第36話:最前線で指揮を執る侍従長
聖夜祭を終え、年末に入ろうとした時にヴァルツ海軍元帥が来城し、自分と直接話したいと申してきた。
「ヴァルツ閣下、お疲れ様です。本日は何用でしょうか?」
ヴァルツ閣下は代用コーヒーを飲みながら、軽く咳き込む。やはり味が合わないのだろう。自分も初めて飲んだ時はこんな不味いコーヒーはコーヒーじゃないと思ったほどだ。
「あー失礼。閣下にはレイヴァス戦闘軍指揮官として開戦時に輸送艦から指揮を執ってもらおうと思い、馳せ参じた次第です」
え?前線送り?嘘だと信じたいが閣下は真っ直ぐこちらを見つめる。
「あー……着弾のリスクが無ければ行ってもいいですけど……」
「担保できません。何しろ敵国領海です。速やかに高速機動の船やら沿岸砲が飛んでくるかと」
もしかして死ぬのかな……
「自分が何故行かないといけないか説明願います」
「陸海の統合任務作戦に加えて、歴史上初の空からの降下作戦です。戦闘軍指揮官自らが指揮を執らず、誰が執るのですか?」
はぁ……まぁ、薄々その日が来るとは思ってはいたが……
「陛下からの了承は?」
「それが……」
その時豪華な会議室のドアを、無作法にドンッ!と開け、怒り気味のミスレイア陛下が訪れる。
「ヴァルツ!その件は了承しないと言っただろ!!」
「しかし陛下……」
「しかしもクソもあるか!レイヴァスが行くなら私も行く。こいつ1人に任せたら何かあったらどうする!?」
ヴァルツ閣下は再び、代用コーヒーを飲んだ後に答える。
「それこそ、何かあった時が問題です。陛下、お立場をお考えください」
2人の視線が火花を散らす中で自分が答える。
「陛下、自分は死ぬつもりはありません。元より安全地域かつ通信魔導具の範囲内です。いざと言う時はこちらも高速艇で脱出します」
陛下は自分を睨みながら、覇気を纏い問う。
「死んだら……分かってるな?」
「自分の命運は帝国と陛下の下にあります」
するとヴァルツ閣下が拍手をして、閣下お見事です!と答える。
「ヴァルツ、安全性は最大まで確保しろ。レイヴァスが死ねば、私も死ぬつもりだ。この独占侍従長に独占されてしまった以上一心同体だ。代行としてヘルシアに任せる」
「かしこまりました……陛下」
そのあと、自分は陛下に呼び出されて、ただひたすら外を眺める陛下の背中を見るしかなかった。
「レイヴァス……この前占星術ができると話しただろ?そしてお前の運命を言わなかった。だが……今だから言わせてもらう。お前は死ぬ、私自身ヴァルツの意見には賛同だったが何度星を見てもお前の死は避けられそうにない……苦しいよ、レイヴァス」
自分はなんて言おうか言葉の本棚をひっくり返しながら探っていた。
「陛下……自分は2万ルビアでこの国に訪れ、残りは3000ルビアしかありませんでした。この国の通貨で換算すれは1500リレンほどですね。生活できないことは明白であり、恐らく血液管理省のブラッド・オブ・バンクで血液を捧げるだけの人生を送っていたと思います。ですがこうして陛下に出会い、侍従長という役職を与えてもらった。言葉が見つからないくらいの幸運です。その幸運で占星術すら超えてみせましょう」
陛下はこちらを向き、頭を下げる。
「へ、陛下!?頭をお上げ……」
「レイヴァス、私はあなたを過小評価していたわ。開戦まで数週間、ずっと私の傍から離れないで……お利口なワンちゃん侍従長なら聞けるわよね?」
「はい!もちろんです!」
そして陛下と共に食事を摂り、陛下の部屋で執務を行い、レイヴァス戦闘軍で問題が起こればタリスタ准将に調整させ、本当に陛下の傍から離れなかった。本人的には一緒にお風呂も入りたかったそうだがさすがにそれは無理と言い、風呂場の前で立っていた。その間にヘルシア閣下に万が一王になった場合に備えて、自分から軍事戦略と政治について教えていた。
そんな幸せな日々はあっという間に過ぎ去っていった。
すみません!普段より更新が遅くなってしまいました…軽い昼寝の後夕食中に更新を思い出しました。戒めとするべく、今日は2話分投稿します。遅れてしまいすみませんでした…
ちなみにですが思い出した経緯は演出表現の良いミステリー系SCP紹介動画を観ていて、この音楽に合いそうなシーン……小説……投稿してない!!という流れです。こんな黒井冥斗ですが、これからもよろしくお願いします!




