第42話:失血死寸前の弾薬事情
流石軍務管理部第2課と言うべきか……噂程度で聞いていたが統計学から情報管理、文章整理など中間管理職必須技能が詰まっている。
我々が仕事を教えたら数分で覚え、我々が数時間以上かかる仕事を1時間弱で終わらせる。これが帝国大学のエリートか……元会社員とかの経理の我々とは大違いだ。
「課長殿、我々第2課の他の業務は?」
「えーと……各師団長にこの書類を分かりやすくかつ必要な情報を送ってくれ。相手は元民間人だから専門用語は控えめに」
すると第2課の課員はかしこまりました。とだけ言うと即座に各課員に師団長を割り振る。と同時に第2課の課長への報告。
恐るべき管理能力……
「師団の兵科と可能な限り経歴を確認した上で必要な情報を分かりやすく伝えろ」
第2課課長が言うと課員は了解。と軽く答え、再び1時間半ほどで完了させる。
もはやレイヴァス戦闘軍の情報担当官達は役ただずではないが業務遂行能力では天と地の差があり、人材としては離したくなかった。
私はすぐにレイヴァス特務中将閣下に連絡を入れて、なんとか引き留めるよう交渉を依頼する。レイヴァス閣下も能力は認めたようで女王陛下に連絡を入れると帰ってきた。
帝国城 女王執務室
帝国国家保安局長官とミスレイア陛下が対面で話し合っていた。
「長官、貴殿の指示なら彼らも喜ぶだろう。第2課をしばらくレイヴァス戦闘軍に置かせてくれ」
長官は頭を掻きながら、悩む。
「あの部署はうちの虎の子でして……渡す訳には……」
その時陛下の論破モードに突入をしたのを長官は肌で感じた。
「おかしいな……その虎の子が要塞の監視しかしておらず、あまつさえ賭けをしていたと聞いているのだがなぁ……?」
長官はビクッとして、第2課の特に優秀な5名の経歴書を出す。
とても輝かしい経歴であり、陛下は次の論破点を見出した。
「これだけ優秀な人員を……」
「これだけ優秀な人員を、ただ要塞線観察に使っていたとはな。人材の無駄遣いだ。お前、不祥事でも起こせばただではすまんぞ」
長官はため息を吐く。
「降参です……優秀だからこそ安全地帯かつそこそこ重要な任務に着かせておりました」
「正直で結構。戦争が終わり次第部署を戻す。多分死なないから安心しろ」
多分、という言葉に私はこの陛下は絶対的な約束は基本的にしないのだと強く感じた。
その頃帝国と連邦軍の境目、要塞線付近では……
「敵の突撃第2波来ます!!」
「迫撃砲部隊は斉射準備!」
と血と硝煙のなんとも息苦しい戦場となっていた。開戦してから6時間以上経過しているが帝国の損耗率は数パーセント未満に対して、突然突撃と砲弾の嵐の中で玉砕を仕掛けてる連邦軍は既に何万名もの遺体を積み上げている。何故パーセンテージにしないのか。簡単だ、連邦軍が多すぎて全容を把握できないからだ。
近くの帝国陸軍作戦指揮所では弾薬の減りが目に見えて映り始めてきた。
兵站部の兵員達は頭を抱え、次に来る補給弾薬は2日後の予定だが、2日間ここに居座ればせっかくの1から育て上げた民間人だった250個以上の師団を失うことになる。
ついに兵站長は覚悟を決めた。
「ドルヴォーフ閣下に防衛ラインを20キロメートル下げると伝えてくる……ここの弾薬は失血死寸前だからな……」
各兵站要員に敬礼で送られ、魔導通信機でドルヴォーフ閣下に連絡をしようとするが、指が震える。作戦局時代では犠牲が出ても必ず勝利を手にする将軍と呼ばれ、陸軍元帥の今は昔よりは物腰柔らかくなったと聞いているが……
「どうした?兵站長」
「元帥閣下、重要な頼みです。戦線を30キロメートル下げさせてください!もう、弾薬は限界です。30キロメートル下げれば予備集積地点から次の補給まで時間稼ぎが出来ます!どうか、現場の命を……!」
「許可する。すぐに下げて、敵を要塞から引きずり出せ」
あまりにも簡単に認めてもらったので偽物かとすら思った。
「本当によろしいのでしょうか!?」
「想定済みだ。それとも他にも要求が?」
私は慌てながらも、感謝の言葉を述べて、作戦指揮所に戻る。
「30キロメートル後退が許可されたぞ!」
「本当か!?」
軍団長が飛び上がる。
「すぐに予備塹壕の30キロメートルの後退を開始すると各師団長及び幹部に報告せよ」
開戦から8時間、帝国陸軍は戦線を30キロメートル後退し、およそ50万名の連邦兵を要塞から引きずり出した。
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