2エピローグ『作らないで済んだ』
『ありますよ。近くに鉱石。』
相変わらずのようにこいつは割り込んでくるものだ。助かっているからいいけど。
ところで、この近くの鉱石がある?いやありえない。ここに来る道で空を飛んではいたが山すら見当たらなかった。ここしか山がない。奥の方にもこの山のせいで見えなかった。
でもあるならそれはそれでいい。そもそも、剣一本作るのにどれほど時間がかかるのかわからない。しかも鉱石の量もどれほど取れるのかわからない。だからできれば早めに原材料を見つけたい。
(ほんとか?どこにある?)
俺はすこしだけ期待を膨らませて問う。実際、俺はこいつがただ精霊だと聞かされているだけであってこいつの正体は不明だ。だからいまさらだが俺はこいつあまり信用していない。唯一それはあいつに気づかれていない。
『この山の反対側にある洞窟です。ここがダンジョンであるためここの探索に集中して裏の洞窟は探索されていません。鉱石がたくさん取れると思いますよ。』
(そう?じゃあ裏の洞窟に行けばいいのね?)
『ええ。』
それじゃあ、行くか。もうここに鉱石ないし、行くだけ行ってみるか。
「この山の裏に洞窟があるらしい。そこに行ってみないか?」
「賛成。」「行こう!」
いつのまにかウィクの機嫌がすっかりなおっている。リアが慰めに行った隙にまた撫でたらしい。
「というわけで…」
リアがこの封印部屋の真ん中に移動する。まさか…
「準備いい?」
ああーー。うん。準備はできている。まあ、さすがに3回目だからな。俺もそろそろ慣れたわ。
「いいよ。」
「じゃあ、行くよ〜」
リアのテンションがさっきより高くなっている。俺とあいつが話している間に何があったんだ!
と、床に大きい魔法陣が現れ、俺たちは洞窟の入り口に戻った。
「落とし穴じゃないの!?」
「落とし穴がよかった?言ってくれたら落とし穴でもよかったのに…」
いや、別にどちらでも。そんなことより
「行くぞ!」
俺とウィクは自分のほうきに乗って、移動する。リアがまた俺のほうき乗っていた。その後、ほうきに降りてからまた俺の肩に両腕を乗せて右肩から顔を出してくる。こうしてみるとすごいかわいい。
思わず左手を右肩のリアのところに持っていってしまう。だが、そんな俺をウィクが「じっーー」と見つめていた。
「うっ…」
俺は左手をまたリアのところから遠ざける。うらやましいのだろうか。
とりあえず、俺たちは洞窟に入る。ダンジョンとは違って一本道。しかもダンジョンは道が平たかったのに対しこの道はすごくガタガタしている。
「あいつの言う通りだな…」
中には、誰かが来たような痕跡は一切なく、進めば進むほど歩きづらくなっていく。次第には洞窟に大きな湧水の水溜りがあるくらいだ。
「あいつって?」
聴こえてたのかよ。結構小声だったのに。リアですら無反応だったのになんで俺たちの後ろにいるウィクは聴こえてるんだ!
「いや、なんでもない。」
回答を濁す。最初からわかってはいたが俺とあいつの会話は外には聞こえない。だからこそだ。ウィクとリアにはあいつの本当の正体を知ってから話す。とは言ったものの、いつか言いそうだな。
俺たちは奥に進む。道幅もダンジョンとは違って狭くないし、最初から歩きにくかったがもう慣れてしまった。でも、鉱石が見当たらない。本当にここであっているのだろうか。ウィクも疲れてきたように見える。俺も少し疲れた。
「ちょっと休憩するか。」
俺はその場に腰を下ろし、リアも俺の肩に掛けていた手を降ろした。俺は別に問題ないが、リアは腕が痛くならないのだろうか。でも、なんともなさそうにリアが辺りの岩をいじっている。
「リア、そういえばさっきのあの剣って誰のだったんだ?」
意外と気になっていた。あの黒と紫の短剣。いかにも闇属性に適している感じがする。
「あれ?私のだけど。どうかした?」
平然と返してくる。こっちは驚きで口を開けたままなのに。俺はなんとか受け流し、続ける。
「いや、どこから出てきたのかなぁと。」
リアが俺のところまで来て目の前に右手を出し、俺を指差している。しかも人差し指だからなんか俺がなにかやらかした感じがしてしょうがない。
「説明してあげる。これは空間収納で、亜空間に自分のものを収納できるの。」
なんかそういうの、前にも聞いたような…
「それで、これは私の魔剣、シャイ。」
「魔剣?」
魔剣ってあれか。RPGとかでよくある聖剣とは反対の剣か?俺は落ち着いて物事を整理するととんでもないことを見落としていた。それは、
「なんで魔剣持ってんの?」
そう。原点に戻る。最初から魔剣が出てきたから自然とそれに合わさったが、一応魔剣だ。
はっきりとは言えないが、この剣から魔力が出ている。俺が前に使った普通の剣は符呪をすることによって魔力を宿した。だが、この剣からはまるで元々魔力があったような感じがする。
「魔剣は、この世界に5本しか存在しない。その一本。名前は私がテキトウにつけた。」
「「!?」」
ウィクもこっちにきた。無理もない。まず、この世界に魔剣が5本しかないという点からなのだ。その一本がこれ。この短剣。よく見ると中央の紫のところが輝いている。
「能力は、相手の影を斬ることができることかな。ちなみに、影斬られたら即死ね。」
怖っ!つまり、日のよく当たる闘技場とかでこの剣使って影斬ったら即殺できるじゃん!だからこの剣はただモンスターや敵を斬るだけではないのか!
