『怖くないよ?ほんとだよ?』
「私、ですか?私はこの屋敷の主であるヴィアス家の次男の"ノルナ・ヴィアス"と申します。こんあ姿で申し訳ありません」
そう言って、ノルナは俺たちにおじぎをした。
見た感じ、教養はある。変に幽霊だと怖がっていた俺たちが逆にノルナに謝りたいくらいだ。
「それで、ノルナはなんでこんなところにいるんだ?幽霊だろ?自由に動けばいいのに」
さおきの言葉にノルナを「それがですね…」と続ける。
「私、いわゆる地縛霊ってやつなんですよ。だからこの場から動けないのです」
(つまりここに死んで、幽霊になったものの、動けないと…辛!)
「まあいいや。この部屋になんか光ってるものはあるか?」
俺は結界の核のことを問う。ノルナは辺りを見回して…
「ほんとだ!なんかありますね。隣の部屋に」
隣か。俺はドアを開けたまま、隣の部屋へ行く。ドアを開けると、目の前には結構大きな光る結晶があった。
「これだね」
リアが降りて、すぐさま構える。でも、
「リアは待ってて。俺がやるから」
物を壊すからリアはおそらく一番便利な絶対破壊を使おうとしたはずだ。その証拠に魔力が少し集中してるし。
もし、ここでこんな威力が強い魔法を使えば、屋敷が吹き飛びかねないため、俺が端的にすませる。
「ーーッ」
一度深呼吸。これが震えている体によく効くのだ。俺は体を落ち着かせて、右手に別の亜空間に収納してある剣を手に持つ。
符呪"獄炎"を無言で行い、結晶に剣をあてる。獄炎は瞬く間に燃え移り、結晶を燃やしつくした。外で、ガラスが割れる音がして、俺は窓に駆け寄りカーテンを開ける。
バンドをでウィクに連絡し、
「ウィク、聞こえるか?」
「うわぁ!さ、さおきくん!どうかした!?」
(こいつ、今俺をも怖がらなかったか?)
「結界の核は壊した。廊下に懐中電灯を持ったリアがいるはずだから、とりあえずこっちに来てくれ」
「わ、わかったわ」
結界が割れて、その破片が消えていく。めんどくさかったというのが正直なところであるが、今はもう一つやらないといけないことがあるのだ。
「さて、次はおまえ…じゃなくてノルナか」
俺はさっきのノルナとかいう幽霊のところへ行った。
「さっきはありがとな。ところで、おまえなんで幽霊になってるんだ?」
「それは…」「おーい!さおきくーん、リエちゃーん!」
ノルナが答えようとしたと同時にウィクの声がした。しかもなぜか有希と手を繋いでいた。
(?この二人って両方とも怖いの苦手だったか?ウィクはまだしも、有希は普通にいけると思っていたのだが…)
「ここだよ〜」
リアの声とウィクの声が木霊する。俺は懐中電灯で試しにウィクたちがいる方向を照らしてみると、しっかりと姿が見えた。二人は俺の光を頼りに、急ぎ足で来た。
「さおきくん、どうしたの?目的は済ませたし、早くこんなところ出ようよ」
「いや、それがな…」
俺は言いながらノルナを懐中電灯で照らす。
「ふぇっ!?」
有希が後ろに下がった。それに対し、ウィクは驚きに後ろに飛び跳ねる。
(いや、そんなに驚くことじゃないだろうに…)
「それで、なんで幽霊になんてなってるんだ?」
ノルナがその透明な髪を透けている腕で掻きながらもう一度言い直す。
「私は、ここでもう何年前かはわかりませんが、事故で亡くなったものです。それでなぜか目が覚めたらこのような姿に…」
「ふむふむ…」
後ろで怖がっているウィクが一人でに頷く。
(いや、怖いのか同情でもしてるのかどっちなんだよ…)
ノルナは続けて、
「なんといいますか…私は、夜に誰か知らない覆面男に襲われて…」
「ありがとう。だいたい考えられる死因が一つに定まったわ」
ウィクがドヤ顔でノルナの近くまでゆっくりと歩いてきた。俺はそんなウィクに「いや、怖くないの?」とジト目を向けながら言いつつ、ウィクはそんな俺の目、言葉全てをスルーした。
「私の予想としては、この幽霊の人は暗殺されて、この世に未練があったからまだ残ってるのよ」
まあ確かにマンガとかでよくあるパターンではある。正直信じられないがこの今の世は異世界だ。魔法も使える。それならこんなことが起きてもおかしくはないのではないかと俺は自分の疑いを否定する。
ウィクはそれを話終わった瞬間に有希の元までダッシュで戻った。
(ったく本当に怖いのやら、怖くないのやら…)
「と、いう解釈でいいか?ノルナ」
俺はあえて名前で呼び、後ろの二人にこの幽霊の名前を伝える。
「自分もよくわからないですので…それでいきましょう」
「うーん…」
俺が頭を抱えていたときだった。突然、右の頬に柔らかい感触がした。
俺は目を動かさずともそれがリアだとすぐにわかった。さっきまでずっと降りていたため、また戻ってきたのだ。いろいろ思うことはあるがそれは全て置いといて!
「どうするの?助けるの?」
リアが俺を起こすかのように右手で俺の頬を突きながら問いかけてくる。
「そりゃまあ、こんな死んだのに死ねないってやつを放っておくと逆に辛くてな…」
「わかった」
そう言ってリアは頬を突くのをやめた。
「そうだ!ここはウィクに任せるとしよう」
「はい!?」
俺は目を瞬きさせて『よろしく』と片目だけ閉じてウインクらしきことをした。
それにウィクは大きなため息を漏らし、
「まあ、やってみるわ」
と言って、恐る恐る前に出てきた。いや、さっきまで怖がってなかったろ。俺は内心、大丈夫大丈夫とここでウィクがなにもやらかさないことを祈りつつ、後ろに下がる。
「ダメ!やっぱり怖い!」
またダッシュで戻ってきた。
(いや、どっちだよ)
俺はもういいかげん嫌になってきたから聞いてみることにした。
「ウィク、怖いの?怖くないの?どっち?」
ウィクが威勢を張っていい切った。
「こ、怖くないもん!」
(おまえはお子ちゃまか!)
「じゃあ頼む」
俺はウィクの背中を押して強制的に前に出させる。だがウィクは、
「やっぱり無理ー!」
この件は、しばらく続いたのだった。ウィクにはリア、有希、俺、そしてノルナまでもがジト目をむけていたのだった。




