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第49話:精霊の聖者VSカルイアの王族

恐怖と戦いながら精霊の聖者の元へ、確実に1歩ずつ進む。その時だった、流水の剣が自分の反射神経ギリギリで回避し、自分も剣を抜く。

「あらぁ、初撃で決めようと思ったのに」

白い修道服は土や泥で汚れており、だがその周りには黒いオーラのようなものが漂っている。

「精霊の聖者……!」

「カルイアの王族さんも元気そうね」

互いに武器を構え、戦闘の態勢に入る。

「このままで、いいのだけど、少し聞かせて。カルイアの記憶はあるの?」

「お前には関係ない!」

「少し昔話をしてあげるわ。人類と吸血鬼が争っていた、あの醜い戦争で私もカルイアで、戦った。相手にとって不足は一切なかった。とても強く美しく、私は精霊の力を使い切って、撤退した。だから今度こそカルイアの魂は頂くわ。精霊王に銘じ……」

詠唱をさせまい、と素早く鍔迫り合いに持ち込む。相手は杖、力を加えれば……!

「それが大好きな女王様から貰った剣?私のこの杖も大切な旦那様から貰った杖よ。スーパーオリハルコンって知ってる?」

スーパーオリハルコン、聞いたことはある。オリハルコンの中でも特に希少価値が高く、そして硬度も柔軟性も操りやすい。まさか!?

「気がついたようね。この杖はスーパーオリハルコンを使っているの!」

突然、杖の下の部分から、刃物を取りだし、聖者は片手で剣を押えつつ、自分の肩に刃物を刺す。

自分に激痛と熱に似た痛みが肩から全身に広がり、剣は落とさないようにして、距離をとる。

既に痛みで、意識が朦朧として、剣を落としそうだった。だが、これは陛下が信頼の証でくれた大切な剣だ。落とすわけにはいかない。

「さてと、カルイア王族の話も聞けなかったし、あなたには死んでもらうわ」

「な、舐めた口を……」

戯れ言をかます彼女は先程の血が着いたナイフを自らの心臓に刺す。

ぐはっ!と言い、口から血を吹き出すが、笑っている。

こいつも主神の加護の人間離れした回復力が……

「死霊王……もういいでしょ、契約は成立してるわ。彼の人間を殺して……」

何を馬鹿な事を……と思ったその時だった。突然自分は吐血して、胸に激痛が走る。

「お前……何を……?」

「ヒューマンオブマーダーよ。あなたには分からないでしょうね。さてと私は主神の加護で回復したし、真の化け物になる前にあなたを殺すわ」

自分の意識が既に大きさにすれば数ミリ程度なのは分かっていた……だから!

鬼王の執念を飲み込む。

だが、遅かったのか、自分の意識は戻らず、陛下に心で詫びる。侍従長として、独占するとも約束して、約束通り生きて帰ると約束して、全て破って死ぬんだ……

完全に意識を失う、直前自分は地面に倒れるのを自覚した。

「もう、おしまいね。さて、人間としての魂の味は……ない?」

おかしい、彼は死んだ。少なくとも人間としては死んだ。

すると彼は立ち上がる。

フラつきも、剣を握る手も、そして真っ赤なカルイアの瞳も全て人ではなかった。

「亡国の王族は死霊王とも交流がある。知らなかったのか?」

明らかに声質と覇気が違う。あの時よ、あの時のカルイアの王族だわ!