聞く方がちょっと恥ずかしいがこれも……これも一応聞いておこう。
「リア、剣術とかはどうなんだ?」
あー!聞いちゃったー!体も小さいし剣術がうまいというイメージもないのに!しかも、ウィクがそれ聞くの?、と聞かなくてもわかるでしょという雰囲気を漂わせている。
「……」
リアが黙り込んでしまった。やはり聞いてはいけないやつだったー!リアがさっき持っていたあの魔剣を再び持つ。
「さおき、鑑定眼持ってないの?」
鑑定眼?
『作りますね。』
こいつ、全自動プログラムか?俺が考えたことは全て読んでいる。それは前から知っていた。だが、俺がこれからやろうとしていることも読めている。
『完了しました。』
いつのまにかできていた。俺は早速使ってみる。目を凝らしたら何やら文字が浮かんできた。こうやってジーっと見ていると変人だと思われそうだからさっさと終わらせたい。
スキルが見えた。目に力を入れるとさらにそのスキルの細かい部分が見えてきた。なになに…
【全能者】
闇魔法全般 SS 風魔法全般 S 火魔法全般 S 水魔法全般 S 剣術 S etc…
項目多すぎるだろ!なんだよこのスキル!完全にチーターじゃねぇか!だが剣術 Sというのが見えた。そもそもSってなんなんだ。だが光魔法関連のスキルが何一つ見当たらない。
考えてみればなにもおかしくはないのだ。リアはこれでも魔神。闇魔法がSSと一際強そうに見えるが魔神だから光魔法は使えないのだ。おそらく、夢に出たあの天使とやらも闇魔法は使えないだろう。
「さおきくん、気持ち悪いから見終わったらやめて。」
ウィクから痛烈な言葉がとんでくる。俺は目にかけていた力を抜いた。
「なんて書いてあった?」
「剣術、Sって。」
「S!?」
ウィクが「え!?まじ!?」とリアから少し離れた。俺もよくわからないがこのスキルの恐ろしさと凄さを知り、ウィクと同じように距離をとる。
「わかった?」
あの後、俺たちは再び前に進んだ。ウィクから聞いたが、S級のスキルはトップクラスらしい。他にも、ランクの高い順にA、B、C、D、E、Fランクに分かれるそうだ。俺たちの魔法にそれがついていないのは測定していないからだという。
ちなみに、大国の傭兵団や騎士団長が剣術 SかSS程度らしいからリアはそれらの強者とも互角に渡り合える。それに加えて魔法もS級。さらに加えてあの魔剣だ。最強と言っても過言ではない。
そして、そんな強者がまた俺の肩に腕を掛け、右側から顔を出している。寝てはいない。もう一度言うが、寝てはいない。
「ねぇ、これ長すぎない?後で出られないとかはないよね?」
ウィクが大丈夫なのかと心配になってきたらしい。たしかに長い。結構歩いた。後ろを振り向いても前を向いても先が見えない。
イラついてきたため、俺は試しにこの洞窟を攻撃してみた。
「さおき?」「何してんのよ!」
変だ。てっきり洞窟が崩れてくると思っていたのになにもない。むしろ、吸収された?
もう一度試してみる。
「今度こそ崩れるって!」
焦るウィクを気にもせず、俺はもう一度風の刃を叩き込む。まただ。勢いつけて放った風の刃が洞窟の壁に近づくほど遅くなって最後に消える。
「さおき。離れて。」
リアが俺の肩からまた降り、少し前に出る。
「崩れたらごめん。」
そういってリアが構える。周囲の魔力が全てリアに集する。その魔力の塊が次第に大きくなり、
「強制破壊」
視界が白に包まれ、なにも見えなくなった。なにが起きたのかわからない。辺りが真っ白で自分が生きているかどうかすらわからない。もしかして、俺、死んだ?
