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第24話 非戦闘員

「あー」

 あくびが出るよ。疲れてぐっすり眠れるかと思ったら考え過ぎて頭が冴えまくって寝れなかったよ。

 ふと出入り口を見ると南がこっちを見てお盆持って立ち止まってる。ん? どうした? あ、あれ? 何時の間にか左右も前もふさがってる。なんだよ、女子で固まりたいなら俺を避けろ!

 お盆を持ち立ち上がり南の方へ行く。南はそこら辺に適当に座る。こんなに空いてるのに。


 南の前に座ると

「ねえ、気づいてなかったの?」

「え? ああ、囲まれてたのだろ? 気づかなかったよ。固まりたいなら別ですればいいのに」

 南がクスクス笑ってる。ん? 変なこと言ったかな?

「何だよ」

「ううん。なんでも。さあ、食べよう! それで、私達の街に帰ろう!」

 ああ、そうだ。街、俺たちの街に帰ろう。いろんな思いや納得できないことばかりだけど、とにかく街に帰ろう!



「みんなここで精鋭部隊は解散する。それぞれの場所に戻り明日からは日常生活を過ごして欲しい。今回の結果、精鋭部隊として何もしていないんじゃないかと思っているものもいるかもしれない。けれど、あそこまで行き砂嵐の中マウスの巣の中へ突入したんだ。恥じることは何もない。俺たちは平和という大きな成果をもって帰ったんだ。以上解散!」

 桜田隊長の話は終わった。ここにいる人ともう一度会うことは少ないだろう。共に命をかけたのに。



 機体に乗り込み南ともう一人に合図をする。3人は同じ学校だから着陸場所も同じだ。飛行を開始する。


 校庭に着陸すると何名かは残っているようで機体を校庭の下の格納庫に仕舞う作業をしている。いつものようにヘルメットと戦闘服も戦闘員に渡す。そこに待っていたのは青山先生だった。

「先生明らかに松葉杖ですけど」

 けが人は戦闘員から外される。隊長も同じだ。

「最後の機体を格納庫に入れる作業の監督と帰還した精鋭部隊の戦闘員に解散を命じるだけだから、戻してもらったんだ。次の隊長も負傷してるんで怪我の軽い俺になったんだ」

 青山先生に苦情を言ったが、この二年半隊長だったんだ。今さら新しい人に言われるよりいいだろう。

 南ともう一人も来た。

「では全員そろったな。精鋭部隊として遠征ご苦労だった。こちらではわからない苦労や不安もあっただろう。君たちのおかげで本学の生徒はすべて非戦闘員となった。この街いや、日本、いや世界中の人が非戦闘員になった。君たちのお陰だ。明日からは普通の生徒としての日々だ。特に東出、南、君らは受験生となる。これからは自分の未来をみて生きて欲しい。ではこれで21部隊解散!」

 世界中が非戦闘員。そうだ世界中で戦っていたんだ。マウスと。あの男の思想と。


「ねえ。私服で学校って変だよね?」

「え? ああ、変な気分だな」

 南ともう一人の下級生しかいない。自然南と一緒に帰っている。

「あのさっ、放課後ってもう訓練ないじゃない?」

「ああ、本当だな」

 そうだ、もう訓練所に通うこともないんだ。

「一緒に勉強しない? 東出君理系じゃない? 私文系だから教えてくれないかなあ?」

「え? 俺でいいならいいけど」

「じゃあ。決まり! 明日からね!」

 南はさっさと決めてる。

「うん。明日かあ」

「ん? 何か用事?」

「いや、普通の高校生してるのかな明日って思って」

 想像出来ない警報の鳴らない日々を。訓練所に通わない日々を。

「してるよ。うん。だってずっと戦闘員してた訳じゃないでしょ?」

 そうだ日常生活と戦闘員を繰り返していた。それが俺らの生活。

「そうだな! 南、そっち? 俺こっちだから、じゃあまた明日な!」

「あ、うん。明日。また明日ね。東出君」



 家に帰ると母はしばらく俺を見つめ、涙をボロボロ流し静かに泣いていた。

 俺の『ただいま』って言葉聞いてたのか? 涙を流してる母親からは『おかえり』の言葉は出てこなかった。

「薫」

 と、この一言だけだった。


 やっと自分のベット、少し横になり天井を見上げる。……昨日うまく眠れなかったのとやはり疲れていたんだろうそのまま眠っていた。起きてみると外は夕方になっている。

 窓際に立ちカーテンを開け窓も開ける。風が入ってくる。生暖かいかと思ったら気持ちのいい風だった。

 空を見る。赤く染まった部分とまだ少しだけ青い部分とが混ざり合い綺麗な色になっている。

 あの人の目指した世界はこれだったんだろうか。俺は多分一生自分に問いかけるんだろう。マウスとマウスを作ったあの男の事を。

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