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第25話 何が善で何が悪か

「おはよう!」

「おはよー」

 みんなそれぞれに言って教室に入る。全く変わらぬ教室。まあ、いきなりいろいろ変えるのは難しい。警報機ももちろん付きっぱなしだが、あえて取る必要もないだろう。

 戦闘員だった者は包帯をしていたり欠席だったりもする。まだまだマウス襲撃の爪痕は残っている。

「おはよう。おう、薫! 南とどうなった? え?」

「精鋭部隊にいたんだぞ! どうもこうもない! ってか、お前声がデカイ!」

 健太郎は肩を組みたいんだろうが痛いとわかったのか、我慢してるようだ。

「んだよ、お前って奴は。一緒に勉強しようか? とか言ったら?」

「あ、言われた」

「マジでか!」

 健太郎は俺に組みたい手をあげて下ろして俺の前の席に座る。

「ああ、放課後、訓練ないし勉強しようって」

「おい! おい! マジでか!」

 健太郎ボキャブラリーなさすぎだよ。

「ああ、今日からって」

「マジでか!」

 お前はもうそれしか言えないのか?


 キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン


 もう時間切れだと健太郎を席に戻す。チラリと南を見ると友達と話てたのか楽しそうな表情だ。




 放課後ってどこで勉強? 学校の図書室かな? あれ? 図書室って何時まで? 全く利用する機会がなかったので3年にもなってこの疑問。

「東出君。行こっか?」

「ああ」

 健太郎見えてるよ。隠れてるつもりなのか、それ? ついて来るなよ!


 あ、あれ? 学校出ちゃうよ?

 学校の門を通り過ぎる。学校出たし。図書館か? ああ、そうだよな。学校だとな、いろいろ言われるし。

 んー確か図書館って反対側だよな。

 どこ行くんだ南! そして聞けない俺。ずっと南と話をしてるんで聞くに聞けない!


 マンションの入り口の前で立ち止まる。え! 中入ってくけど南ちょっと待て! 郵便受けをチェックする。『南』の名前発見、じゃない。え?


「あ、あの勉強ってまさか南の家?」

「うん。私、周りに人がいると集中できなくて」

 いや、俺がいるんだけど。というか、俺をわざわざ加えてるよね?

「え? あの、その」

 ああ、何だよどうするんだよ。何も言えない。

「あ、嫌だった?」

「ううん。違う。ただ図書館かなって思ってたから」

 嫌じゃないが、いきなり家って緊張しまくりだろ。今日は勉強できそうにないね。

 エレベーターを待ってる間にマンションの玄関を何気に見ると腕で円を作ってる健太郎がいる。つけてきてるんじゃないよ! ていうか腕! 治らないぞ、そんなことしたら。あー、明日質問攻めだよ、これは。



 鍵を開けて入る南。

「あ、おじゃまします」

「どうぞ」

 は、南の声。

 

 というわけで、




 南が出して来たテーブル挟んでどうやら誰もいない南の家の南の部屋にいる俺達。

 教科書の言葉が頭をどんどんと通過していく。

「ねえ。東出君」

「え!」

 やばい。勉強してないのバレた?

「何で私が精鋭部隊の志願したか聞いたよね?」

「ああ。うん」

「あの時の答えももちろんそうだったんだけど、本当は東出君が精鋭部隊の志願したからなの」

「え? なんで」

「鈍い! 鈍過ぎる!」

 南怒ってる。え……俺がしたからって……ええええ! マジでか! あ、健太郎かよ、俺。いや、え?

 顔がどんどん熱くなる。

「こっちにいても死闘になるのはわかってた。だから、どうせなら近くにいたいって。遠くにいて何も出来ないより、近くにいたいって思ったら手をあげてた」

「そうか。俺も南が近くにいて無線や直接みて確認できたから、安心できた」

「え、あ、うん」

「南、好きだ。ずっとそばにいて欲しい」

 頭や心と別に口が勝手に俺の想いを言っていた。

「あ、うん。あの。そのセリフ、なんか若干違うような」

「あ、いや、その、普通にあの好きだ。俺と付き合って欲しい」

「うん」


 こうして俺達の戦いは終わった。マウスの巣は爆発されたものの、少しでもあの技術が残っていると困るので、各国の軍隊がそれぞれ軍を見張りにつけている。ようは他国に取られないように互いに見張っているのだ。


 だけど、平和になり、大学生となった俺の目にはこれほど日々進歩を遂げる人類の未来が心配になる時がある。

 平和になった途端に軍事開発に向いていた科学は平和な世界を満たすものとなって行きつつある。これをあの男は防ぎたかったとしたら? たった150年を稼ぐのにどれだけの命がかかっていたか。


「薫!」

 後ろからタックルしてくるのは一人しかいない。

「真冬やめろそれ! 危ない!」

「いいじゃない! 全然ビクともしないくせに!」

 今度は腕に絡んでくる。

「もうすぐ卒業だねー。就職先決まったし、あとは卒業のみ」

「ああ。早かったなあ」

 あれからもう4年以上の歳月がすぎた。

「まだ思い出す?」

「ああ」

「私も。街が変われば変わるほど、思い出すよ」

 たった4年でこれなんだ100年持つんだろうか。

「何が善で何が悪なんだろうね」


 何が善で何が悪


「さあ、行こう。映画はじまっちゃうよ」

「ああ」



 俺達にはこの先の未来を変えることはできるんだろうか。人間の貪欲さから逃れることが。



最後までお読みいただきありがとうございました!

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