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第5話:女王陛下の血液は蜜の味?

城に着き、侍従本部で正式な与剣式が行われ、この時ばかりは陛下も真面目な顔で真面目に言葉を紡ぐ。

「レイヴァス侍従長を正式な侍従長兼傍付き護衛として認め、ミスレイア・アルスヴァーン女王の名の下に契約する」

自分はドキドキしながら剣を受け取ろうとしたら箱から剣を取り出す。自分が開けてビックリ!じゃないのか、それとも何か意図が?

「代々侍従長が傍付き護衛になる際は君主の血を飲む事が定められている。よって、私の血を飲め」

陛下は紅い剣身でクラシカルレイピアと呼ばれる戦闘用のレイピアを取りだして、自らの指を軽く切る。その滴る血は一滴一滴が自分は人間のはずなのに蜜のように思えた。

「さぁ、飲みたまえ」

「あ、あの……しゃぶる感じですか?」

「構わん。レイヴァスの好きなように飲め」

自分は心の欲求のままにしゃぶりつき、血を少しづつ体内に取り込む。味は本当に蜜のように甘く、脳が麻痺しそうな不思議な感覚も感じた。

しばらく吸っていたら……

「いつまで飲むつもりだ!」

と言われ、我に返ると蜜は取り上げられてしまった……

「全く赤ん坊の吸血鬼でもそこまで残念そうな顔はしないぞ。とりあえずこれからもよろしく」

「はい!陛下の為にご尽力させていただきます!」

そのまま陛下は侍従本部を出ると他の侍従達から声をかけられる。

「陛下の血って本当に美味しいですよね……」

副侍従長のハレルオンが言うとラミーナ侍従も「分かる〜」と答え、どうやら老若男女の吸血鬼問わず、陛下の血は美味らしい。

「正直自分もあんなに美味しいとは思わなかった……なんか安心するというか眠たくなるというか……」

「人間の侍従長閣下もそう感じるとは……恐れながら陛下の血は魔性の血ですね」

ハレルオン副侍従長も恋しそうに語る。

「さて、仕事モードに入るよ……ん?なんだこの赤い書類」

「閣下、それは御前会議の議題テーマと質問事項です」

有能なハレルオンが答えてくれる。どこかの誰かが持つべきものは優秀な部下とはこの通りなのだろうか。

「え、確か御前会議って明日だよね?」

「はい、残り16時間です」

「間に合わなかったらどうなるの?」

ハレルオンは顔を青ざめて答える。

「陛下の事ですから……市中引き回しにされた後に『私は仕事を終わらせられない無能者です』というマジックインクで顔を含めた全身に書かれて、解任かと……」

「マジックインクって何年経っても落ちないインクだよね?」

「はい……」

一瞬亡命も考えたがまだ初給料すら貰ってないのに行く宛てもない。ならば乗り切るしかない。

「皆、力を貸してくれ」

「「「はっ!」」」

副侍従長の前で自分が開封すると内容はパラディンズに対する帝国国家保安局の態勢の見直しについてと第二次人類吸血鬼覇権戦争を想定した戦略予備の確保、陛下の私物管理の3項目だった。

「前者二つは分かるんだけど、陛下の私物管理って何?」

自分の質問にラミーナ隊長が答える。

「私から説明させていただきます。陛下へのプレゼントです。陛下はこれでも毎日莫大な書類に目を通した上で書類に印鑑を押しています。公にはまだ顔を出すのを嫌がりますがその分書類仕事はこなしています。なので我々侍従からもそれを認めるというプレゼントです」

なるほど、非常にわかりやすい。要するに苦労を労うわけだ。

「ありがとう、プレゼント選びは……」

全員こっち向いてる……

「分かった……今から買ってくる……」

早速賜ったクラシカルレイピアを提げて、帝都へと赴く。今は昼下がりである程度日光に耐性のある吸血鬼には問題ないレベルだった。

「陛下の好きな物ねぇ……」

下手なものを渡せばろくな事にならないのは目に見えている。

一旦休憩のために喫茶店に入り、香り深いコーヒーの香りを感じながら、血液とラズベリーのソースがかかったパンケーキとコーヒーを味わう。

「ふぅ……やはり陛下の血と比べると不味いな……だが貴重な税金で喫茶店でゆっくりさせてもらうんだ。文句は言えん」

誰も聞いてない独り言を呟きながら考える。カウンターを軽く見るとお子様向けコーヒー豆という物があった。

「これだぁ!!」

周りの吸血鬼さん達と周囲の少数の人間が痛い視線を当ててくる中で最高級のお子様向けコーヒー豆を買って、城内にウキウキで戻る。

侍従本部に入ると副侍従長が血相を変えて土下座する。

「陛下が早くプレゼントが欲しいと電報を沢山送ってくるんです!何とかしてください!」

「ちょうど良い物を見つけたから渡してくるよ」

侍従本部が安堵のため息に満たされ、自分は陛下にプレゼントを持って参りましたと門番に伝えると入れ。と一言陛下に伝えられ、入室すると陛下はベッドに座りながら問うてくる。

「早くプレゼントを渡しなさい」

「こちら南アルファイア山脈産のお子様最高級コーヒー豆になります。陛下はまだ苦いのは苦て……」

ぬいぐるみが自分の顔に強烈なダイレクトアタックをかます。

「私はちゃんとした大人のコーヒーが好きなの!どうして分からないの!?」

「も、申し訳ございません!人間感覚で考えておりました……」

奪い取るようにコーヒー豆の袋を取ると香りを嗅いで、一言。

「お子様向けみたいだけど味は良さそうね。疲れを解したい時に頂くわ。では、御前会議の資料待ってるから。遅れたら市中引き回しね」

「……はい……」

そのまま侍従本部に戻り、再び徹夜での資料作成、最近知ったが侍従本部は無休日不夜城と呼ばれてるらしい。暇な部署の話はもはや欠片も残ってなかった。

吸血鬼らしさのある回になったと思います。個人的な偏見ですが血を与えるというのは契約や儀式で用いられるイメージが強いですね。そして血液に夢中になるレイヴァス侍従長は何かあるのか今後の投稿にご期待ください!

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