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ママはどこ?

飼い猫を見ていると、前々から「書きたいな~」と思っていました。楽しく読んでいただけると、作者喜びます!

挿絵(By みてみん)

二〇一二年五月二一日撮影、本当に手乗りサイズでした。



 僕のママがいなくなったのは二〇一二年の五月、いきなり家を出てから帰ってこなかった。飼い主の声が『交通事故』って言っていたよ。何の事か、僕には解らないけど。アメリカンショートヘアの美猫なママはモテモテで、外にいるたくさんの友達に会いに行ったのかな? 僕はママのおっぱいが欲しくて、必死にママを呼んだんだ。


「お腹すいたよ~、ママ~、どこにいるの?」


 お兄ちゃんとお姉ちゃんも、それは必死にママを呼んでいた。


「ママ~、ママ~、ママ~」


 困ったのは飼い主、僕たち五匹の子猫をママの代わりに育てなきゃいけない。そうでないと生まれて一か月ぐらいの僕たちは死んでしまう。


『あああ、大変だぁ~』


 手を焼いた飼い主は、あちこちの友人たちに連絡して里親を探したんだ。そしてある日、僕たちは四匹だけ飼い主の友人に変な箱に入れられ、怖い音のする乗り物で運ばれた。兄弟の一匹は飼い主の元に残ったんだ。


「怖いよ~、ママ~、ママ~」


 僕たちは不安でいっぱいだった。知らないお家に到着すると、変な生き物が僕たちの匂いを嗅ぎに来た。ミニチュアダックスフンドって小型犬。僕たちをペロペロなめてくれた。ママの舌と違ってザラザラしてない。僕はちょっと嫌だったけど、お姉ちゃんは嬉しかったみたいで、その犬をママだって言い始めた。え~、ママはもっと美猫だよ~。



 飼い主の友人はやっぱりあちこちに連絡して里親を探し、何日か経った頃その家に別の友人がやって来た。


『や~ん、かわいい!』


 お兄ちゃんとお姉ちゃんが二匹まとめてその人に連れて行かれた。


「おに~ちゃぁん、おね~ちゃぁん」


 僕は寂しくて必死に鳴いたんだ、でも帰って来なかった。二匹で残ったお姉ちゃんの方はすっかり犬に懐いていて、僕は一匹で孤独なままいつの間にか目が開かなくなってきた。


「暗いよ~、助けて~、ママ~」



 二〇一二年五月二一日。この日、世の中は金環日食という一大天体イベントで、人間達は大騒ぎだった。太陽がお月様に隠れて、指輪のような状態に見えるらしい。僕は目が開かなくなっているので、何が起きているのか分からないけど。


 いきなりその家の人が僕を抱っこして外に連れ出した。金環日食が終わって普通の日常が戻ってきた頃の事だ。目が開かない僕は空気の匂いで外だと分かった。


『本丸さん、猫亡くされて、もうだいぶ経つでしょ。子猫、もらってくれませんか?』

『え、良いんですか? ちょうど、そろそろ新しい猫を飼おうかって言ってたところですよ~』

『ああ、良かった。親猫が交通事故で死んでしまって、里親を探してたんですよ~』


 僕はその人の手に乗せられる。なんとなく毛皮じゃないから居心地が悪くて、その人の服の袖によじ登る。


『小っちゃい~、かわいいけど、子猫から育てた事ないんですよ。これ一か月ぐらいでしょ? 大丈夫かなぁ』

『あ、家も一匹引き取る事にしたから、犬に懐いてるし……、何かあったら相談し合いましょう』

『そうですね~、出来ればメスの猫が良いんだけど、この子……、え? オス? メス?』

『メスですよ』

『あ、じゃあ、大丈夫ですね。引き取ります!』

『ありがとうございます!」


 僕はそのままその人の家に引き取られた。オスとかメスって、何の事だろう? 僕は不安いっぱいで、その人の腕に必死にしがみ付いていた。


『目ヤニで目が開かないみたい。今、取ってあげるよ~』


 お湯で濡らしたタオルは、ママの舌みたいにザラザラで気持ちが良かった。僕の開かなかった目は少しずつ開いて、だんだん物が見えるようになってきた。


『なんだか、弱っちい感じの猫だね~。大丈夫かな? 育てられるかな?』


 僕の開いた目は、その人を大きなママだと認識した。だってザラザラの舌でなめてくれたじゃないか。


『やっぱり、飼うなら女の()だよね~』

「え? 僕、男の子だよ」


 僕は大きなママに必死に訴えた。


「僕は男の子だよ、ねぇ、男の子なんだよ、ねぇ~!」


 でも、大きなママに猫の言葉は通じない、「ニャ~」としか聞こえないんだから。


『今日から君はうちの子だよ。私は君のかあちゃんだよ』


 かあちゃん……、ママじゃないの? 僕は不安いっぱいの目で、「かあちゃん」という大きなママを見つめた。

作者=大きなママ=かあちゃん です(笑)

不定期更新ですが、今後ともよろしくお願いいたします。


猫の飼育本によると、「最低でも二か月は親猫の元で生活させてあげて下さい」と書いてあるものが多いかと思います。離乳の時期は多分に親猫でないと分からない事が多いからではないかと、作者は思っております。また子猫にとって、精神的、身体的な支えである親猫の側でいる安心感も、その後の猫としての性格形成に、生まれてからの二か月が大変重要な時期であるからではないかと思えます。子猫の時期に人間の家をたらい回しにされ、人間不信になり咬みつき癖のある猫に変わってしまった猫も知っています。

マロンは一か月で親を失い、知らない人間を介在して我が家に辿り着きました。

二話目の写真を見てお判りかと思いますが、最初は不安な表情が前面に浮き出ておりました。まだ視界が広い訳でもない子猫が、知らない環境に親不在の状態で身を置く事のストレスは計り知れないと思います。大きくなった猫でも、初めての環境に馴染むまで狭い場所に隠れるのをそっとしておくのが鉄則です。環境の変化に弱い猫ですが、馴染むと自然と人間に親愛の情を示してきます。だからこそ古くから人間の友として存在してこれたのだと思います。もっとも、ネズミを捕るという役割もありましたが(笑)

これから子猫を手放そうと思っておられる方がいらしたら、せめて二か月間は親元に置いてあげて下さい。三話で書いておりますが、離乳の時期は預かる人間も大変になります。多産な猫の場合、飼い主さんの負担は大変だと思いますが、子猫の為に、猫を飼う人間として切にお願いしたいです。


注)あとがきは蛇足かもしれませんが、ある程度書き進めてから書いております。作者の主観で書いておりますので、うっとうしいと感じられた場合は本文だけお読みいただく事をお勧めします。

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