『また行くことになりました』
あのあと俺たちはダンジョンから出て、再びほうきに乗ってヤムリエに戻っていた。来た時はまだ明るかったが今では夕日がきれいな時刻になっていて、夕日が森を赤黒く染めていた。
「あのさ…」
俺たちは今ほうきに乗って帰っているのだ。それなのに…
「わぁってる。リアだろ?」
そう。リアが来たときのようにほうきに乗るのかと思いきや、普通に飛んでいた。背中から黒い翼が生えている。
「なあ、なんで飛べるんだ?」
俺の隣で並行して飛んでいる。そして右隣にはウィクがいる。こっちはなぜかずっと俺から目を逸らしている。
「私のさっきもらった魔法。これ、もともと私の物だった。だから…、その……ありがとう。」
これもともとリアの物だったのか。じゃあ俺がもらわなくてよかった〜。
でも、終わってダンジョンを出てからずっとリアとウィク、俺も含め全員顔がそれぞれの理由で赤い。
リアは言うまでもないだろう。ウィクはおそらくさっきリアがいきなり告ったからだろう。まあ、告ったのではないと思うが。俺は…まあ…そういうことだ!
「目立たねぇのか?」
話を戻すが、結構大きい翼だ。おそらく全長1メートル程度。しかも空が青か白いことに対し黒い翼だ。余計目立つだろう。
「今は人がいないから大丈夫。人がいるときはさおきのほうきに座って移動する。」
まあ当ぜ…え?俺のほうきに座るの?確かに、来るときに俺のほうきに乗って来たわけだし…仕方ないか。
「さ…ささ早速!」
ウィクがなにやら独り言を言っている。うん。その気持ち、わかるよ。俺も学校で恋バナとかそういうの聞くとその気持ちになった。でも言われる方になると逆に変な感じがする。というか、なんで俺たちそんな関係にされちゃってるわけ!?
「そういえば、俺、これからこのほうきに乗って移動するんだよな?」
「そうだけど?」
急にウィクが立ち直ったかのように元に戻った。メリハリのつけ方がいい。
「これって魔女のアイテムだよな?俺男なんだけど…」
今まで数回ほうきに乗って移動してきたが森など、あまり人がいなかったためあまり抵抗感がなかった。だが、いざ街中など人がいるところで乗ると恥ずかしい。
「変装すれば?それとも変身?」
変装って。毎回毎回準備とかメイクとかするのすごいめんどくさそうだ。でも、変身か。なにかいいスキルでもないものなのだろうか。
『作れますよ。実在しますので簡単にできます。』
いけるのか?しかも実在するのか。スパイとかが使っていそうな魔法だ。
(じゃあ頼むわ。)
『了解しました。変身を作成します。』
また魔力がごっそり持っていかれた。そろそろこれにも慣れておかなければいけない。まあ、持って行かれても常に魔力が供給されてるから問題ないんだよな。
『完了しました。』
(はやっ!)
『念じた姿に変身することができます。』
やってみるか。でも、性別を入れ替えるってことだから一応あの2人に伝えておこう。
「今から女になるけど、あとで驚かないでね!」
「「!?」」
うん。想定通りの反応だ。だが、リアが少し笑い気味なのが気になる。でも、ウィクはちゃんと「は?」って顔だ。
(いいよ。)
『実行します。』
途端に、俺の体の形が少しだけ変わり、髪の毛がまとまった。男だけあって短い髪は変わらず、ショートヘアだ。
「「……」」
反応がない。だがこっちを見ている。もう少しなにか言うのかと思ってたんだが…
「「かわいい!」」
よかった〜。まさかブサイクにされたのかと思った〜。でも、かわいいらしい。鏡で見たことはないためどんな感じなのかはわからない。これは戻ってからの楽しみとして取っておこう。
いつのまにかウィクとリアが俺の方によって来ていた。
「あのさおきくんがまさかこんなかわいい子に…」「これは一度見ただけでは絶対女子だと思ってしまう…」
まあまあ評判が良さそうだ。ナイス!
『フッ。当然のことです。』
「ごめん。てっきり失敗するのかと思ってた…」
そういうことか。だからさっき俺が女になるって言ったときもちょっと笑っていたのか。
「じゃあ…」
途中で止まった。声までもが女の声になっている。いやこれ完成度高すぎだろ!
