『またしても嵌められました』
並列して空を飛ぶ2つのほうき。通過したところに一切の建物も街もなく、基本森。
ヤムリエはエルドラド王国の都市だが、端にある。しかも、開発がまだ行き渡ってないため、森を横断するための道しかなかった。そんな道の真上をさおきたちは(推定)時速15kmで進む。
時間的に、昼時に達していた。それでも、一向に町が見えない。10時ぐらいに出発したから(推定)30kmは進んでいる。それでも建物一つも見当たらない。少しスピードを上げて進む。
「さおきくん、ウィクさん、大丈夫ですか?ちょっと休憩します?」
「有希こそ。大丈夫か?ほうきにずっと座ってると結構痛くなるだろ」
「いえ、そこは問題ないんです」
「?」
正直に言おう。俺は結構痛くなっている。同じように2時間座っていて痛くないってのはすごいな…
すると、有希が俺に眼鏡?を投げてきた。俺はなんとかそれを取る。
「走行中にものを投げるな。落ちたらどうする」
「いえ、魔力で作ったものなので落ちて壊れても魔力になるだけです」
(有希が俺よりも魔法の扱いが上手になっているのは気のせいだろうか…うん。気のせいだと信じよう。)
俺はそれをつけると、有希が乗っているほうきになにか透明なものが見える。それは、有希たちの体をうまく支えて、落ちないようにしていた。
「見えました?これ。全部ウィクさんの手作りですよ。すごくないですか?」
ウィクがずっと前を向いて操縦をしていたがその顔に笑みを浮かべているのがはっきりと見えた。それと、なんとリアも同じものを持っていた。つまり、このメンバーの中で尻が痛いのは俺だけなのだ。
「いいですよ〜、ふかふかですし〜」
「おい、危ないからやめとけ」
「はぁ〜い」
というわけでウィクに頼んで俺にも作ってもらった。ふかふかでやわらかい。さっきと同じ固いほうきに座っているとは思えない。
なんで俺には教えてくれなかったんだという文句はあるがもらったからなにも言わないでおこう。
ちょうど、下に澄んだ湖が見えた。
「ちょっと休憩しないか?昼ご飯も兼ねて」
向こうの2人も頷くと、俺たちはその湖のほとりに降りた。
俺はヤムリエで買ったサンドイッチを取り出し、食べる。
「町まであとどのくらいあるのかしら…」
ウィクが不安そう地図を広げるが、道を進むにつれてだんだん商業用の馬車も見えてきている。町までは近いと俺は考えている。
それぞれ昼食をとり、俺たちはさっきよりもスピードを上げて進む。
ウィクがもしかしたら町に着かないかもという不安を抱いているためだ。
そんななかリアはお昼寝タイム。ウィクが作ったものはほうきから落ちないようにするシステムもあるため、揺れない限り落ちることはない。
(こいつ、女神するより物作りをしたほうがいいんじゃないか?)
俺は度々その寝顔を鑑賞しつつ、ウィクに置いて行かれないようにスピードを上げる。あっちは速くて有希が「ヒャッホーウ!」と声を出す時すらあった。
ほうきを制御したりスピードをだすためにも魔力を要する。
ここで俺はウィクの力の便利さを知った。普通の人間ならこんなにスピードを出して数時間も飛んでいたらとっくに魔力切れで死ぬか、へばっているところだろう。
ところが、ウィクの無限魔力があることにより俺たちには常にウィクから魔力が供給される。よって、いくらでも飛び続けることができるのだ。やはり、転生ボーナスはチート能力なのだと再び実感した。
「なかなか…着かない、わね…」
ウィクが止まる。俺が後ろからウィクのところまで追いつくと息切れしていた。スピードを出しすぎたのだ。
「たしかに、町が見当たらないな…」
これだと、町に着くだけで一日が終わってしまう。いや、もしかしたら町に着かないかもという選択肢も入れるべきか…
「ちょっと待ってて」
そう言ってリアが身を乗り出して、俺の脚、というよりかは太ももの上に思いっきり座った。まさか、今朝のことを未だに気にしているのだろうか…
リアの目が光る。その目で辺りを見回したあと、俺に告げたことは、
「うーん…私たち、迷った?」
一番聞きたくなかった言葉である。下には道がちゃんとあるのにリアは迷ったのではと言う。正直、信じられない。
「!? これって…」
リアが急に飛ぶ。そして、魔力がリアの元へと集中する。塊になり、俺は今からリアがすることがわかって、目を少しだけ見開いて、閉じた。
「絶対破壊」
ちょっと目を開けると、またあのときのように視界が白に包まれる。ビキビキとガラスが割れるような音がした。
俺は目を開けると、そこには、ヒビが入った結界、だろうか。が、俺たちを包囲していた。
(おいおいおい…まさかだとは思うが、これっていわゆる…)
「うそ!?認識阻害結界!?」
ウィクが驚きを隠せずにすぐにその結界に向かって突っ込もうとするも、元の位置に戻る。
(ですよねー。そういうのだと思った…)
ここから考えられることとして、俺たちはこの結界内をいつかは知らないが、ずっと飛び続けていたのだ。そりゃあ街も見えないわけだ。移動してないのだもの。
「はぁ…」
ため息をついた。嵌められた気しかしない。なんで俺たちはダンジョンの時といい、今といい、こんなに認識阻害結界に絡まれるのだろうか…
「ねえ、あれって…」
有希が真下を見ながら言う。俺も真下を見ると、そこには大きな屋敷があった。こんな大きな森の中に屋敷。どう考えてもおかしい。でも、俺たちは行かなくてはならない理由があった。それは、
「今私たちがいる場所が中心付近だから、あの屋敷から結界が張られた可能性がある。もしそうだったらこの屋敷に結界の核があって、それを壊さない限り、この結界はまた魔力を吸収し、再生する」
その証拠に、リアの絶対破壊でも完全に破壊されず、少しずつ再生している。
もう一発叩き込めば完全に壊れるかもしれないが、それだと次に来た人が困ってしまう。
だから俺たちは、ひとまずその屋敷に入ってみることにしたのだった。
△▼△▼△▼△
そのさおきたちの後ろに一人の男がいた。その男は「くくっ」と、変な笑い方で笑っていた。
「このレベルの結界にも気づきますか。あの少女、只者じゃないですね」
その隣にはもうひとり、軽く武装をした男が。
「ったくルアン、おまえのその笑い方はなんとかならねぇのかよ…」
「仕方ないじゃないですかレオン。笑い方などどうでもいいじゃないですか。それよりも、今の、見ました?」
「ああ。あんなの人間じゃ到底不可能だ」
「絶対破壊、でしたっけ?調べてみるとしましょう」
そう言って、2人は姿を消した。




