第48話:決断のロケット弾攻撃
連邦軍要塞線 夜間
カンテラを持った1人の正規兵が元書記長の魔眼で支配された兵士達に目をやる。
祖国のために……とブツブツ言っている姿は味方ながら気味が悪いものだ。そのとき魔導通信機に連絡が入る。
「急報!魔導通信盗聴に感あり!謎の新型艦は要塞線海岸付近に接近中!」
「おい!お前ら民兵も塹壕に入れ!その方が生き残れるぞ!」
それでも彼らは祖国のために……と呟くだけだ。
「あぁ、クソっ!」
一人一人を持ち上げ、塹壕に入れていく。こんな事して命を落としたら洒落になんねぇが、見捨てたくねぇ!!
その時、気分が悪くなるほどの轟音と共に夜空を見上げると、夜の明かりになる程の細長い流星群がいくつも見える。それらは要塞司令部に次々と向かっていく……
「なんだよ……これ……」
その時だった、視界が真っ白になるほどの光の後に要塞司令部周辺が真っ赤に燃え上がる。匂いこそ無いが突然、強い暴風に押され倒れてしまう。
「ば……爆風……?」
すぐに魔導通信機を取り、連絡を図る。
「司令部!応答しろ!司令部!」
司令部の通信感度はゼロを示していた。
そして遠からず、願ってもない、むしろ断固としてお断りだがこっちにも来るだろう。すぐに1人でも多く救いたいと思い、1人を担ぎ、金属製の武器庫に立てこもる。
そして強力な睡眠薬を飲み、死ぬなら意識なくと願い、眠りに落ちる。
数十分前連邦軍要塞線西海岸にて
流星に乗った船員達は最終チェックを完了させる。
「艦長いつでも行けます」
「了解した。元帥閣下の最後の下命を確認する」
通信は繋いだままだった事もあり、私は発射の下命を下せば本当に何百万人が死ぬと思うと判断に悩みが出る。最後に、初めての艦隊戦のまだ砲術長時代の艦長の帽子を眺める。彼は言っていた。軍人は命を奪うと同時に命を守ると。そして守ることが何よりも大事だと。ここで撃たなければ大勢の国民や兵士が死ぬ。自国民を守るならこれが最善択だ。
「今より新型兵器超音速ロケット弾大規模破壊弾頭の使用を許可する。使用発射数は無制限、全弾撃ち尽くせ」
それを言うと、艦長から承知しました。と伝えられ、ロケット弾特有の発射轟音が鳴り響くのが聞こえる。私は耐え切れなくなり、通信を切る。
「こんなモノ……同種族間では使いたくなかった……」
娘には伝えられない……こんな大量殺害の命令を下した父親など誇れるわけが無い。そう思うと、もう父親でいることすら、嫌になる。
その時だった、ゆっくりと執務室のドアが開き、娘が顔を出す。
「お父様、安心してください……私にとってお父様は誇りです。国家を定年まで守り続けた英雄です」
「すまんな……もし、学校でいじめられたりしたら……」
すると娘は私に抱きつく。
「いじめられても、お父様が居なければあなたのお父上も死にますよと返してやります。だからお父様……涙を流さないでください……」
「あぁ……あぁ……!!」
私は娘を強く抱きしめ、絶対に守りきると誓った。
同時刻連邦軍要塞線 司令部では
深さ30メートル程までえぐられ、通信機能・盗聴機能も全て喪失。さらには衝撃で本土との地下通路も崩落。
最深部の深さ20m程度が残ったが閉じ込められた。
爆音が頭から離れない……あの帝国は大量殺戮を実行したのだ。
議長の私は助かる道を考えていた。
「精霊の聖者殿、崩落物を退かす方法とかは?」
精霊の聖者はクスクスと笑いながら答える。
「なんて多くの死霊!素晴らしい!!これなら……精霊王に銘ず、全てを吹き飛ばせ!!」
そう唱えると彼女周りからつむじ風から竜巻へと変わり始める。
「貴様!俺ごと殺す気か!?」
「これって死霊の力を多く使うのよ。あなたも頂くわ」
私は自決用の拳銃すら吹き飛ばされ、遂には風が天に向かって貫く。
「はぁ〜スッキリした。怯えてるわね、帝国兵の皆さん」
まだレイヴァス戦闘軍の要塞攻略師団群は来てなかったがそれでも十数キロメートル離れてても感覚でわかる。
「レイヴァスもやはり来たのね……カルイアの血は頂くわ!」
レイヴァスも薄々感じていた。人間の自分では勝てないと……あの天を貫くほどの竜巻を見れば分かる。
「師団群全部隊へ、要塞線中央部は自分だけで行く」
陛下から頂いた剣を強く握り、鬼王の執念を手に取る。連絡要員からは最悪破壊欲に支配されると……だけど自分では分かっていた。陛下が居てくれる限り、破壊欲には飲み込まれないと。
こんばんは!黒井冥斗です!いつもご拝読ありがとうございます!この吸血姫の執事シリーズも残り数話となりました。もし昔の話から見てくださってる方が居たら特に感謝したいです。もちろん新しく見てくれた読者様にも感謝は絶えません。
今日は夜ゲームをするので早めの投稿です。皆さんも夜更かしのし過ぎにはお気を付けください!それでは、良い夜を!




