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竜巻警報

作者: 広幡桐樹

「校内放送。校内放送。2階コンピュータ室において竜巻が発生。原因は不明。校内の生徒及び職員は直ちに避難してください。」


こんなことが起こるなんて自分だけでなく、誰もが予想していなかっただろう。事の発端は、3時間目の情報の授業の待ち時間だった。授業までは5分ぐらい時間があり、暇を潰そうとコンピュータ室の回転する椅子に座って回っていた。すると、周りにいた友達が僕を見て、突然椅子を加速させ始めたのだ。あれよあれよと言う間に椅子は速度を増していき、周りの景色がぐちゃぐちゃになって、頭がくらくらしてきた。しばらくすると、人が机かどこかにぶつかったような激しい音が聞こえた。ぐちゃぐちゃになった景色の中にかすかに見えた友達の姿は消えていた。けれども椅子はひとりでにどんどん加速していく。そのうち、ヒューという風のような音が聞こえ始めた。パソコンが床に叩きつけられたような音も聞こえた。女子の甲高い悲鳴も聞こえた。僕は悟った。「僕は竜巻になってしまったんだ」


こんな事になるなんて。僕はただ友達が椅子に座って回っていたのを見て、ふざけて回しただけだった。なのに、こんな事になってしまった。避難場所の運動場から見ると、竜巻はコンピュータ室を中心に学校を破壊しながら、どんどんその直径を広げていく。もうだめだ。僕はとんでもない事をしてしまった。


「緊急ニュースです。先ほど〇〇県××市の△△高校で原因不明の竜巻とみられるものが発生しました。△△高校の生徒のうち6人が重傷、その他の生徒と職員は無事避難した模様です。現在もまだ竜巻は消滅していません。情報が入り次第、またお伝えします。」


周りはもう風が強く吹く音しか聞こえない。僕はもう助からないのだろう。だって竜巻の中に人がいるなんて、僕が竜巻になったのを見た人以外考えやしないだろうし、仮にそのことを誰かが伝えたとしても、誰がそんなこと信じるだろうか。でも頭のいい人なら、学校の中からいきなり竜巻が発生するなんておかしいって思うだろうか。どっちにしろ、僕を助けに竜巻の中に飛び込んでくる人なんていないに決まってる。


「昨日発生した竜巻は現在も依然として消滅しておらず、太平洋側に逸れながら北上している模様です。竜巻の予想進路に当たる地域の皆さんは十分に警戒し、最悪の場合避難するようにしてください。」


だんだん風の音が小さくなってきたような気がする。ほんのりと潮の香りがした。僕はもう海の上にいるのだろうか。何日もずっとこの状態で、意識も飛びかけている。もう限界だ。そう思った瞬間、いきなり僕は落下した。視界が開けていき、水中に飛び込んだ。全身に痛みが走ったが、どうやら助かったようだ。このまま浮き上がって、海の上で助けを待とう。


そのとき、周りに黒っぽい物体がいくつか動くのが見えた。それは鮫の群れだった。浮力で自分の体がゆっくりと浮かんでいくのを感じながら、今度こそは本当に助からないだろう、と僕は悟った。

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