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勇者なんてやめて旅をすることにした  作者: じゅじゅ
2 ダンジョン探索編
15/58

『これ、本当に試練?』

俺たちはリアの落とし穴によって、ダンジョンの入り口まで戻ってきていた。


「どうする?俺が左に行くか、それともウィクが左に行くか。」


「もちろん、私が左ね!」


ウィクがそれほどない胸を張りながら言う。うん。あまり胸を張っているように見えない。


「行くか!」


すぐに誰がどこに行くか決定したため、時間もないので俺たちは再びダンジョンに入った。


「じゃあまた後で。」


分かれて進む。俺はCルート、ウィクはAルート、リアはBルート。前回行くはずだったCルート。ウィクがなにもないと言っていたので俺はなにも警戒せずに進んだ。


奥に進むと、スライムらしきねばねばしてそうなモンスターがいた。こういうときに、あいつを頼ろう。


(なにかわかるか?)


『スライムですね。奥にゴールドスライムの存在反応を検知しました。スライムは強くないので普通に剣で叩けば死にます。』


(わかった。で、ゴールドスライムって?)


金のスライムか。絶対何かいいことがありそうだな。


『ゴールドスライムは倒せば大量の経験値が手に入るという便利なスライムです。ダンジョンでお馴染みのレアモンスターですね。』


(よし!ガンガン突き進むか!)


俺はただただ剣でスライムたちを叩きながら奥に進んだ。スライムは普通ので経験値が10しか手に入らない。途中でたまに銀色のシルバースライムも現れたが、経験値が10倍の100しかなかった。


「じゃんじゃんと…!」


スライムのキリがない。いくらでも沸いてくる。初心者のレベルアップを狙いでこのダンジョンに来るとしたら間違いなく大成功だ。でもこの量はやばい。押しつぶされそうだ。


俺は今ようやく試練の内容を理解した。この試練は、弱いものが重なることによって強くなっている。よって、弱いものも侮ってはならないということなのだろう。


剣で叩くだけだと増加のスピードに追い付けない。こうなっては魔法を使うしかない。ここは…


刃風シャープ・ウインド。」


刃風シャープ・ウインド。前にウィクが使った殲滅魔法。刃が付いた風を吹かせてまとめて殺すというもの。だが、スライムの動きが止まっただけで消えていない。つまり、


『この通り、これらのスライムには一切魔法が通用しないということがわかりました。』


(他には?)


『以上ですかね。何匹解析しても出てくるのは魔法耐性とふみつけと言う技のみです。』


(わかった。)


魔法による攻撃は通用しない。なら、この剣と体一つで戦うしかないのだ。


俺は再びあの大量のスライム集団に突っ込む。だがスライムの山はプニプニしているため、弾き飛ばされてしまう。途中で飛んで移動しようとも思ったが高さが足りない。


俺はスライムたちに囲まれてそこに立ち尽くしてしまった。自分は強くないのだと再び痛感する。俺は思い上がっていたのかもしれない。転生ボーナスももらって、魔法を自由に作れることに。でも、それをうまく扱わないと意味がない。例えば、ウィクの使った符呪エンチャント……ん?待てよ。


符呪エンチャント…そうだ!これだ!


(なあ、符呪エンチャントって物理攻撃になるの?)


『剣などにすれば物理攻撃になります。ですが魔法陣を用いるものは魔法攻撃になります。)


(よし!じゃあいけるな!)


『?』


(まあ見ていろって。)


俺も符呪エンチャントをすればいい。剣に符呪エンチャントすれば物理攻撃になる。つまりあのスライムたちに攻撃が通るのだ。


手に魔法陣を出す。そういえば自分の魔法陣は初めて見たな。結構複雑そうでよく見ると変な文字がたくさん。風魔法だから少し緑に近い色だった。前に氷魔法を使った時に青かったから使う魔法によって色が違うのだろう。


符呪エンチャント"刃風シャープ・ウインド"!」


そう。符呪エンチャント"刃風シャープ・ウインド。その名の通り、剣に刃風シャープ・ウインドを付与する。最初はこの魔力に剣が耐えられないと思っていたが案外この状態を保っている。


俺は再びスライムに切りかかった。最初の普通に切りかかった時とは手応えから違う。最初は力で押し切っていた時が多かったことに対し、刃風シャープ・ウインドを使っただけで振っただけでも一匹殺せる。思いっきり振ったら大量のスライムが吹き飛んだ。


『そういうことですか。この剣、あまり長い時間負荷に耐えられないので注意してください。』


(知ってる。そもそも、符呪エンチャントできただけでも奇跡だと思ってるから。)


剣が壊れないうちに俺はスライムたちをどんどん剣で薙ぎ払っていく。レベルがどれだけアップしたか気になるな。数百匹いや、数千は倒したからな。その中にシルバースライムもちょこちょこ紛れているわけだし…


どれだけレベルアップしたか気にしつつ、俺はついにあの、ゴールドスライムにたどり着いた。キラキラしていて目を開けていられないほどだ。捕まえて売り飛ばそうか。


『このゴールドスライムを倒すことこそが試練なのですよ!?』


途中であいつも割り込んでくる。まあ、倒さないといけないわけだし…


そういうことで俺はゴールドスライム計三匹、倒した。


すると、また声が聞こえる。だが、あの試練をやらせたやつの声ではなかった。


「確認しました。ゴールドスライムを倒したことにより、あなたは、【闇魔法全般】、【自然影響耐性】、【耐性無効】を獲得。」


よくわからない。だが、中にいるあいつが驚いていることだけはわかる。「はぁ?」と言いたそうだ。


(なにか言いたいことがあったら言えばいいだろ?)


