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第29話:3ヶ月の軍事的余命の活かし方

総会議室に入る前から喧騒の声が漏れていた。どうやらシンクタンク達も混ざって討論という名の殴り合いをしているようだ。

自分がドアを開けると、陛下以外の全員が敬礼し、自分も敬礼を返す。

「陛下、遅れてすみません」

「いや、むしろタイミングが良かった」

「と、言いますと?」

「前代未聞の事案で閣議がまとまらん。なんとかしろ」

久しぶりのとんでもない無茶ぶりで、頭を悩ませつつ、話が分かるヴァルツ海軍元帥から聞いてみる。葉巻を吸うのを邪魔されたのが気に触ったのか乱雑に書類を持ち上げる。

「なんと言いますか……余命宣告に付き合うかどうかという感じです……我々海軍としては2ヶ月の後に3隻の白桜級で工業地帯を奇襲し、連邦の戦争継続能力を粉砕を提案してるのですが……」

ヴァルツ閣下が静かにドルヴォーフ陸軍元帥に目をやる。ドルヴォーフもコーヒー不足かアルコール不足かご機嫌斜めのようだ。

「私としては3ヶ月間の余命でなんとか陸軍をまとめあげたい所存です。少なくともあと2ヶ月で正規兵と渡り合える徴兵した民間人など現実的では無い」

すると経済産業大臣も発言する。

「現時点ではまだ連邦方面のみが戦場です。その間に戦争遂行能力の拡大をするべく工業地帯の増設と軽工業と農業も忘れてはいけません」

すると今度は帝国国家保安局長官が発言する。その声は冷徹だが彼には心がある。無下に国民の命を捨てさせないのは自分がこの前会った時によく知っているつもりだ。

「既に諜報合戦が始まっており、下手に動けば余命宣告は無くなると我々保安局は見ています。即時和平交渉ないしは軍事作戦という名目で正規軍のほぼ総戦力を最前線に配置すべきかと」

大声でドルヴォーフが言い返す。

「305mm榴弾砲の弾着地点に正規軍を集結させたら、最悪練兵どころじゃなくなるぞ!ヴァルツお前も何とか言ってやれ!」

ヴァルツ海軍元帥は葉巻を吸いながら、書類を見て一言。

「私は海軍の専門家だ」

「貴様!あれだけ重砲を配置するのに予算を提供してくれたと思ったら退散か!?腰抜けめ!」

シンクタンクの方々も「余命ギリギリまで戦力強化派」と「即時戦闘派」に分かれていた。

自分がどうまとめようか悩んでる中でヴァルツ閣下は一つ提案する。

「ドルヴォーフ、確か貴様100個師団を側面打撃軍として運用すると言ったな?」

「あぁ、海岸から回り込んで要塞線を超えて要塞を包囲殲滅する作戦だ」

「その軍を私に譲ってもらえば2ヶ月半待とう」

ドルヴォーフも悩む。そりゃそうだろう。こんな無茶苦茶な要件飲むわけ……

「いいだろう。貴様に託す。軍編成は覚えているな?」

「勿論だとも。軍務大臣はいかがかな?」

軍務大臣はここ最近の疲れが溜まってるせいか面倒くさそうに「任せる」の一言だけ。だがこれはある意味ヴァルツ閣下への信頼の証だ。

「ドレイク閣下はどうですか?」

「致命的な延命策にならず、なおかつ秘匿でやれ。そうすれば協力は惜しまない」

「ありがとうございます。侍従長閣下と陛下はどうですか?」

自分と陛下を目を合わせて、もはやこれ以外道は無いと判断する。

「うむ、許可しよう。帝国国家保安局には意地でも情報漏洩を阻止しろ」

「自分からもそれを願います」

長官はこの世の終わりみたいな溜息を吐き出して、書類を一瞥する。

「射殺許可」

「なに?」

陛下が怒りと疑問の声を投げる。その眼差しは非常に鋭かった。

「私の方針には反しますが完全に情報漏洩を防ぐには疑わしきは罰する。これしか道はありません」

陛下は悩む。明らかに誤認射殺が起きるのが明白だからだ。それは陛下の方針にも反する。

「拘留と尋問なら許可しよう」

「拘留期間は戦時中でよろしいですか?」

「構わん。ちゃんと人道的な扱いを忘れるなよ」

長官は無言で頭を下げる。

そして陛下が次に話を続ける。

「この状況下においてパラディンズの再襲撃は脅威なのは全員分かってると思うが……なにか良い案は?」

するとヴァルツ閣下が素早く挙手し、意見を述べる。

「人間領から来た船には人のみを殺す毒ガス殺菌をしましょう」

「そんなものが?」

陛下は驚きの顔を見せる。危うくカップティーを落としそうになるほどだった。

「海軍で長らく研究して、先日完成しました。ラインルート君が頑張ってくれましたよ」

陛下はしばらく思慮した上で結論付ける。

「2ヶ月半の戦争準備期間の後に軍事作戦を発動する。なおこの間は情報統制と情報封鎖を行い、帝国国家保安局には疑わしい人物には人道的倫理的から見た上での抑留と尋問の許可を与える。パラディンズに関しては海軍に任せる。以上だ」

最低でも2倍以上の戦力と本気で殺り合うなど正気の沙汰ではないと自分でも思っていたがとうとう現実になるとは……しかも要塞線を越えれる数は100個師団のみ、包囲中に連邦方面から更なる数百師団と相対すれば壊滅は間違いない。

会議が終わると全員疲れた顔で部屋を出ていき、自分は陛下にお話をする。

「この戦争勝てますかね……?」

自分に少し目線を合わせた後に、背ける。

「あなた方の働き次第だと私は思うわ。だけど……何より許せないのは罪のない民が死ぬことよ。連邦の国民には手を出さず、財産も奪わないようにして、連邦幹部連中を徹底的に私のサンドバッグにした後に帝国湾に捨ててやります」

陛下はガンギマリの眼でその覚悟を自分に伝えてくる。

「分かりました。生存重視戦略を取りながら、連邦内侵攻時は国民への被害は最小限にするよう徹底します」

「頼んだわよ。侍従長さん」

あれ?なんで自分が戦争指導の役目をしているんだ?

不思議に思いながら、早朝を迎えた時だった。自分に新しい身分が付与されるのをまだ安眠中の自分は知らない。


こんばんは、黒井冥斗です!皆様もお疲れ様です!そしていつもご拝読感謝致します!最近喫茶店で執筆するのが趣味で2時間以内ですがめちゃくちゃ集中できるのでもし執筆とか作業にご興味がある方は試してみるといいかもしれませんね。今夜はもう1話投稿するので今日の軽い夜更かしや明日の登校や出勤の時にお読みください!

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