『夢②〜妹とお姉ちゃんの物語〜』
不意打ちを受け、さらにネメシスに憑依されたことにより、さおきの意識は体の奥底にまで沈んでいた。そして、彼はもう一度…
「…んん…」
どこかも知らない夢の世界で目覚めた。
目の前にはバラバラだけどなんとかバランスを保ち、山積みにされている魔法書がたくさん。その山は少なくとも10以上ある。
「ここ、どこだ?」
眠たくはないがさっきまでこの体が寝ていたせいで体が思うように動かない。それどころか、ふらついて本の山を倒してしまいそうだ。それだけは避けたい。
俺はドアを開けて部屋の外に出た。多くの悪魔、だろうか。前に見た夢で出てきた生物と同じようなやつらが慌しく動いている。
「あ!ネメシス様、おはようございます!」
誰かが挨拶してきた。魔法書を抱えている。よく見るとここにいるのは女ばかりだ。
「ああ、おはよう。………はい?」
今こいつ、ネメシスって言った?ネメシスってたしか、前に見た夢で出てきたあのテンションが高い魔法使いか?五大魔神ってやつだっけ?
「どうされました?」
「いや、なんでもない。ちょっと寝ぼけてるのかも。」
俺はそう言って「じゃあね。」と手を振って再び部屋へ戻った。すぐさま洗面所に行き、自分の姿を確かめる。
鏡に映ったのは、
「まじかよ…」
ネメシスだった。
そもそも、なんで俺がネメシスってやつになってるんだ?まさか、俺やっぱり死んだのか?
確証はない。落ちている途中に"あいつ"の声がした。何を言っていたのかはわからなかったが、助かったという可能性はなくはないが低いだろう。
状況が読めないので、俺はとりあえずこのままネメシスとしてここで生活することにした。
とは言ったものの、何をすればいいのかよくわからない。魔法書を読めばいいのか?それとも外に出るべきなのか?
そこら中に落ちている魔法書を一つずつ整理しながら考える。そこに一人の、メイド?さんが入ってきた。後ろの通りすがりも、口を揃えて「えーっ」と見ている。
「珍しいこともあるものなんですね!」
一瞬でわかった。ネメシス、この量の魔法書を毎日出して毎日整理してないんだな。この際だ。イメージを改善しといてあげよう。
「で、ネメシス様。今日はあの日ですので、どうかお忘れなく。」
あの日?よくわからないが、すぐそこにスケジュール帳があった。それによると今日は、
【半年ぶり妹に魔法を教える日!!】
と書かれている。妹かー。いいなぁ。俺、一人っ子だからなぁ。ちょっと羨ましい。って、そんな場合じゃなぇ!
今、9時50分。妹に魔法を教える時間はなんと10時30分。あと40分しかない!
俺は急いで準備した。魔法書を数冊用意し、なんとか10時25分に準備を終えた。
行き方はというと、部屋の端っこにある赤いスイッチを
「押す!」
床に魔法陣が現れて…
「うわぁぁーーー!」
俺は下に落ちた。まるであの時のリアの落とし穴みたいだ。
「ネメシスお姉ちゃん!」
銀髪の子がこっちに走って抱きついてきた。この子、どこかで…
「えっと…」
「お忘れになりましたか?まあ半年ぶりですからね。アミリエ様じゃないですか。」
アミリエ!?あの?いつも冷静沈着なあの!アミリエ!
