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第8話:現実味を帯び始めた2正面軍事作戦

ドクトリン会議の疲れで深夜まで眠っていた。夢の中では最近は軍事系の職務のせいか何故か自分が最前線でライフル片手に突撃していた。砲弾が降り注ぐ中で、突然の砲弾飛来警報音で叩き起される。

「連邦戦!?……ん?通信魔導具からか……この音は陛下に設定してあったか……」

眠たくて動きづらい身体を無理やり動かして受話器を取る。

「はい、レイヴァスです」

「夜食が食べたいわ。今すぐ食堂で作って。侍従達が言っていたの。あなたの作る料理は絶品だとね。てことでよろしく」

こちらが何も言う前に切られてしまった。

とりあえず寝巻き姿で会う訳にもいかないので、いつも通りの慣れない燕尾服を着て、食堂へ来ると、陛下は待ちきれない子供のような様子だった。

「レイヴァス早く!」

「陛下、美味しい料理というものは多少時間はかかるものです。お許しを」

陛下は納得がいかないようだったが「時間に見合った美味しい物をよろしく」とだけ言って、本を読み始めた。タイトルは……『陸軍劣勢時における敗北の回避性について』本当に陛下は軍事戦略以外政治が苦手なんだなと思いながら陛下が喜びそうな料理に思いを馳せ、何を作ろうかと思ってると机の上にメモがあった。総料理長の字で「陛下は血の冷製スープと血のソースのステーキ、温かいココアを好む」と書かれていた。総料理長は昔から陛下のお世話をしていると聞いており、どんな人なり吸血鬼でもすぐに作れるようにメモしてあると小耳に挟んだが本当だったとは……だが、総料理長のアドバイスに感謝はしたが肝心な調理法が書いてない。

「今度総料理長から習うか……怒っても仕方がない……」

30分ほどで出来上がり、陛下に右側から料理を並べていく。

「あら、ちゃんと右側から並べるなんて偉いじゃない」

「本で読んだものでして……」

「本は良いわ。静かに物事を語りながらも心を揺さぶってくれる。素晴らしい発明よ」

自分からしたらその戦略学の本で心を揺さぶられるのは戦争前夜な気がしたがまぁいいや。

「まずはステーキから頂くわ」

フォークとナイフを慣れた手で綺麗に切って、ソースを少し付けて食べる。咀嚼音も無く、とてもお上品な食べ方というのが正直な感想だった。

「美味しい……決して高級料理という感じではないのだけれど……お母様の料理を思い出すわ……」

「お褒めのお言葉恐悦に至ります」

すると陛下はフォークとナイフを渡してくる。

「お母様は食べさせてくれたわ。もう、これ以上は言わなくても分かるわよね?」

「お任せください」

自分も最近ようやくこの高級料理の食べ方に慣れ始めて、陛下のまだ小さなお口にステーキを持っていくと子供のようにパクッと食べて、一言。

「これじゃあお母様じゃなくてお父様じゃない!」

流石に性別までは変えられませんよ!……と思いながら、「すみません……」と謝り、スープも1口ずつ飲ませてあげて、食べ終わり、メイドさんも叩き起されたようで食器を洗ってる中で陛下に服の袖を掴まれる。

「ねぇ……もし、私があなたの祖国に宣戦布告をしたらあなたは……」

自分はため息を吐きながらも答える。

「陛下、私は帝国と陛下にこの身と命を捧げるおつもりです。陛下のご命令とあらば軍事戦略も勉強します」

陛下は少し目を潤わせていたがすぐに綺麗なレッドルビーの瞳に戻して、少し笑顔を見せて、軽く信頼の言葉を述べる。

「流石ね。私のワンちゃんなだけはあるわ。しばらくは変態侍従長の肩書きは取ってあげるわ」

「陛下なりのご配慮とお気持ち感謝致します」

その後は午前九時ほどまで休ませてもらい、侍従本部へ出勤すると御前会議の時にいた陸軍元帥ドルヴォーフ閣下と陸軍監察部が立っており、侍従本部は嵐の中の山地にいる気分だった。もう少し寝ておけばよかったなぁ……


