3プロローグ『災害の始まり』
新章です。
俺たちは手に入れた鉱石、剣をリアの空間収納でしまい、ウィクはそのまま手袋をつけて、洞窟の外に出た。
外の天気が、来た時のやさしい風が吹いていたいい天気とは正反対に、たくさんの雷雲が森を包み、風がふき荒れていた。
「こりゃあ、すごいな。」
風が強すぎてとてもほうきで飛べる状態じゃない。それどころか雷が落ちている。これはここでしばらく待機するしかなさそうだ。
「結界張るね。」
そう言って、リアが魔法で結界を張った。温かく、疲れが癒されていくだけではなく、防御までしてくれるという優れ物。
『さすがですね。これのレベルの結界は大国の魔術師が少なくとも2人は必要な結界ですよ。』
とこいつがリアを称賛している。でも、こいつの実力もたしかなのだ。
実際、鉱石がこの洞窟にあると言い、本当にあって、演算も可能。しかも、俺のスキル、魔法創造を巧みに操れる。俺はもう、こいつがいないとこのチート能力を使いこなせないだろう。
こうまでされてまだ信用できないというのも疑い深いからな。
『信用してくれるのですか?』
(!?)
俺の体にかつてないほどの衝撃が走った。
俺は信用してない、ということを心の声として出していないはずなのにこいつは知っているのだ。なんとか誤魔化そうとするも何も思いつかないし、弁明しようにもやりようがない。ここは素直に謝るしか…
『いいですよ。謝らなくて。あなたも身体の中にこんな得体の知れない者が入っているというのも怖いでしょうし。私だったらそれ、信用しませんから。だから謝らなくていいです。』
案外融通の利くやつなんだな。と、感心していたら…
ーーーーーードドーン!
雷だ。ずっと止まない。さっきからこの結界の上にも数回落ちているくらいだ。
ところで、俺たちは一応洞窟にはいる。その結界の洞窟より外の場所が雷による被害を受けて多少傷ついている。この結界、多分多くて20回程度しか持たないだろう。
「さおき、あの真ん中の渦巻いてる雲見て。」
俺はなにか起きたのでないかと思い、急いでリアの元へ走った。見つけづらいがたしかに渦を巻いている雲がある。俺は鑑定眼を使いあの雲を見るも、なにも見えない。それどころか、逆に俺が弾き飛ばされる。
『とんでもない魔力量ですね。召喚魔法でしょうか。』
今は割り込んできたことなどはどうでもいい。それよりこいつ、スキル持ってるのか?
『私ももちろん自分のスキルがありますよ。』
そりゃそうだよな。でないと、演算とかできないだろうし。
「なにか見えた?」
脱線してしまう前に話を戻そう。リアがこんなに聞いてくるということはリアもなにも見えないという可能性が高い。だから、今こいつが言った召喚魔法の可能性が高い。
(召喚魔法の解説を頼む。)
『召喚魔法はですね、簡単に言えば、禁呪の一歩手前の魔法です。その理由は、魔法を発動するのにまるまる1人の人間が一生で使うほどの魔力量が必要な点。次に、今このように魔力が召喚陣から溢れてそれが災害として降ってくることですね。今召喚魔法をよくしているのは北の帝国くらいですかね?でもたしか数年前からやめたと聞いたのですが…』
相変わらず長い。だがだいたいわかった。用はこれが召喚魔法だとしたら今からここで災害が起きるのだ。
「ねえ、あれって…」
ウィクもなにか異常を発見したらしい。俺とリアが見ていたのは左側の雲だったがウィクのは右。
これはさらに深刻だった。いっそう強く渦を巻き、微弱な竜巻が発生している。これはもう、召喚魔法と見て間違いないだろう。だが、災害の規模が思ったより大きい。この調子だと町の方にまで被害が及んでしまいかねない。
(召喚魔法を消すことはできないのか?)
