あの葉っぱがおちたら
初投稿作品です。
完成度が低いかもしれませんが最後まで読んで貰えたら光栄です。
ある夏の日―――。
「ミーンミンミン」
「あーもう、うるさいなー!せっかく気持ちよく寝てたのに、ぼくの近くで鳴かないでよ!!」
「おぉ、ごめん、ごめん。ちょうどいい木があったからついのぅ。」
セミのじいさんが平謝りした。
「悪かったのぅ、葉っぱのぼうや。」
そういうとセミのじいさんは飛んでいってしまった。
「ぼうやじゃないよ!もう立派な大人だ!!」ぼくは、飛んで行ったセミのじいさんに聞こえる様に大声で言った。
ぼくは、生まれた時からお母さんにくっついている。
羨ましがるやつもいるけど、ぼくだって鳥や犬みたいに自由にいろんなとこに行きたいし、恋のひとつもしたいものだ。
でも、葉っぱの運命なんてたかがしれてる。
冬になる前に、みんなしわしわになって死んじゃうんだ。
そんなある日、ちょうど正面にある病院の一室に女の子が入院してきた。
ぼくは恋をした。
毎日ぼくはあの子に話かけた。
「君の名前は?」
「どこからきたの?」
「おはよう。」
「おやすみ。」
―――いつしかお母さんにくっついている葉っぱは、ぼくだけになっていた。
ある日、いつもあの子の病室の窓辺にいるスズメくんがこっちに近付いて話しかけてきた。
「なんだお前、あの子に恋してるのか?」
「う、うるさいな、どうだっていいだろ!」ぼくはとっさに答えた。
「…でも君はいいな、毎日あの子の近くに行けて。」
ぼくは羨ましそうにスズメくんにつぶやいた。
すると、スズメくんは呆れた顔をして、
「君は分かってないな〜、あの子は君のことが好きなんだぜ。」
と、言った。
「えっ、ホント!?」
ぼくは声を弾ませて尋ねた。
「あぁ、『あの葉っぱと私は一心同体なの、あの葉っぱが落ちたら、きっと私も死んじゃうんだ』ってさ、一心同体って好きってことなんだぜ。」
スズメくんは当たり前のように言った。
「・・・・・・。」
初恋が実るなんて何%の確率だろう、ぼくは嬉しさと驚きで何も言えなかった。
それから僕は毎日スズメくんと話をした。
あの子の名前。
どこからきたのか。
おはようと言ってくれていた。
おやすみと言ってくれていた。
スズメくんは毎日あの子の言葉を届けてくれた。
言ってみればスズメくんは恋のキューピットだ。
そして、ぼくにとって唯一無二の親友だ。
言葉を届けてくれるだけじゃなく雨の日や風の強い日には、いつもぼくを守ってくれた。
「今日も一雨来そうだな。」
スズメくんは空を見上げてそう言った。
「いつもごめんよ。」
と、ぼくが言うと。
「お前じゃなくあの子のためさ。」
と、意気揚々に言った。
スズメくんもあの子のことが好きだ。
そして、たぶんぼくのことも好きだ。
こんな時でさえ、ぼくに気を使わせない言葉を言い放つなんて、ほんとにプレイボーイなヤツだ。
夜と共に雨がやって来た。
でも、今日はちょっと様子が違うみたいだ。
風も一緒になって来たのだ。
しかも、最大パワーと言わんばかりの勢いでやって来た。
「くそ!今日の雨はいつもとケタ違いだ!!」
ぼくを覆うように枝にしがみついているスズメくんが言った。
ぼくはスズメくんの危機を感じた。
「ダメだ、スズメくん。非難して!!」
「バカヤロー、こんな雨どうってことないさ!!」
スズメくんは必死に枝にしがみつき、離さなかった。
―――朝が来て、雨と風がやんだ。
スズメくんも疲れて眠ってしまった。
―――ここ数日、あの子の言葉は届いていない…。
スズメくんはあれからずっと眠ったままだった。
ぼくの心は苦しくなって涙が出てきた。
あの子の言葉が聞けないからじゃなく。
スズメくん、君の声が聞けないから―――。
不幸は続けてやってくる。
ふと、病室に目をやると、あの子がいなくなっていた…。
ひとりぼっちに、なっていた…。
やっぱり葉っぱの運命なんてこんなもんだ。
誰の役にも立てず、誰にも知られず死んでいく…。
分かってたんだ、恋なんてしたって実らないことくらい。
でも、少しは葉っぱの運命が変えられた気がした。
少しだけね…。
「葉っぱさん。」
いきなり下から声が聞こえてきた。
ぼくはびっくりした。
あの子が、ぼくの真下にいる。
すると、あの子が口を開き淡々と話し始めた。
「葉っぱさん、あのね。
わたし、今日で退院するの。
葉っぱさんのおかげだよ。
勇気いっぱいもらったんだから。
ありがとう…
バイバイ。」
さっきまでの考えが覆された。ぼくの運命は少しどころか、ものすごく変えられたんだ。
「スズメくん、やったよ!
ぼく、プロポーズされたんだ。
君のおかげだよ。
君にも教えるね。
愛の言葉
ありがとう…
バイバイ。」
その日、ぼくは冬の風に揺られて宙に舞った。
絵本制作用に考えた話です。
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