第40話:史上初の空挺降下作戦と連邦軍の実情
俺は今飛行場と呼ばれる場所にいる。秘匿基地の1つらしく普段山で見えないようになっており、心霊が出ると噂を出して吸血鬼を寄せつかないようにしている。そしてこれから世界初の航空降下作戦を行うメンバーとして選ばれた。その為にこの数週間レイヴァス指揮官と戦闘団のエリート達に死の寸前まで鍛え上げられた。
時間は午後4時、冬場のためそろそろ暗くなる。だがほどよい明るさが必要だと降下演習で学んだ。
教官を務めた戦闘団団員がレイヴァス指揮官からの言葉を伝える。
「貴官らは十分に努力した。恐らく冥府の番人も見えただろう。だがここからが冥府と直接相見える時だ。必ず成功すると自分は確信している。我らの平和のために。との事だ!貴様らは徴兵されてからたった1ヶ月半でレアノール皇国の第零師団に匹敵する力を得た!もはや連邦軍など虫けらのようなものだ。だが油断はするな!それは勝利でも、理想でもなく、お前達が生きて帰るためにだ!分かったか!?」
「「「サー!イエッサー!」」」
俺達選ばれた100人はそれぞれ指定された輸送機に乗る。基本的にはペアで行動し、魔導高度計などをチェックし合う。俺は強行偵察班の副班長として大学中退の班長の装備を見過ごしなく、指差し確認でチェックする。降下後は素早く偵察と、湾岸の沿岸砲地帯を無力化し、ゴースト・イーグル戦闘団が上陸しやすくし、その後レイヴァス戦闘軍が上陸する。その流れは事前に伝えられた通りだ。機内窓を見るとまだ夕焼けが僅かにこの金属の鳥を照らしていた。
すると操縦士の機長が大声で指示を出す。
「降下まで残り2分を切った!作戦の成功を祈るぞ!」
すると大学を中退してまでも徴兵に参加した俺達の班のリーダーが答える。
「全員で勝利を勝ち取りましょう!」
「「「うおおおおぉ!!」」」
そしていよいよ、ランプが赤から緑になる。
するとウィーーンという音と共にハッチというドアみたいなものが開き、冷たい風が機内を満たす。上空2500メートルでの降下だ。太陽には背を向けてるので月が少し顔を出している。
「降下地域クリーン!GO!!」
教官の合図と共に次々と洗練された新兵が空へと降り立つ。
「いいか、今から無線封鎖だ。破ったら終わりだぞ」
と最後の通信が教官から魔導通信機で連絡が入る。
怖くて目を瞑っていた俺だが、目を開くと薄暗い日暮れながらも太陽が沈みかける海上と闇に包まれた森、沿岸砲地帯には疎らに兵士が見える。とても美しかった。
そんな余韻に浸っているとパラシュートが開き、沿岸砲地帯から3キロほど離れた地点に降下する。素早く夜間でも見づらい赤い魔術光で合図し、沿岸砲地帯500メートル手前まで移動する。この間は敵に発見されず、自分の運の良さに感謝する。
するとこの100名をまとめる元帝国陸軍中隊長現在は航空機動隊隊長が薄く光る2種類の手旗信号で各チームに合図を送る。
「俺達が先手で過小評価した瞬間を狙う……か……」
「ですね。失礼ながらお名前聞いてもいいですか?もしかしたら死んでしまうかも知れませんし……」
「俺か?俺はエルヴィーツだ。大学中退のあんたは?」
「僕はミーファスと言います。共に作戦に挑めること光栄です」
そしてこの班30名で自己紹介し合った後に突撃命令が下る。
「なぁ、ミーファス班長よ。俺が先手を切っていいか?」
「え?」
「相手は機銃は無いとはいえ、歩兵ライフルは持ってるやつが10名はいる。若いアンタには死なせたくない。てことでおじさん組突撃!!」
「「「了解!!エルヴィーツ殿!!」」」
怒声上げ、突っ込んでくる俺達を見た連邦兵はビクともしないが撃ってもこない。チャンスだ。
新型のライフルに持ち直して、300メートル先から撃つ。
ようやく相手も撃ち返してきたがどこを狙ってるか分からないほどだった。
そのまま数分間おじさん組は30名ほどを射殺し、沿岸砲を制圧する。
「どういう事だ?」
「おかしいな。このライフル、仮にも連邦の最新が……」
バキンと連邦の最新型のはずのライフルが壊れる。あまりにもあっけなくパーツが折れたため、罠かと思ったくらいだ。
「なんで壊れた?」
「さぁ……?」
おじさん達が話し合ってるとミーファス班長が来て、懐から懐中電灯を取り出し銃に光を当てる。そして小さな顕微鏡のような物で銃の各部を見ながら絶句し、懐中電灯を落とす。
「なんだこれは……」
「どうした班長!?」
俺の声を聞いた時、ミーファス班長は口を手で抑えていた。
「僕は金属学の学部にいたんだけどこんな不良な鉄なんて軍用にならないですよ。しかも構造も堕落し過ぎてる。他の銃も見てみよう」
連邦兵の銃を全て、チェックしたが帝国製とは比べ物にならないほど鉄に混ぜ物がされ、構造もめちゃくちゃ、組み立ても少年用金属模型レベルだがそれすら未完成の領域だった。
「班長!他の沿岸砲部隊も同じみたいです」
ミーファス班長は5秒で判断を下す。
「総員撤退!!」
誰も疑わず、了解!と言い、魔術光要員が素早く撤退を隊長に進言し、沿岸砲地帯から離れる。
「班長どうして撤退を!?」
「外れてたら申し訳ないけど僕達の目的は沿岸砲地帯の無力化であって、制圧運用ではない。それが敵も予見していたら僕なら爆弾みたいな罠を仕掛ける」
その数十秒後の事だった……
各沿岸砲地帯が次々と爆発を起こし、花火のように辺りを照らす。硝煙と物が焼ける匂い、そして耳が痛くなるほどの砲弾の爆発音。不快極まりなかった。
「総書記め……国民兵の命をなんだと……」
俺達は連邦を許せなかった。正確には連邦の上層部達をだ。使い捨てにするようなライフルを持たせ、ろくに訓練もさせない。本当に罠の為の使い捨てにする連邦上層部らの思考はどうなってるのか、俺達は怒りながらも予定通り、沿岸砲地帯を無力化したため、無線封鎖を解除し、まずは戦闘団専用の特殊な魔導通信機で「安全に上陸出来るようにしたので上陸よし、偵察を実行せよ。」と指示を送る。
「班長、助かりました。ありがとう!」
「エルヴィーツさんもご協力感謝します。しかし連邦のこの戦略……血が通ってるとは思えないですね……」
俺は無言で頷いた。
それからしばらくして高速艇の音が聞こえて、次々と迷彩と名付けるべき服装をした部隊と合流し、俺達は輸送艦へと帰る。彼らに希望を託したが同時に連邦への命の使い捨てに怒りは収まらなかった。
ご拝読ありがとうございます!お疲れ様でした!
連邦軍の武器事情は困難を極めてますね…さすがに2000個師団全員にちゃんとした武器を渡すなんて、多分どんな大国でも厳しいのではないのでしょうか。そして吸血姫の執事シリーズseason1もあと少しで一旦終わります。season2の構成も脳内で浮かべながら、より良い作品を読者様に提供できたらと思います。今夜もごゆっくりとお過ごしください