元凶を消せば全て消える。そう考えたが、
『このメンバー全員で消そうとしても厳しいと思います。』
悲しいが現実だ。だったら、召喚魔法を発動させてその被害を少しでも少なくするしかない。
このまま帰ろうかとも考えたがそれだと雷に打たれて終わりだ。この災害がいつ終わるかもわからない。このままじっとしておくのもありかと思ったがそれだとリアの結界が持たない。しかも森が荒れてしまう。
「これはおそらく召喚魔法だ。あの渦を巻いている雲から魔力が溢れて、それが災害となってここに降る。ここでじっとしてるのもありだが、どうする?」
俺は今なにが起きているかわからない2人に現状を説明した。召喚魔法がすごくやばいこと、この魔法を消すのが無理だということ、今俺が掴んでいる情報を全て話した。
「止めるしかないでしょ!」
「私はどっちでも。結界は何度でも張り直せるし。」
ウィクがやる気だ。それに対し、リアはあまり気が進んでいない。でも、俺も新たに手に入れた武器を使ってみたいところだ。リアには申し訳ないが、試してみたい。
「やってみるか。」
そう言って俺は自分のほうきを持つ。剣を使おうと思ったが空中戦になるため今回は魔法でやる。
「私がこの森全体に結界張るからその時間稼ぎをしてほしい。」
リアは今の結界を解き、俺たちはそれぞれ散った。俺は右側、ウィクが左側を受け持つ。
近づくとよりいっそう大きく見える。魔力が溢れていることはわかるがなにも起きない。俺は雲の中に潜っていった。ほうきは使わず、風魔法で飛ぶ。
荒れる雲をなりふり構わず突き通し、遂に元凶、魔法陣を見つけた。俺たちの普段使う魔法と比べ物にならないほど大きい。
俺はその魔法陣を攻撃しようとしたその時だった。俺をめがけて槍が飛んできたのは。
「ーーーっ!」
俺は風魔法を駆使し、なんとか槍を止めた。持ち手には鷲のマークが刻まれている。
「単刀直入に聞く。貴様、何者だ。」
大きな鎧をつけた鳥に乗って、1人の騎士がやってきた。
△▼△▼△▼△
ウィクも雲に近づくもなにも起きず、困惑していた。
「なにも起きないじゃない。」
とため息をつく。さおきが雲に潜ったのを見て、同じように雲に潜る。ほうきに乗っているため、先端部分が雲に当たっているせいで上がりづらい。ウィクもほうきを降り、魔法で飛ぶことにした。
てっぺんに着くと炎が魔法陣を包み、距離を取らないと呼吸すらできないほどだ。
その炎が落ち、雲を通して雷に変わっているのをその目ではっきりと見た。ならばやることは1つ。この炎を消す!
ウィクは、今ある全魔力を使い、大量の氷の礫を作る。すると、右手につけている手袋が反応した。足元に召喚魔法の魔法陣と同じくらい大きい魔法陣が足元に現れる。それが自然と氷の礫を放っていた。
ここでウィクは自分のこの手袋の能力を理解する。この手袋は自分の使った魔法をコピーして、それをさらに魔法陣で広範囲に放つことができるのだ。
落ちてくる炎はウィクの氷の礫で相殺される。どんどん魔法が打てることにウィクはこれまでにないほど興奮していた。
△▼△▼△▼△
「貴様、何者だ。」
剣と盾を持った騎士が俺の目の前に現れた。大きい鳥に乗っている。あの、あれ、そう!グリフォンってやつか?
「俺は単なる旅人だ。お前は?」
「私はルージアだ。ここにて、召喚者を待ち受けし者。」
はい、召喚魔法と判明いたしました。
「なぜ俺を攻撃した。」
とりあえず、こいつはただものじゃない。あの槍はなんの魔力の籠っていないただ力で投げたものだった。
それなのに、目に追えるか追えないかくらいのスピードを出している。今からここで殺りあうものなら確実に俺が死ぬ。
「いや、誰か、この召喚魔法陣を傷つけようとしたものなので。私たちの邪魔をしないで頂きたい。」
こいつが召喚しようとしているやつか。
「なぜ召喚魔法を使うんだ。この魔法は、災害を起こすだろ。」
「今我らの国は荒れ果て、滅びの道を歩んでいる。それを正しく導く新たな人材が必要なのだ。」
つまり、その新たな人材を手に入れるために召喚してると。それでも、自分たちのためしか考えずに周りの被害を考慮しないのはダメだ。
「お前の仲間が向かった方はすでに魔力が溢れていて失敗している。消えるのも時間の問題だ。」
ウィクの方か。まああいつのことだ。やる気満々だったしなんとかしてくれるだろう。俺は目の前にいるこのバカをなんとかしねぇとだな。
「どうする。ここで俺と殺りあうつもりか?」
一応聞いてみる。殺りあうことになるのは目に見えているが、一応。
「貴様が邪魔をしないというのであればこのまま見逃そう。だが、邪魔をするのであれば容赦はしない。」
答えは決まった。いや、決まっている。俺は鞘からゆっくりと剣を引き抜いた。
「我らに立ち向かう、と取ってよいのだな?」
「ああ。こんな大魔法使って、周りのことをなにも考えないお前らの性根を叩き直してやる!」




