0.プロローグ 大人になれず子供に戻れない僕らの旅路
0. プロローグ
満天の星空だった。
深い深い濃紺の中に無数の小さな光が広がり、まるで体がふわりと浮かび上がるような不思議な感覚がした。
あれは。そうだ、シリウス。
地上で見ているときは眩しいほどの青白い光だったはずなのに、こうして見ると真っ赤だった。
「魂」というものを具体的に色にすると、もしかしたらああいった色なのかもしれない。赤く光り散らす、熱量のような、血なまぐさいような、愛情のような。
ーいや、嘘だ。これは虚像だ。
シリウスはいくらなんでも、赤くはない。あれは古代の人々の空想でしかないんだから。
僕は思いっきり手を伸ばした。
その星に向かって、短い手を伸ばした。
無数の星がぱらぱらと、細かなガラス玉になって目の前に落ちる。僕はその中に多分、浮かんでいたんだ。
玉の一粒を掴む。これはガラス玉じゃなく、飴玉だ。
透き通るように綺麗な青い飴玉だった。
暗闇の中で雨のように降る光の粒は、涙が出るほどに美しかった。
シリウス。君は、どうしているんだろう。
手のひらに握った飴玉をそっと開いて、口に含んだ。
見た目以上に甘すぎて、僕は思わず思いっきり笑った。泣きながら、大口を開けて笑っていた。