第44話:陛下の気持ちと戦場で飲むコーヒーの味
帝国城 女王陛下私室にて
私は寂しかった。あの変態だけど優しくて、真面目で素直なレイヴァス侍従長が居ないとこんなにも寂しいなんて……窓を見ると既に月が上り、帝都の灯りは疎らに見えた。レイヴァスと会った年を過ぎ、年始の寒さを感じながらの眺めだった。
レイヴァスから貰ったこのネックレスは私の宝物であり、誕生日に貰ったこの剣は信頼の証……二つを抱きしめる。
「レイヴァス……早く帰ってきなさいよ……」
こんな戦争さっさと終わってほしい。早く、早く彼に会いたい。
つい想像してしまう、彼が笑顔で帰ってくる姿を……
するとコンコンコンとドアがノックされる。
「おねーちゃーん?いるー?」
「ヘルシアか、入れ」
ガチャとドアが開くと、そこには愛する妹がぬいぐるみを抱かえたまま、少しだけ寂しそうにしていた。
「ヘルシアもレイヴァスに会いたいのか?」
「……うん、お兄ちゃんすごく勉強できるから。でも聖夜祭の日にネックレス貰えなかったのは寂しかったなぁ……ん?お姉ちゃんそのネックレスって!?」
私は自慢げに語る。
「そうだ、私はもうレイヴァスのものだからな」
ヘルシアは頬を膨らませ、ちょっと怒る。
「お姉ちゃんずるいよ〜!もしかして魔眼使った?」
「んなわけないだろ!……使おうか前日まで悩んだが……」
そう、私の魔眼は魅力の魔眼。相手の理性や思考を壊すくらい魅力的に見せる事が出来る単体での戦いなら上位にはいる魔眼だ。だがレイヴァスには使いたくない、彼には彼の本心で付き合いたい。
その気持ちが強く、そして信頼できたから使わなかった。
「ヘルシアはそのぬいぐるみ……あまり見た事が無い気が……」
「えへへ、レイヴァスお兄ちゃんがネックレスの代わりってくれたの!」
あの変態侍従長め……姉妹に手を出したか……
「なぁ、ヘルシアよ。そなたは王になる覚悟はあるか?」
ヘルシアは足を止め、振り返る。その表情は覚悟に満ちていた。
「お父様とお母様……記憶には無いけどお姉ちゃんから聞いてるよ。とっても優しい方だって……だからそんな王になるよ!」
「あぁ、ならば良い」
2人の王の姉妹は共に夜景を眺めて、これからの帝国の未来を語り合った。
その夜、レイヴァス戦闘軍要塞線攻略師団群は小雪が舞う中で作戦指揮所を立ち上げ、数ヶ月前まで野菜売りや経理の吸血鬼だった民間吸血鬼が非常に訓練され、統率された部隊として、斥候としてでも動き始めていた。多数の書類と図上を囲む将兵らの顔は決して良いものではなかった。
攻略師団群長のハーメルン中将は書類を睨むように眺めながら、他の幕僚と作戦を練っていた。
「中将閣下、恐れ多きながら、敵は死を恐れず、雑多な銃火器で抵抗しつつも壊れたら銃剣突撃してきます。そして我々はそれを200個師団相手にしなくてはなりません」
他の幕僚も意見を申し上げる。
「雑多と言っても銃火器や戦車のような代物に限ります。ですが、命中率を無視した迫撃砲等は非常に脅威であり、要塞砲にあたる155mm榴弾砲に関しては効果的に命中率を上げております」
そう言った幕僚はコーヒーに口をつけて、むせ込む。いつも砂糖を入れる将兵ですら、この状況は緊迫している。
攻略に当たるのはレイヴァス戦闘軍の中でも精鋭の20個師団軽装歩兵13個、軽砲兵5個、自動車化師団2個。元々塹壕と要塞の攻略のため軽装歩兵の方が有利ではある。
ハーメルン中将はしばらく、コーヒーを飲みながら決断する。緊張か寒さかその指は震えていた。
「軽装歩兵3個を軽砲兵5個の護衛に着けて、全残弾を使い切った後に分散して戦線を広げる。自動車化師団は救援と医療に徹して、必要に応じ、各種弾薬を送る」
「「「!?」」」
「閣下!無茶ですよ!」
「そうです!いくらこの師団が優秀といえども各個撃破のリスクが!」
「なら、問おう。20人で200人1対1で戦い続けるか4人に分けて50人と戦うか、どっちがいいと思う?」
幕僚達は困惑する。確かに今の状況は前者だが後者でも勝ち目が……
