第50話:吸血姫の執事はどう頑張っても夜勤込み
どうやら2日半寝ていたらしく、その間に連邦軍の要塞線は壊滅し、僅かに生き残った連邦兵達の戦意は完全に喪失していた。
「おーい、生きてるなら音を出してくれ!」
帝国兵の1人が叫ぶ。
すると吹き飛ばされた武器庫から、ゴンゴンと音が聞こえる。
「要救助者確認!斧持ってこい!」
「了解です!」
俺は助かったのだ。帝国軍の流星群のような兵器の攻撃で死んだと思っていたが、武器庫はちゃんとした金属で出来ていて、守れたらしい。一緒に担ぎこんだ服従の魔眼に支配された兵士も、魔眼は解除されていた。
「あ、ありがとう」
「礼なんかいいんだよ。同じ連邦の吸血鬼だろ?それと帝国の皆、我々は投降する」
次々と土に埋もれた遺体やギリギリ生きてる連邦兵を救出してる最中で、自分は指揮揚陸艦に戻って、レイヴァス戦闘軍の指揮官としての任務を果たす。
情報管理が得意な帝国国家保安局第2課の課長がノックして、訪れる。
「連邦軍は完全に瓦解し、ほぼ全ての生存した兵士を救出、人道的概念に基づく保護を行いました」
自分は分かった。と告げて、聞きたかった言葉を待つ。
「連邦は既に総戦力の半分以上を喪失したと見られ、先程鮮血の歌姫アイレアス・ノストリターン総書記も講和の姿勢を見せているとの事。少なくとも閣下が寝ている間に72時間の停戦条約が結ばれ、壊滅した連邦の医療・食料インフラの支援を帝国の民間団体が行っております」
「そうか……ならよかった。陛下に会いたいな」
「それでしたら……」
第2課課長が言い終わる前にドアがドンッと開き、課長はドアに強打され、陛下が心配そうに駆け寄る。
「レイヴァス!お前と言うやつは!お前と言うやつは!……どれだけ私を心配させたと思っているんだ!この、大バカ者!」
陛下は強くも優しくポンポンと自分の胸を叩く。
陛下を抱きしめて、「申し訳ございません」と謝る。
「謝るくらいならもう、こんな無茶はするな!……さぁ、侍従長としての仕事が待っているぞ!」
「夜勤込みですか?」
陛下は先程までの泣き顔から笑顔で答える。
「もちろんだ!」
「やっぱり吸血姫の執事は夜勤込みなんですね!」
そのまま帝国城へ、戻ると代行で国王を務めていたヘルシア閣下が叙勲式を行うと伝えて、翌朝まで王族姉妹に挟まれて、優しくて、温かく、やらわかい感触に包まれ、翌日叙勲式を陛下とヘルシア代行閣下の両名が行い、国中の閣僚や中央貴族そして、レイヴァス戦闘軍幹部に見守れる中で行われた。
「これより、叙勲式を行う!レイヴァス、前へ!」
「はい!」
陛下とヘルシア代行の前に立つと、2人から同時に言われる。
「貴官に特級英雄鬼剣付き勲章及びアルスヴァーンの苗字を与える!これからは侍従長でもあり、大切な家族だ!命は無駄にするな!」
ヘルシア代行も珍しく、強い口調で指示をする。
そして、「「これはご褒美だ」よ」と2人からほっぺにキスしてもらい、再び侍従長として、そして王族の1人として国を支えていくと誓った。
再び、侍従長として侍従本部に向かうと全侍従達が敬礼し、自分も敬礼を返す。
「さて、仕事溜まってるよね?ハレルオン副侍従長?」
「えぇ、2ヶ月後の帝国成立祭1500周年の準備と連邦軍との講和条約締結があります」
どうやら、しばらくは夜勤は避けられないらしい。
「では、皆。自分は王族にはなったが今まで通り接してくれ!そして帝国に尽くすぞ!」
「「「了解!」」」
そのまま成立祭に向けた食事や手紙の準備をしていると魔導通信機から連絡がかかる。
「もしもし、レイヴァスです」
「ご無事で何よりです。ヴァルツです、実はレイヴァス戦闘軍についてご相談が……」
すっかり忘れていた……いくら戦場と訓練で共に叩き上げ、叩き上げれた仲間を忘れてしまうとは……
「えーと相談と言うのは?」
「レイヴァス戦闘軍のみ、講和条約締結後も帝都防衛戦力として残しておきたいのです」
「それってつまり……」
「王家直属の最精鋭近代化戦闘軍レイヴァス護衛軍になります。そして特務中将から帝都を守る最精鋭になるので私から陛下に相談して、階級は元帥が適切と判断しました。それでは」
ハハッ……これからも夜勤の連続だぁ……
こんばんは!黒井冥斗です!いつもご拝読ありがとうございます!そして記念すべき50話です!今までたくさんの方に読んで頂いたことを改めてお礼を申し上げます。さて、あと2日か3日くらいで吸血姫の執事シリーズのシーズン1は終わると宣言しておりますが次の作品の「この少女、僕が買います」はローファンタジーのかなりミリタリー強めの作品となっております!軽いあらすじとして特殊部隊の父に育てられた主人公スリザイアは学校にいる間に家を爆撃され、独り身となった彼は父から教わった技術を活かして傭兵になる道以外はなかった。そしてそこで様々な依頼や出会いが待ち受けている!という作品です!ほぼハーレム物の作品なのでラノベ感を楽しみつつもミリタリーも楽しめる一挙両得でお送りしたいと思ってます。それでは皆さん、これからもご支援よろしくお願いいたします!




