『ーーーこれより、汝らに試練を課す』
あのベット事件のあと、アミリエがウィクに説明し、なんとか事件は解決したのだった。
「脅かさないでよね!もうっ……」
ウィクの顔が赤い。間違いなく勘違いされていた。ったく、こいつの頭にこの思春期という単語があるのやらないのやら…
「さおき、ウィク、頼みがある。」
さっきの雰囲気が一変し、急にまじめな話になる。ウィクの顔も赤くなくなり、俺はなぜか少し緊張しているのか、手が震えていた。
「さおき、大丈夫。そんなにやばい話じゃない。ただ、私がいたダンジョン?にもう一度行きたいだけ。」
ダンジョンという言葉を知らなかったとは…まあそんなことはどうでもいい。ダンジョンにもう一度行きたい、か。なにしに行くんだ?
「いいんじゃない?私、別のルートも通ってみたいし。」
そう。昨日、ウィクから聞いた話だと、Cルートにはなにもなかったそうだ。こっちは散々だったってのに…
「じゃあ行くか!」
俺たちは昨日と同じようにほうきに乗って移動した。俺も符呪が使えるようになり、自分でほうきで飛ぶことができるようになった。
唯一移動手段がないアミリエはというと、
「むぎゅ。」
なぜか俺のほうきに座っていた。しかもまた抱きついている。この場合は仕方ないと言っていいだろう。自転車で2人乗りしててバランスとかを保つように抱きつくのと同じようなことが、今、このほうきにも起きているのだ。仕方ない、仕方ない。
「リエ、なんでまたさおきくんに抱きついてるの?」
「不可抗力。こうして2人乗りしてるときはどうしてもバランスを保つことが必要。だからこうしている。」
その割には結構体重かけてきているような気がするのだが…うん、気のせいだ。
「さおき、私、そのままの名前で呼ばれるのあまり好きじゃない。なにかニックネームで呼んでほしい。」
たしかに、さっきウィクはアミリエのことを"リエ"と呼んでいた。俺も何か考えるべきか…
ほうきに乗って風にあたりながら俺はいろいろ考えてみた。ウィクと同じように"リエ"と呼ぼうと思ったがなぜかしっくりこない。いっそのことそのままアミリエ呼ぼうかとも思ったがそれだとアミリエが気に食わないだろう。
アミ?ミエ?エア?リミ?リア…リア…これだ!リア!リアでいこう。
「リア、なんてどうだ?」
とりあえず、許可は必要だろう。だがその本人はというと、
「……」
また寝ていた。この子、どんだけ寝るんだ?にしてもやはり気持ちよさそうな感じで寝るものだなぁ。
風邪をひかないようにリアの周りに風魔法で結界を張っておいた。きちんと起きてくれるのだろうか?
「着いたぞ。」
俺はまだほうきで寝ているリアを揺する。
「……んん〜」
リアがそのまま背伸びをする。起きたらしい。なんだかまだ眠り足りなさそうな感じ。
「おはよう、リア。」
「…なんで?」
寝ぼけている…かわいい!
「なんでって、リアがなにかニックネームで呼んでほしいって…」
「リア、リア…」
「リアって呼んでいい?」
「もうすでに呼んでるじゃん。」
せっかくよさそうな雰囲気だったのに割り込んでくるなよ!ウィク!
リアがなにかぶつぶつと小さな声で言っている。
「うん!私、今日からリア!」
心に少し不安が残ってしまった。あくまでもニックネームだからね!名前じゃないよ!