すると1人の幕僚が挙手する。
「それがもし、近代戦であれば軽機関銃手や狙撃手など役割分担で少しでも勝利に近づきます」
中将はニヤリと笑い、そういうことだ。とと言う。
攻略師団群本部では……
本部内は笑い合う兵士達の声や撃たれた箇所に消毒液を塗られて、痛い!と叫ぶ兵士、中には本来はレイヴァス戦闘軍は規律維持の為に飲酒は禁止だが少しだけ飲んで、顔を赤くしてる者もいるが、憲兵は見て見ぬフリをする。
攻略師団群の一人である唯一の女性兵士サティーナは自分の使う塹壕突撃銃の整備に勤しんでいた。パーツ1つ1つを磨きあげ、可動部には丁寧に油を塗っていた。火薬臭いパーツなど女性は好きじゃないのは分かっているが私にはお父さんの匂いと同義である。
「サティーナ民兵兵長、お客様だそ」
「は、はい!少尉殿!」
私はすぐに立ち上がり、敬礼する。身に堪える寒さの中でピシッと背筋を伸ばすのは正直辛い。
すると青い髪の戦場には似つかわしくない綺麗な服装に加えて、優しい瞳を持つ。男性だった。新聞でよく見るレアランド総帥に見えなくもないが……
「君がサティーナさんだね。少し取材してもいい?」
「はっ!構いませんがお名前をお聞きしても?」
彼はおっと失礼と言い、頭を下げる。
「レアランド・エルヴォーナ総帥です。身分は関係ありません。今のこの状況ではあなたの方が上官ですから」
私ははわわ。と慌てつつ、あの重工業と造船界を取り仕切る旧アベルロード財閥の新しいご子息様が何故戦場にと……
「え、えーと私は……何をすれば……?」
「武器の手入れを観察させて欲しい」
「は、はぁ……」
緊張しながら、私の父親は元軍人という事もあり、それも現場での発明家と呼ばれたほどだ。その時代から塹壕突撃銃は強力な兵器として、使われていたので素早く装填する為に1本のチューブにまとめてある。つまり、1発ずつ装填するのでは無く、5発同時に銃の中に装填するのだ。私はこの発明を見た時にお父さんは凄いと思い、私はそれを弾種毎に分けている。
「へぇ〜面白い装填方法だね」
「父が軍人だったので……」
私はしっかり排莢されるか、試験動作をさせた後にレアランド総帥に聞いてみる。
「何故、こんな危険な戦場に?」
「大切な人探し……かな。戦場で戦い、愛国心や仲間や家族の為に戦う女性とお付き合いしたいと思ってね」
私は彼がここまで民兵に気を配るとは思わず、私も負けてられないと思った。
「よろしければ等級は低いですが普通のコーヒーなら出せますけど……」
「うん、頂こうかな」
私は少し気を利かせて、今は戦場では弾薬並みに貴重なクリームを取りだして、ウィンナーコーヒーにして、お出しする。
「こんな貴重な物を……ありがとう。君は優しいね」
「総帥閣下こそ、戦場の現場を知ってくれようとするのが私にも嬉しいです」
二人で夜遅くまでコーヒーを楽しみながら、武器の手入れをしていた。指も凍るような寒さの中で温かくもほろ苦いコーヒーとクリームの甘さは戦場の辛さを忘れさせてくれた。その時にこの師団群には女性は私だけですよ。と答えるとえ?そうなの?と可愛らしく反応してくれた。そこで私は決めた。この戦闘を生き残り、またレアランドさんに会えたらお付き合いを考えようと……
長くなりましたが、このシーンを書いていた時は集中モードで区切りが付けれなかったんです…
そして、いつもご拝読感謝します!近いうちにサバゲーに行く予定なのですがコーヒーメーカーがあるそうなので疑似戦場気分でコーヒーを飲もうかなと思っております。ウィンナーコーヒーに関しては軽い思い出があり、今までの人生で1番贅沢なお正月を過ごす時に刺身とローストビーフを市場から買う際に早朝から家族について行って喫茶店で飲んだ記憶が鮮明に残っております。この小説が皆様にとって、そんなコーヒーである事を願います。そして宣伝にはなりますがブックマークとレビューは大変励みになりますのでぜひ、面白ければ気軽にして頂けると嬉しいです!それでは、良い週末を!