『い、いえ、ゴールドスライムはすごく希少です。この世でまだ200体しか発見されていません。それで、ゴールドスライムは倒したら経験値が10000獲得できます。そして、今までの研究で、1回だけ耐性とスキルを得たものがいたのです。それが、まさか3体全てが耐性とスキル持ちだったとは…』


おいおいおい!つまり俺、とんでもないことをやらかしてしまったってことか!うれしみ半分。驚き半分。でも、闇魔法全般を獲得できたのはよすぎる。しかも、耐性を2つ?獲得したのか?


『耐性は、【自然影響耐性】のみです。あの【耐性無効】は私が知る限り、持っていたのは歴史上でもあの悪魔王デーモンキングしかいません。一番いいものはその、【耐性無効】です。』


(そんなにいいのか?能力は?)


『解析しました。能力は、相手の耐性を無効にすることですね。例えば、相手が雷耐性を持っていたとしましょう。そこに、あなたが雷で攻撃すると、その耐性が無効化され、攻撃が通ります。』


(やばいじゃん!)


俺は今、歴史上でも一人しか持っていなかったすごい能力を手に入れたのだ。本当はここで「うぉッシャーーーー!」と叫びたい気分だが、それを抑える。


後ろにまだ大量にいたはずだったスライムが全て消えてしまった。全部倒したかった…


気づけば、右手にあった剣はボロボロに崩れ落ちていた。試練はこれで終わっただろう。俺はリアがいる、Bルートへ戻った。


門は開いており、特に中で戦闘中という感じではなかった。


「さおき。おかえり。」


リアがいた。その後ろには大きい何かある。モンスターか?


「なあ、これっ…」


「ドラゴン。」


「ドラゴン!?」


リアがドラゴンをたおした?あはは〜そんなわけないよなぁ。この小さい子にドラゴンが倒せるわけ…


「本当にリエちゃんが倒したんだよ!あとおかえり。」


ウィクもいた。なにも負傷とかはなさそうで何よりだ。


「ーーー試練を終えたようだな。」


再びあの天井から声がする。さっきのとは違い、響いて聞こえる。


「ああ!終わったぜ!」


俺が思いっきり天井に向かって叫ぶ。その声もまた、この部屋に大きく響いていた。


「では、お主たちの一人に報酬を与えようぞ。」


報酬!?まだなにかもらえるのかと思ったが俺はさっきすごい報酬を手に入れたためウィクかリアに与えられるものだと思っていた。でも、2人がこっちを見てくる。そしてリアが緊張でもしているのか、足が震えているように見える。気のせいだろうか。


「リア?大丈夫?」


「だだだだいじょうぷ…だよ?」


声まで震えている。しかも"大丈夫"がだいじょう"ぷ"になってるし。


「俺?………そんなまさかなぁ〜」


なんとか気を紛らそう。


「ーーおまえだよ!」


天井のやつが突っ込んできた。声が大きすぎて耳が壊れそう…


「いらねぇ。」


「「?」」「!?」


リアの震えが止まった。やはりな。この報酬が欲しかったのだろう。それで緊張して震えていたのだ。


「さおき。いいの?すごいものだよ?」


リアがグイグイといろいろ問いてくる。いや、欲しかったんじゃなかったの?素直じゃないなぁ。


「欲しかったんだろ?だから。」


「え?」


問いかけが止まり、リアが唖然としている。まさか、自分で震えていることに気づいていなかったのか?

後ろに立っているウィクが「へぇ〜」って感じの顔をしている。恋愛脳が目覚めてしまったのだろうか。


「ーーーーいいのだな。こやつにその力を譲って。」


「ああ。リア…いや、アミリエにあげろ!」


俺が叫んだと同時にダンジョンに一筋の風が吹く。強くなく、やさしかった。


「ーーーいいだろう。」


その瞬間、リアに虹色の光が降り注ぐ。眩しい。俺は思わずまぶしすぎて後ろを向いてしまった。


「さおき、終わった。」


振り向くと光は消えており、なんの変化もなかった。リアがこっち(俺の方)に走ってくる。そして、また抱きついてきた。


今更だがリアの身長があんまり高くないことを知った。髪の毛も合わせて俺の胸あたりにギリギリ届かないくらいだ。


「………大好き。」「「!?」」


急に告白された!?この試練の報酬をリアに譲っただけなのに告白された!?しかもウィクも驚きをなんとか隠そうとしているのか、急に俺たちの方を見なくなったがまったく隠せていない。


「まあ、もう、終わったわけだし…帰るか。」


天井を見上げながら言う。なぜかすごく恥ずかしかった。


「うん!」


リアもこの報酬を得たかったがためにもう一度ここに来たのだろう。まあ目的も達成できて俺もいろいろ得たわけだし。



こうして、いろいろあった試練は終わり、俺たちはダンジョンから出た。というか、これ本当に試練だったのか?


「ーーーーーーーーいい仲間を見つけたな。がんばるんだぞ。アミリエ。」


この声の正体はアミリエから明かされることはない。これまでも、これからも。


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