「終わった。」
声と同時に白かった世界が元の洞窟の黒い世界へと戻る。まるでさっきまで呼吸してなかったと思えるほど過呼吸になる。そんななかで、俺は何度もゆっくり深呼吸をした。
にしても、目がチカチカする。そういえば、なんか前にテレビで黒から白に急に切り替わると目に悪いとか言ってたな。
なんとか目が治ったころ、目の前にはたくさんの鉱石と宝箱があった。
「おぉ〜。大量大量。」
と、ウィクが鉱石を獲りまくっていた。
俺も起き上がって身の回りにある鉱石を取る。鉱石って、もうすこし色が偏っていると思っていたのに、案外色がいろいろ混ざっていて虹色に光っている。ダジャレじゃないからな。
『あの、寒気がしてきたのですが…』
黙っとけ!こいつはいつまでも人の思考を読むのか!
「あ、さおき、起きてる。」
リアだ。宝箱をいじっている。と思ったら俺のところまで来た。
「熱ない?大丈夫?」
と、手を俺の額に当てた。リアの手が冷たい。まさか俺、熱出てる!?俺は慌てて自分の頬などを触って熱を確認する。たしかに熱い。
「大丈夫っぽいね。よかった。」
「?」
俺はリアの手が冷たく感じた。ならリアは俺の額を触ったとき、熱かったはずなのだ。それなのに大丈夫なのか?
「ああ。リエちゃんのさっきうったあの強制破壊?ってやつは魔力を集めて熱エネルギーに変換するらしいの。だからもしかしたら私たちに影響が出てるんじゃないかって。」
そういうことか。俺に熱があるのかと思ったぜ。俺は立ち上がり、宝箱へ向かった。
ウィクはそこらの鉱石をガンガン獲りまくってるから、俺とリアは宝箱を開けることにした。
鍵がかかっている。結構大きい南京錠だ。リアが魔法で溶かそうとしたが鍵も魔法によって壊されない仕組みになっている。おとなしく鍵を探したら相当時間がかかるだろう。
宝箱自体を破壊することも試みたが、それだと中に入っているものがボロボロになってしまう。
ウィクにも聞いたが取った鉱石から鍵らしきものはない。宝箱はひとまずそっとして、俺たちも鉱石を取ることにした。
取っても取ってもなくならない。用意した袋がパンパンになったためもうこれ以上鉱石は取らない。一応、今度鉱石が必要になった時のために座標の登録をしておいた。
さて、残りはあの宝箱だ。ウィクとリアがいろいろ試している。箱を叩いたり。鍵を力で壊そうとしたり。などなど。俺はそんなウィクたちが努力している間に何をしているかというと、
「さおきくん、絶対無理よ。そんな自分で作ったコピーの鍵なんて。」
そう。俺は鉱石を使ってコピーキーを作った。あの南京錠を鑑定し、あいつが解析した。今の俺に作れる完璧なコピーキー。
「まあまあ。ただの遊びだと思って。」
ただ試しに作ってみただけなのだ。いい風に言えば、発想を逆転させたといえばいいのだろうか。鍵が見つからない。なら作ればいい。ただそれだけだ。
俺はその鍵は鍵穴に入れる。さすがに鍵穴には入った。さすがに、な。でもここからが本番である。ひねれれば勝ち。
ーーーカチャ。
「?」「!」「は?」
開いた。開いてしまった。こんなお遊びで作った鍵で開けてしまった。
「なんで開くのよ!」
まあ普通最初に飛び出す意見がそれだろう。正直、俺も驚いている。リアはなにが起きたかわからない感じだ。
「中身みるか。」
俺はその宝箱を開ける。周りが期待に包まれる。こんなに苦労したんだ。少なくともそれなりの宝が欲しい。
その中身は、そんな俺たちの期待を堂々と裏切った。その中身は剣と、魔術用の手袋。まさに俺たちがこれから作ろうとしていたものだった。
「あの、私たち、なんのために鉱石取ってたんだろうね。」
先に宝箱を開ければよかったのだ。でも、取った鉱石は絶対いつか使う時がくる。その時のためにとっておくことにした。
その剣と手袋を鑑定すると、どれもレアな剣だということが判明。リアの持っている魔剣ほど性能が良くないが、闇属性の魔法の威力を高める効果を持っている。俺にピッタリな剣だ。
手袋の方も、ウィクが手にはめた瞬間に魔法陣が刻まれ、ウィクのものになった。この宝箱にはその2つしか入っておらず、リアは魔剣を持っているためリアの分はなかった。
こうして俺たちは鉱石をたくさんと、武器を手に入れたのだった。
少し早いと思う方もいらっしゃるいるかもしれませんが、これでダンジョン探索編終了です。