「ふふっ!あなたもオカルトマニアだったのね」

「1つ教えてやる。国が亡びる時は王も滅びる時。だが王だけ生き残ったとしたら?」

私は興奮を抑えきれずに答える。

「簡単よ!死ねばいいんだわ!!」

刃物と杖を両手に持った、聖者を見た吾輩は、静かに答える。

「民の仇を討つことだ」

聖者が走ってくるが、吾輩は陛下から頂いた剣を複製の魔眼で7本コピーし、詠唱を唱える。

「カルイアの主神よ、我がレッドヴァーンに力を」

聖者が刃物を刺そうとした瞬間、剣は爆発的速さで、聖者に襲いかかり、聖者は杖と刃物でギリギリ弾き返す。

「フフっ!第二次聖者アイリオーンとカルイアの王族の決闘を始めましょ」

彼女はそう言うと死霊の力を集めてるように見えた。だが何一つ問題ない。何故なら吸血鬼は死霊を従える存在でもあるからだ。


「死霊達よ、そなたらの苦しみを今!カルイアの血を持って、亡き亡国へ、新たなる国へ導く!我らカルイアは英雄として戦った貴殿らを賞賛する!」

精霊の聖者は何を言ってるのか、分からなさそうにしていたが、刃物を落とす。

「何故……?何故魂が離れていくの?私の!私の奴隷達が!!精霊の聖者として銘ずる!魂よ戻れ!!……来ない……」

聖者は落胆し、膝から体を崩す。

「許さない……絶対に許さない!私が何百年もかけて集めた魂を!死霊達を!」

「お前のその考え方が死力を尽くした、英霊達に見捨てられた……その考えも分からずに精霊を使役し、魂を弄んだとはな」

今度は彼女はクスクスと笑い出す。明らかに狂ってる状態なのは吾輩から見ても明らかだった。

「精霊王!私の力、魂!全て捧げるわ!だから、今だけ全ての力を!

寄越せ!!」

吾輩の目には映る。精霊王が彼女に憑依したのか。

「汝、カルイアの王族レッドヴァーンよ。貴様の血は貰う」

すると精霊王は、伝承上の存在だった伝説の聖剣『精霊の皇刃』を自らの胸から取り出す。その異様な光景を普通の人が見れば卒倒するだろう。

「精霊王、吾輩の国をかつて滅ぼした所以は忘れてはいないぞ」

精霊王は黙ったまま、聖剣を構え、一撃でケリをつけるつもりか、上段下ろし切りの体勢に入る。

「今度こそ、民と兵の仇を取るぞ」

ほぼ同時に前に、地面が砕けるほどの足踏みと同時に、剣と剣がぶつかり合う。

「所詮は汝の剣は聖遺物でも、伝説でもなんでもない!簡単に粉砕してくれるわ!」

「この剣は我が主神から頂いた、信頼の証!粉砕し、折れるものなら折ってみろ!」

その時吾輩の記憶に、レイヴァスのミスレイア陛下の記憶が過ぎる。あぁ、彼はそんなに彼女のことを。ならば血の引き継ぎをしたとは言え、この剣は折れないな。

「吸血鬼の主神よ。種族の長よ。私に大切な者を守る力を与えたまえ!」

その時、レイヴァスの剣が光だし、聖剣にまとわりつく。

「お前……種族神の力を!?」

そのまま、聖剣は聖なる力を種族神から、レイヴァスへ、そこから剣に流れ、精霊の皇刃はバキン!と折れる。

「とどめだ……」

精霊王と化した、精霊の聖者の心臓に不癒の致傷を負わせ、精霊王の反応は消える。

戦いは終わった……

暗闇の中で自分は寝ているような感覚でいた。

「なぁ、レイヴァス。まだ生きてるだろ?」

自分は問いかけられ、暗闇の中で自分とよく似た吸血鬼と相対する。

「死んだと思ってました……このまま地獄行きですかね?」

「そう死に急ぐな。お前には守るべき、大切な存在がいるだろう?鬼王の執念の力で、なんとか、生きれるくらいまでは回復させておいた。ただし次は無いぞ」

そして自分が目を開けると、戦場の救護室のようなところだった。

「特務中将閣下!ご無事で何よりです!」そんな声が響き渡り、ひとまず陛下との約束を守れた事を安心し、皆に一言。

「待っててくれてありがとう」

そのまま、少し長めの眠りにつく。


こんにちは!黒井冥斗です!最近時間感覚がバグり初めて、深夜から早朝、午後から夕方という執筆をする日も増え始め、生活に支障を来たしてますが本当に疲れたら勝手に眠るので大丈夫でしょう。さて、療養をして書き始めた小説の処女作に当たるこの吸血姫の執事シリーズも本当にあと数話でシーズン1が終わると思うと感慨深いものがあります。皆様もごゆっくりご拝読してもらって構わないので、よろしくお願いいたします!そして今夜は記念すべき50話記念をお送りします!(と言ってもレイヴァスが目覚めた後の話と後書きで次回作の宣伝ですが…)

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