなと言うと、ウィクは「チェッ」と俺に聞こえないように言ったつもりなのだろうが、しっかりと聞こえた。


(本当にどっちなんだよ…)


さっきはドヤ顔で幽霊の前に立って堂々と説明しているときがあれば、幽霊に近づけるとすぐに逃げる。ウィクに任せようとした俺が間違っていたかもしれない…感情だけで判断しないようにしよう…


「……自分と父は絵を描く仕事で、いつか自由に絵を描いてみたいと言いあっていました。自分はともかく、父は依頼された絵しか描いてなかったので…」


つまり、自由に絵を描きたいと…


(無理だろ!)


率直に無理だ。俺たちはスケッチブックとペンさえあればまだしも、幽霊がスケッチブック、ましてやペンを持てるはずがない。


「えっと…他には?」


もうちょっと実現できそうな物がいい。いくらなんでも幽霊に絵を描かせるなんて…


「うぅん……」


「なにもないみたいね」


ノルナの状態を見かねたウィクが言った。


(だからおまえは邪魔すんなよ…)


「あの、そろそろ夜にならないですか?」


有希に続いて、俺も窓を覗いた。確かに、空がオレンジがかった赤色に染まっている。これは早く宿取らないといけないやつだ。


「ごめんな。俺たちまだ宿とってないんだ。また、明日来るからもう一日この状態で待ってもらっていいか?」


ノルナが頷くと、俺たちはそのドアをあえて開けっぱなしにしたまま、屋敷を出て、街へ向かった。

飛んで数分。街はすぐに見えた。あの結界がなければ今頃とっくにゆっくりしていたことだろう。


「にしても、さおきくんはほんと、優しいよね。私なんて幽霊みたらすぐに逃げてるよ」


「それはもう知ってる」


なんとか宿を見つけて、持っていたカバンを置きながらウィクが言う。


(あんなに時間がかかったの、誰のせいだと思ってるんだか…)


一番大きいのは俺とウィクだろう。あのとき、俺がウィクに任せなければよかった。それとウィクがあのときなぜか幽霊を怖がらなかったのも大きい。まあとりあえずこうなってしまったことにはしょうがない。


「でも、どうします?ノルナさん、でしたっけ?」


ベットに飛び込んで足を上下にバタバタさせながら有希が言った。その隣のベットでリアも足を上下にバタバタさせていた。


確かに…どうしようもない。でも、解放してあげたい。複雑な気持ちが渦巻く。


「難しいなぁ…」


やりようにも方法がなさすぎるのだ。まず、幽霊であるという点、次にウィクが言った通りならばやり残したことを叶えてあげることができないという点。


「その場からは動けないって言ってたよな?」


「「うん」」


俺は有希に聞いたつもりだったのに、ウィクも答えてまた言葉が重なった。


(この2人、なにかユニットでも組ませたら売れそうだな…)


「さおき、なんか邪な目で有希さんを見てる」


「!? いや、そんなことないよ!」


リアが足をバタバタさせるのをやめて、ベットに座りながら言った。

さおきは急いで否定する。邪な目で見ていたのは事実だが…


「さおきくん、まさか…」


有希までもが邪な目で見られていると感じている!


「だから違うって!」


俺は全力で否定する。この3人にはそういうスケベの烙印を押されたくないからだ。これから一緒に旅する仲間としてあまりよくないイメージは持たれなくない。


「ところで、」


俺はリアのベットに座って有希と向かい合うようにした。その時だった。


「ねえ!私たちが絵を描いてみるってのはどう?」


空気がピシリと凍った気がした。そして、続く沈黙。皆、思考が止まり頭が真っ白になった。

ウィクが気まずさに気づき、「まあ、冗談だから…」というと同時に思考が戻る。


「案外悪くないんじゃないですかね?」


俺とリアはジト目で、そしてウィクは輝きを持った目でウィクと同様にありえない言葉を発した有希を見つめる。

そして、有希は言った。


「なんというか、気持ちだけでも…ってやつですかね?私たちが絵を描けばそれを見ているノルナさんもその時の感覚や気持ちを思い出せるのではないでしょうか」


「確かに…」


思わず独り言を呟いてしまった…だが、使えなくはない方法だ。

それだと俺たちも楽しめるし一石二鳥だ。


「それでいきましょうよ!」


有希の言葉が深く突き刺さる。そして、俺も…


「じゃあ、それでいってみるか!」


絵を描くことになった。まあ悪くはないのではなかろうか。


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