正直、信じられない。この世界は一体なんなんだろうか。夢?いや違う。俺はネメシスとやらにあったことはない。
いつのまにかネメシスが動いていた。前回のとは違う。最初は自分で体を動かすことができていた。今回は途中からだ。
いろいろ教えている。実際に魔法を使ったり、楽しく魔法書を読んだり。技術がすごく発達しているせいか、俺にもよくわかった。後で試してみよう。
途中で、たまに服を引っ張ってくることがあった。なにかのサイン?でも、ネメシスは毎回それを
「うん。大丈夫。わかってる。」
とはぐらかす。俺にはさっぱりわからないけど。
そして、全ての勉強が終わった。だが、
「いつもの。ね?」
いつもの?まあこれからわかるか。というわけで、俺は見物させてもらうことにした。というか、ネメシス視線だから絶対見えるけど。
「それじゃあ…」
亜空間ができた。すごく広い。水平線がずっと続いている。そこでなにをするのかと思えば…
「遊ぼう!」
「うん!」
いや、遊ぶのね!と突っ込みたくなるが、いいと思う。今更だが実に勉強時間が五時間を超えている。俺だったら耐えられない。一時間でゲームだ。
そこから、魔法で水たまりを作り、水をかけあったりとか。全部魔法で遊んでいる。楽しそうだ。
「キャッ!」
水が滝のように降ってきた。さすがにひどくないかとも思ったがそれをネメシスは、
「やったなー!」
と、水をかけかえす。これが本当の仲のいい姉妹なのだろうか。でも、微笑ましい。何分、何時間遊んでいたのかわからない。でも、楽しかったのではないだろうか。
「さてと、最後にお待ちかねの〜!」
ワクワク!ワクワク!
目の前に広がったのは、いろんな世界。森、砂漠、海、街、山、いろいろ。その光景には俺も思わず見惚れてしまった。
独り合点になるが俺は今なぜリアが封印を解いた時になにがなんでも付いてこようとした理由がわかった気がする。絶対、外に出たかったんだ。でも、連れ出してくれる人がいなかった。その証拠に目の前で「わぁ〜」とそのまだ小さな口を開けて景色を楽しんでいる。
封印を解いたという責任で俺はリアを来ていいと言ったがちょっと申し訳なくなってきた。
そんな時、ネメシスがとんでもないことを言い出した。
「行きたい?」
今は素直に思ったことを言おう。行けるわけないだろ。あんな砂漠とか、絶対km単位じゃすまないだろ。それでもリアは、
「うん!」
足踏みしながら期待に満ちた目で答える。これは厳しくないかと思っていたのだが…
「瞬間移動」
はぁい!行けました!サーセンした!にしても、俺と同じただのテレポートでこんな遠い場所にまで移動できるなんて、さすが五大魔神だけあるなぁ。
そして、次々と移動していく。何回移動したかもわからないある時、俺は気づいた。部屋の端にある、機械。ネメシスの声と同時に色が変わっていく。まさか…
「はい!おしまい!」
途端、メイドがこっそりそれを回収した。やはりな…俺はサンタさんを信じない派のやつだから堂々とって言うまでもないか。
「じゃあね。また来るから!」
ネメシスは毎回この言葉を残して帰っていくそうだ。その後、さっきのメイドに会った。
「さすがにいつかバレてしまいますよ。そうしたら例えネメシス様でもただでは…」
そうだ。こんなの、いつかバレる。だがそれをネメシスは…
「大丈夫。絶対に抜け道を見つけてみせるから。」
抜け道?でも、おそらくこういうものなのではないかというものが数個思い浮かんだ。そうして、
「またお越しくださいませ。」
ネメシスは手を少し振って転移魔法で自室に帰った。すっかり綺麗にされた部屋。それがまたあのバラバラの状態になっているのかと思うと掃除のメイドさんの苦労が伝わってくる。
「さぁてと。かわいい妹を自由にさせるためにも、頑張って勉強しますかね!」
こうして、過ぎた一日。あっという間だった。俺もたくさんのことをついでに学ばせてもらったから試したい。
ーーーーピキッ!
まただ。前と同じように、この世界に亀裂ができて壊れていく。この世界は一体なんなのだろうか。
意識が戻る。体全身が痛く、そして重い。ゆっくりと目を開けると目の前には、
「さおきくん!よかった〜」
ウィクがいた。肝心のアミリエはというと、なぜか戦闘状態でこっちに向かってきていた。後に、俺は衝撃的なことを知ることとなる。




