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京都ぎょうざ

作者: さきら天悟

「よし、この餃子でもう一度、京都進出だ」

小太りのオーナーは店長に同意を求めた。


「このコクがいいですね。

京都人は意外とコッテリ好きですからね」


こってりラーメンで有名な天下一品ラーメンは京都発祥である。


「京都で成功すれば、全国展開できる」

大阪人のオーナーは天を見上げた。

京都は餃子消費金額で宇都宮や浜松に次ぐという。

(秘密のケンミンSHOW情報による)


「そうですね、オーナー。

京都は観光客が多いですから、繁盛すれば全国に名前を広められます。

それに将来、海外進出も」


「おう、この餃子があれば。

コクもあるし、それにインスタ映えする」

オーナーは箸で餃子を開く。

すると黒くドロッとしたモノが皿にこぼれた。


「イカ墨のコクがたまりませんね」


彼らが開発したのはイカ墨餃子だった。


「これで高飛車な京都人をギャフンと言わしてやる」

ふと感じる上から目線の京都人と最初の京都店の失敗とで、

オーナーは必要以上に敵愾心を京都に持っていた。

だからこそ京都で成功し、京都人を見返したかった。

まあ、京都人は彼に関心などあろうはずもないが。


「ところでメニューにはどうしますか。

イカ墨餃子じゃあ、平凡ですし。

ブラック餃子ってどうでしょう」


「だめだ。

それじゃあ、最初からネタバレだ。

驚きがない。

それだったら、皮も竹炭を入れて黒くした方がいい」


ふーん、と二人はハモりながら、腕組みをした。




「失礼」と言うと男は箸で一つ餃子をつまみ、口に入れた。

男は噛みしめる。

コクがあるが・・・

少し生臭さを感じないでもない。

癖になる味だが、気になる人には耐えられないかもしれない。

男は一瞬沈黙するが、すぐに回答を導き出した。


「京都餃子ッ」


男がニヤリと笑うと、真っ黒な歯が口から覗かせた。






「ありがとうございました、探偵さん」

オーナーが男に頭を下げる。

男はしかめ面で返した。


「あッ、すみません、名探偵さん。

藤崎さんのおかげで大成功です。

この大津店で12店舗目です。

『京都餃子』のおかげです」


自称名探偵の藤崎誠はニッコリと笑んだ。

また真っ黒な歯が顔をみせる。


「でも、いまだに京都には進出できていませんが」

オーナーは自虐的に言った。


でも、『京都餃子』なのになぜ京都に店が出せない?

12店舗もあるのに?


そう、その12店舗は大阪、奈良、滋賀にあった。

京都を囲む。

でも、囲んでから攻め込む訳ではなかった。

商品名的に京都には進出できなかったのだ。


餃子を突くと、ドロッとした黒いイカ墨アンがでる。

これは、暗に京都人はハラ黒を意味していた。

これでは京都に進出できるはずもない。

でも、大阪、奈良、滋賀では大いにウケた。


京都餃子を頬張り、真っ黒な歯を見せた笑顔でインスタに投稿。

『京都、食ったた』とのコメント付きで。



オーナーは藤崎に白い分厚い封筒を渡した。

藤崎はすっと上着の内ポケットにしまう。

10万円分の無料お食事券。

藤崎の笑顔からまた黒い歯がこぼれた。

秘密のケンミンSHOWを見て思い付きました。

京都のみなさん、すみませんでした。


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