はじまり
普通の学校だった。当たり前に入学をする、春。
楽しそうにしていたり。一人の人もいたり。いろんな人がいる。
トーイにとってはとって見慣れない風景だった。
入学式に出て。教室に行き、つまらない担任の長話を聞き、自己紹介をする。
たかが転校してきた程度でクラス中はざわつく。これは今までに一度は見たことのある風景だが、違うのは注目を集めているのは自分だということだけだった。
しばらくぶりの学校、久しぶりの同年代とのコミュニケーション。
でもすこしだけ昔とは何か違うものを感じた。
「じゃあ班の役割とか?きめてください~~」
先生が言った。それを聞き机を動かしていくみんなにトーイは合わせていた。
「んあ~~どうするよ?誰班長」
まだ幼さが残る顔立ちをした男子が言った」
「え、班長はリンがいいでしょ~~」
女子生徒が言う
「えぇ?私?いやいいよ~~?ほかにやりたい人とかいるでしょ~~?」
リン、という少女が控えめに言った。
「あーえーーーっと…トーイ?だっけ??」
トーイが話に入れずにいると、リンが話しかけてきた
「あっ、うん」
「あの、なんかやりたい仕事とかある?」
にっこりと笑いかけながらリンは言う
「ぼく?ぼくはなんでもいいよ。残ったやつでいいよ。」
適当に返事をすると横からさっきまで指揮をとっていた少年が話しかけてきた
「じゃあ~~てきとうでいいんだよな?おまえ副班やれよ」
「えっ…副班長?」
少し予想外だった。
「あ~~~ね。いいんじゃね?」
少女が言った。
「そうだねーーだってこっちきたばっかりなんだよね?自己紹介で言ってたけど。それならなんか大きい役割のやつ、やったほうがいいよ」
それからトーイは副班長、になった。
「トーーーイ」
「あぁリンもうまとめるのやっといたよ。」
「えぇ!?ちょっと私の仕事無いじゃん!」
笑いながらリンは言った
「いいんだよ。これくらい。どうってことないって」
「いや~~私が困るんだけどね~~~~」
リンはいつもにこにこしている。班長もやり、学級委員もやっているいわばできる子だった。
「でも今日、委員会なんだろ?だから気にしないでいいから」
「でもさーーー」
「じゃあ、今日は早く帰らなきゃだから」
正直こういうのは嫌いだった。
「ん~~ありがとうね。じゃあねーー」
トーイはにっこりと笑いながら教室を出た
「あれ?トーイくん帰ってたの」
すこし年の行った女性が話しかけてきた
「あぁ、お帰り伯母さん。」
「も~~~~こんなに早いなら一緒に買い物行きたかったな~~~」
伯母さんは笑った
「ははは。でもこれからちょっと勉強だからね」
「また?ちょっと休んだらいいんじゃない?少しくらい遊んで来たらいいじゃない」
「いいんだよ。べつに、平気だから」
そういってリビングから出て自室に向かった。
中間テスト後。テストが返され、クラス中盛り上がっていた。
「ねぇ。なんだかんだトーイって勉強できるよね~~」
メイがいった
「確かにね!!!トーイ塾とか言ってるの?」
リンが言う
「行ってないよ。自分で」
「はあ!?なんで!!!」
「えっ…てことは自分で勉強だよね???え、え」
メイとリンが食いついてきた
「まあ…嫌いじゃないし、ほかにやることないんだよね~~~」
だからって勉強やる意味ないじゃん!!!と二人は声を合わせていった
「部活はいれば???」
リンが言った
「ん~~~でもいいかな。特に魅かれるものなかったしさ。」
事実であった。中学一年生、青春、部活。というのにトーイは興味が全くなかったのである
それでも薦めてくる二人の会話にトーイは適当に合わせた
「次、理科?」
「まじ?ええ~~~しかも移動じゃ~~ん」
トーイは人の会話を盗み聞きしていた
移動、ということは実験だ。そしてトーイは教科書をまとめて理科室に向かった
「では今日は植物の観察ですね。黒板に書いてあるように―…」
トーイは教科書と黒板を見ながら確認し、実験の準備をし始めた。
よろしく~~~とメイとシュウが言った。こういう時めんどうなのが副班長である。
「じゃあダッシュで次回のプリント取ってくるから」といって先生は教室を出た。
準備を終え観察を始めたころ教室のドアがガラガラと音をたてて開いた。普段授業をさぼっているいわゆる不良、が入ってきた。しかも、その不良はトーイたちの班のメンバーであった。
不良は皆に注目され悠々とこちらに向かってきた
「あ~~~~~まじだるぃわ」
ならば来なければいいのにと作業をしながらトーイは思った。
「おう、お前あれだろ?都会から引っ越してきたんだろ??」
実にくだらない質問だったためトーイは無視をした。
「あ?おい聞いてんのかてめえよぉ????」
短気なその不良は少し苛立ちを見せながら問いかけてきた。リンやクラスのみんなは戸惑っているようだった。
「めんどくさいならここに来なきゃいいだろ?」
すこし笑って見せた。いきがっている不良をおちょくるのは簡単だった
「あァ???てめえふざけんじゃねえぞ」
案の定不良はトーイの服に掴みかかってきた。みんながざわつく
「だから、めんどくさいんだろ?それならいちいちここに来なきゃいいだろ。」
怒っていっるのがわかる
「そもそも君この学校にはいらない」
次の瞬間こぶしがトーイめがけて飛んできた。床に打ち付けられるトーイ
またつかみかかろうとする不良に対してトーイも拳を向けた
「申し訳ございませんでした」
そういって伯母さんは謝っていた。なぜ、伯母さんが謝るのかトーイには理解できなかった。
「まぁ、どちらも悪いことですしねェ、」
と不良の母はいった。
そいつは謝らない。確かに僕も悪かったが喧嘩を買った方も悪いはずだ。
なのに伯母さんは頭を下げていた。
「ごめんね、伯母さん…ぼく、ついカッとなっちゃって…」
「いいんだよべつに。ほら向こうの子も悪いんでしょ。」と伯母さんは苦く笑った。
じつに、彼は個性的ですよ。