こうして、俺たちは誰もいないはずのダンジョンに再び入った。1人でもなく、2人でもなく、3人で。
「以外と怖い…」
リアが震えている。にしても、このダンジョンって不思議なことしかない。ダンジョンなのにドラゴンとか出てくるし、奥に悪魔族の姫様が封印されてるし。魔神だけど。
「しゃぁねぇな。」
そう言って俺はリアに右腕を差し出す。リアは飛び込んでくるように俺の腕をとった。
「怖かったら、離すんじゃねぇぞ。」
「う、うん…」
暗いせいであまりよく見えないが、とりあえず、これでなんとかリアの怖さが少しでも解消されるんだったらそれでいいだろう。
「お二人さん、お互い懐いちゃって〜。リエもさおきくんによく抱きつくし、さおきくんもよくリエによく格好つけてるし。まさか…」
ウィクがまたいいところで割り込んでくる。しかもとんでもないことを言い出しやがる。まだ会って2日くらししか経ってないし。2日でそこまで行けるなんてそんなのどんなラブコメにもねぇからな!
「そんなのじゃない。」「違う!」
2人で同時に否定する。俺は少し心が痛んだが、現実だから認めないわけにはいかなかった。
俺たちは前回、俺が助けに行ったあのBルートに行った。
「ここから気を引き締めろ。俺が前に来た時にはサキュバスとドラゴンが出てきたからな。」
「うん。」「りょーかい!」
俺たちは先に進む。前回に出てきたサキュバスも、ドラゴンも現れなかった。さらに先に進むと、道がだんだん狭くなっていき、ダンジョンの高さも低くなっていった。
「くっ……低いな……」
「いっそのこと、全部壊すのもあり?」
この子!小さいのに恐ろしいことを言い出しやがる!だが、これでも魔神なのだ。しかも姫。絶対に強いはずなのだ。見た感じでは武力とか接近戦などの殴り合いは厳しそう。でも、魔法はすごそうだ。しかも先日、俺と同じあの結晶の付いたものをもらっている。ただ、バンドじゃなくて髪飾りだがな。
「その髪飾り、似合ってるな。」
「ありがとう。ウィクからもらった。真ん中に赤い結晶が入ってる。」
リアがつけている髪飾りは青いバラの花の髪飾り。真ん中に青い結晶が入っている。ちなみに、普通の赤いバラの花言葉は主に愛情など。それに対して、青いバラの花言葉は奇跡。
「それ、さおきくんのバンドと同じだからね。魔力が供給されてて、生存とか全部わかるから。」
狭い道を出て、俺たちは昨日、俺がリアの封印を解いたあの門にたどりついた。
「ここは…」
「私が封印されていたところ……だ。」
どうしよう。ここで行き止まりだ。昨日、ウィクもCルートは行き止まり言っていた。だとすると、Aルートも行き止まりの可能性が高い。だとすれば、ここしかないのだ。なんとしてもこの門をもう一度開けるしかないのだ。
俺は門の鍵があったところに両手をあててみる。途端に、門全体に魔力が走り、光る。
「え!?」
ウィクが驚きの声を発する。実際、俺もすごく驚いている。前回はゴーレム?を2体も倒したのに、今回は手をあてただけで門が光っている。
瞬く間に門は開き、前回の入ってから門が閉じたスピードと同じくらいだった。
「……ぁ」
ウィクがもう、ちょっとひき始めている。もし、リアの封印されていたあの箱のことを知ればひくどころじゃなくドン引きしそうだ。
俺たちは奥に進み、前にたくさんの財宝があった場所の真ん中に立った。前にあそこに行ってなかったからよくわからなかったしよく見えなかった。先に玉座がある。
「着いた。」
「?」「?」
ここに立ってしばらく経ったがなにも起きない。てっきりなにかすごいことが起きると思っていたのだが意外となにも起きない。例えば追加でなにか財宝が降ってくるとか、それかさらにやばいモンスターが出てくるとか…
『!?ものすごい魔力反応です!なにかが近づいてきます!』
!?なにも感じないぞ!だが何か威圧のような魔力な波が当たっているのは感じなくもない。
「さおきくん、なにか流れてきてるんだけど…」
どうやらウィクも波を感じているらしい。それなのにリアはなにも動じない。波を感じてないわけではないと思うのだが…
「さおき、ウィク、大丈夫。何か起きても私がなんとかする。」
「ーーーこれより、汝らに試練を課す」