「レイヴァス侍従長閣下、お久しぶりですな。少しお時間を頂けませんか?」

陸軍元帥閣下がここまで頭を下げるとは……

「構いませんよ。自分の執務室へどうぞ」

全員黙り通しで、自分の執務室のドアを開けて、向かい合うように座り合う。相手は自分を鋭い瞳と軍人らしい屈強な体でこちらを見つめる。

「侍従長閣下はヴァルツ海軍元帥と仲が良いと聞いて、頼み事をしたいと思いました」

「戦力増強ですか?」

元帥はいかにも。と答えただけだった。

「御前会議でも申し上げた通り、増強は帝都防衛戦力として2個師団、その他師団に関しても訓練を通じ……」

「ラニーア共和国とアルダム帝国の合同軍事演習。この言葉を聞けば閣下ならすぐにお分かりでしょう」

ラニーア共和国、自分の祖国だ。そしてアルダム帝国は人類勢力としては数は劣っても質だけで見れば吸血鬼軍を上回ると言われている。人間達はどこまで戦争がしたいのか……自分はこの国に来てわかった。吸血鬼の方々は基本的に静かに暮らしたいだけなのだ。だが、自然災害や人間の支配欲が世界を戦火の渦に巻き込む。

「こちらの資料にある通り、人類勢力は再び覇権戦争を想定していると断言せざるを得ません。閣下には適切な軍事力を見定めた上での陸軍戦力増強を依頼したいのです。実はですが……陛下には先にお話していて……」

なるほど、だから宣戦布告の話を……

「承知致しました。私の一存では決められないので陛下とヴァルツ海軍元帥とドルヴォーフ閣下も混じえた会議をしましょう。日程は……」

「すぐにでも」

自分は悩んだ。陛下は今、宣戦布告で自分から仕掛けるべきか防衛に徹して、隙を見て、城下の盟を結ばせるか悩んでおられる。

「分かりました。陛下はお疲れなので我々3人で話しましょう。ヴァルツ元帥もすぐにお呼びします」

「助かるよ」

申し訳ないですを連呼しながら、ヴァルツ海軍元帥を急遽呼び出して、3人での会議が始まった。

「ふーむ、想定外だった。もはや現実的に考えても二正面作戦は避けられない可能性すらあると私は考えるがね」

地図を眺めながら、船の駒を行ったり来たりさせるヴァルツ海軍元帥はいつもとは違う、混乱と迷いが見られた。

「ヴァンルデット連邦と人間連合ですか……」

ドルヴォーフ陸軍元帥も戦略における最小単位の師団の駒を右に動かしては左に動かし、なかなか定まらない。

「私の経験では人間達は海戦技術に力を注ぎ、陸軍戦力は数と強い質による強行的な戦略をとる傾向にある。今も変わらないだろう。我々吸血鬼は魔術や肉体能力が高くても、連邦の援助無しではこの連合を瓦解させるのは困難を極める」

ドルヴォーフ閣下も葉巻を吸いながら重く、言い放つ。

「だから対外遠征能力を強化しろと言っただろう。我が国の総国民約1億3000万人、戦闘可能年齢かつ国力基盤維持で800万人から1200万人の徴兵。とてもじゃないが早期に対策を打たねば本当に帝国成立1500周年を迎える前にこの国は傀儡国家となる」

ヴァルツ海軍元帥も葉巻を吸ってはいたが、むせてしまい、同時にポキッと折ってしまう。ヴァルツ元帥ですらこの状況は想定外かつ致命的なのだと自分は理解し、一旦双方が作戦プランを練るように仕向けようと思った。

「軍務省と共同で戦略プランの大規模見直しを自分から提案します。今会議しても答えは出ないかと」

「私も同意だよ。ドルヴォーフ、同じ大学の仲だ。帝国のために尽くすぞ」

ヴァルツ海軍元帥のその強い言葉と覚悟を持った発言にドルヴォーフ閣下も応える。

「同然だ、同期。我々はこの国と大地を……国民と陛下を守るために如何なる戦略も考える」

ドルヴォーフ閣下も葉巻を吸い終わり、会議は解散され、自分は陛下の部屋に入り、この事を伝える。

陛下はただ一言「分かった」とだけ。これ以上陛下を気負わせる訳にはいかない。帝国の未来そして陛下の立場と……笑顔の為に自分は再び最初にお世話になった図書館へと向かった。


引き続き黒井冥斗です!2正面作戦というと第二次世界大戦が個人的には印象的ですが正直2正面で自分の国の何倍もある戦力とやり合うのは自分が軍部高官なら病んでしまうかもしれません…

果たして2正面軍事作戦は現実のものとなるのか!?それとも打開策はあるのか乞うご期待!

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