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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
3 召喚災害編
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『お姉ちゃん』

「待てぇーー!」


誰かと思えばさっきの騎士だ。しかも今回は結構な数が来ている。30くらいはいそうだ。なぜかそれを率いているさっきの騎士がひどく憤慨している。


「なんですか?また来たのですか?」


と、呆れたように返す。誰も動じていない。すでに、こっちには最悪の場合にアミリエがいるのだから。でも、その本人は結界張ったせいでそこでまたすやすやと寝てるけど。


「お前!なんか俺たちの性根を叩き直すとかいろいろ言ってくれたそうじゃねぇか!」


「「「?」」」


「なに知りませんけど?って感じ出してんだよ!お前だよ!お前!」


さおきを指差して言った。"あいつ"はこのとき理解した。さおきがめんどくさいことをしてくれやがったことに。


「まあ、相手してあげましょうか。」


再びあの黒い翼で飛び立つ。その姿にはウィク、アミリエ、そしてあの騎士までもが余裕そうに見えた。


「リエちゃん。さおきくん、どうなってるの?」


すぐ下でさおきたちの戦いを見ながら言った。どう見てもおかしい。まだ異世界に来て、1週間も経たないうちにウィクをはるかに凌駕するほどに強くなっている。

これはだかが武器一つで変わるものではない。前世では剣を使うことなんてゲームくらいのことだろう。そもそも、さおきは剣の扱いが成っていなかった。これはまるで…


「別人ね。誰かが意識を失ったさおきに憑依してる。」


アミリエが自分の鑑定眼を使った。さおきとは違い、普通に見ても見える。これが、レベルの差。


「うん。前のさおきとはなにもかもが違うね。前のさおきは風魔法が使えてたのに今は使えないし、闇魔法が私と同じSSだし。」


ウィクとアミリエはさおきの戦いを邪魔せず、見守ることにした。


「さて、さっさと終わらせましょうか。」


正直、あいつにとって余裕だ。こんな騎士、どうってことない。さおきがしたことの後始末。さっさと終わらせよう。


だがあれ(騎士)、ひどくやる気だ。殺す気で来ている。というか、さっき普通に殺しにきてたな。

考えがまとまる。やることはただ一つ。相手全員を殲滅すること。それなら簡単だ。


「覚悟してくださいね。」


「殺してやる…」


血相を変えてこっちに襲ってくる。だがあいつはそれを簡単に避けていく。魔法も。斬撃も。


「はぁ…はぁ…くそがぁぁーーー!」


そう言って剣を振り上げ、空に大きな龍が現れた。

でも、やけくそになっている。まあお前は"あいつ"より弱いんだ。受け入れろ。


「ダメだ!それを使えば、お前は!」


セウイもまた来る。とても息が荒く、今でもゼーゼー言っている。だが、その声が彼に届くことはなかった。


よそ見する暇はなく、その龍が風をも切り裂くほどのスピードでさおきを呑み込んだ。その姿はだんだん小さくなっていき、しばらくしてさおきが吐き出された。身に黒い炎を纏っている。


「はははは!獄炎ヘルフレイムだ!それはお前の身体が燃え尽きるまで永遠に燃え続ける!お前今、死んだも同然!」


嘲笑っている。だが、なぜかあの騎士の体も少しずつではあるが崩れていた。


「くっ…もう、手遅れだ。」


セウイの枯れた声が聞こえたウィクはセウイの元まで行った。そのセウイは体中が傷だらけだったため、アミリエも一緒に連れて行った。


「なにがあったんですか?」


「あなた…たちは…」


声が完全に枯れ果てている。早く治療しないとこっちも手遅れになりそうだ。


「さおきくんの仲間です。」


「ああ…さおきの…」


とてもこれからなにがあったのか話せるような状態じゃない。とりあえず、治療できるアミリエをここに残し、さおきの様子を確認しに戻った。


形成は一気に逆転。さおきが何発もあの騎士の攻撃を喰らっている。身を獄炎ヘルフレイムに包まれているせいで、何かに触ったら獄炎ヘルフレイムがそれに移って燃えてしまう。だからなにも触れないのだ。


「俺は問題ない!ウィクはそっちを頼む!」


試しにさおきを演じてみた。一応、さおきの体であるため声も全部さおきの声。だからウィクたちはなにも違和感に気づかないのだ。


「わかった!」


「さて。いい加減、終わらせましょうか。」


「はっ!お前になんの方法がある?お前はこのまま燃え尽きて終わりだ!」


(あの騎士(バカ)はすでに勝ちを確信しているようだな。ここから、本当の絶望を見せてあげるとしましょう。)


さおきを覆う獄炎ヘルフレイムがさらに力を増して燃え盛る。


「ふんっ!」


力だけで、獄炎ヘルフレイムを薙ぎ消した。それは、ここにいた全ての騎士にとてつもないほどの衝撃を与え、それを見た途端、逃走するものもいたほどだ。


「うそ…だろ?俺の獄炎ヘルフレイムが、一瞬で…」


さっきまで笑みに満ちていた顔が絶望へと瞬時に切り替わる。あの騎士、見た感じ自分の持っている最強の技を命を捨ててまで使ってさおきを殺しにきていた。


いわば、自分の命があんな一振りで消えたのだ。そいつは言うまでもなく、泣き崩れて殺さないでと命乞いをしている。


「頼む!これからはお前の言うことをなんでも聞く!だから…」


「さようなら。」


それをさおき(あいつ)は、無慈悲に殺した。残酷に。わざと切った首を下に向けて、たくさん血を出させるように。殺したことを堂々と残りの騎士に見せつけながら。


命乞いなど、聞いても意味がない。そもそも、生かしておいたらいつまた攻撃してくるかわからない。だから敵はしっかりと殺す。


さおき(あいつ)が殺した瞬間をこの場にいる全員が見た。セウイも。アミリエも。ウィクも。ましてや、周りにいた騎士全員まで。


「さおきくん…」


「自業自得だ。さおきを責めないでやってくれ。あいつはなにも悪くない。先に攻撃したのは私たちなのだから。」


「「…」」


「!!」


さおきが突然手に持っていた死体を捨て、腹を抱えて苦しみだした。

体が重い。尋常じゃないほどに。


やはり早すぎた。まだこの世界に馴染んでないのにも関わらず私は憑依してしまった。代償が大きいのは当然だ。どうする。このままでは本当にさおきが死んでしまう。どうする。まだ騎士もあんなに残っているのに。


「大丈夫。あとは私に任せて。ネメシスお姉ちゃん。」


目の前にはさっきまでセウイの治療をしていたはずのアミリエがいた。さおきがしっかりと初耳顔になっている。


「どこで…わかった?」


「その能力と、あの雲を全て消した瞬間にわかった。こんなに壊れてるの、お姉ちゃんくらいだからね?」


そう言って、アミリエがさおき(ネメシス)にデコピンをして、ウィクの元まで送り届けた。


「また後で、ね。」


ネメシスが全てを悟ったかのように頷く。それを見てアミリエは微笑して騎士たちの方へ戻っていった。


「それじゃ、早くお姉ちゃんとお話ししたいし、急いで終わらせよっかな!」


この後セウイを含め、騎士たちはこの魔神の妹の異常さを知ることとなるのだった。


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