『フッ。』
こっちも鼻を高くしている。まあ完成度高すぎて文句どころか驚きの声が出てしまう。俺も最初はあまり期待はしていなかった。
「これからも、街中とか人がいるところでほうきに乗るときはこの姿でいいですか!」
「異論はない。」「文句なし!」
2人とも異論はないらしい。それどころかウィクが俺の右頬を突いてきたり、リアが俺の左頬を自分の右頬スリスリしようとしていた。この肌、そんなにプニプニ感あるのだろうか。
この時だけ、俺は自分が男であることを忘れてしまった。
昨日と同じギルドの部屋にいる。俺は変身を解かずにそのまま鏡のある洗面所に向かった。
「……かっ」
我ながら、かわいい。目の色とか髪の色とかは黒で変わりないがなんだろうか。このオーラなるものが漂っている。まあ一応男であるため、かわいい方じゃなくてかっこよくなりたかった…
『元に戻します。』
元に戻った。うん。普通の時はこっちの方がいいな。でも、イタズラとか揉め事を回避するために女子になるのはありかもしれない。
「戻ってるー」「いい目の保養だったのにー」
うむ。想定通りだ。わかってはいたがいざ言われるとすごい心に刺さる。
「じゃあこれからも女でいよっか?」
「ここ数日、さおきくんはそれでいいかもね。」「私も。」
(そういうことだから。よろしく。)
『仕方ないですね〜。』
うわぁー。こいつ、調子に乗ってるぞー。自分が1回評判になっただけで調子に乗ってるぞー。
『調子には乗ってないです。』
いやどう見ても調子に乗ってるから。まあ今回は俺もこの姿は案外悪くないと思っているため見逃してやろう。
『実行します。』
また女になった。ここ数日はこの姿でやっていこう。
「ところで、これからどこに行く?」
ウィクが話をきりだしてきた。確かに、今からどうするかは全て未定だ。ギルドでお金稼いでいくのもよし。どこかいいところでスローライフするもよし。旅するもよし。いろいろだ。
「武器とかを整えた方がいいと思う。これからどうするにしても絶対、移動は不可欠。だとしたら武器があった方がいい。」
ここ2日のダンジョンの戦闘で俺は剣を壊してしまった。しかも、ちょうど魔法発動にいい手袋とかがあるらしいからな。でも…
「ギルドのショップ高いじゃん。今ある金貨で全部の装備を買うのは無理そう。」
ギルドのショップが高いのは事実だ。それか職人さんに頼んで作ってもら…?待てよ。
俺たちはあのダンジョンを攻略した。だとすれば少なくともあの封印部屋の所有権は俺たちにあるはずだ。ダンジョンなのだ。鉱石くらいは取れるだろう。それを使って剣を作ればいいのだ。
『ついに話す時がきましたか。』
急にまた割り込んできた。まあ、もう慣れたからいいけど。
『あなたの魔法創造は、魔法を作ることができます。』
おいおい。まさかこの感じだと…
『今あなたが作ろうとしているのは鍛治スキル。魔法ではありません。』
つまり…
『作れます。』
おい!作れるのか!じゃあなんで話かけた!
「さおき?大丈夫?」
リアだ。俺が普段中にいるあいつと話す時は立ち止まっている。つまり動かないのだ。だからボォーっとしているように他の人からは見えてしまうのだ。
「うん。大丈夫。ちょっと待って。」
(で、話の続きは?)
『それで、あなたが作ろうとしている鍛治スキルは能力におけるスキルです。ですが今まで作ってきたのは魔法におけるスキルです。よって、能力におけるスキルを作るときにはより多くの魔力と体力を必要とします。』
なんだそんなことか。魔力ならウィクからいくらでももらえるし体力は…なんとかなるだろ。
『それでは。』
じゃあな。
「よし!俺が武器を作るよ。」
「「?」」
「あのダンジョン、鉱石とかは取れるか?」
2人が「あぁ〜」とようやく俺の言ったことをわかってくれた。
「あると思う。最悪の場合私がなんとかする。それでいこう。」
「じゃあ、もう一度あのダンジョンに行くってことでいいか?」
ウィクの意見は何も聞いていない。自然と全員の意見が合わないと実行しないという感じになっているためそれに従う。
「いいよ。私も自分で自分の装備を作ってみる。」
「じゃあ、明日もう一度ダンジョンに行くってことで!」
俺たちはまたダンジョンに行くことになったのだった。これでもう3度目だ。これ以上このダンジョンにお世話になることはないだろう。
10月14日まで一旦書くのをやめます。10月14日にまた更新します。




