第23話:無敵の要塞線、君ならどう攻略する?
陛下の部屋の前に、いつも通り、帝国最強の騎士団ムーン・ナイトメアの方々が立っていた。
「陛下に新しい条約提出案を持ちに来た。通してもらえるか?」
「かしこまりました。陛下!レイヴァス侍従長閣下がお見えです!」
「通せ」
と軽い声が聞こえる。
相変わらず豪華絢爛な扉が開かれると陛下は頭を抱えながら仕事半分のような疲労状態だった。
「陛下!大丈夫ですか!?」
「あぁ……問題ない。避難は完了したから、あとは寝かせてくれ……」
よく見るとコーヒーの瓶を5本も飲んだ形跡がある。無茶し過ぎだ。全く……このツンデレ女王様は……
「ここに人間領との不可侵条約の書類を置いておきます。では、陛下は……」
自分は陛下の横に移動し、お姫様抱っこをする。
「キャッ!……レイヴァスお前!」
「このままだと本当に倒れてしまいます。吸血鬼用の滋養強壮のドリンクをお持ちしますのでベッドで大人しく寝ていてください」
陛下を優しく、ベッドに寝かせると陛下は問う。
「私は確かにお前を信頼できるといった。一緒に夜空を見たりもした。でもお前の好意を無下にした事もあるんだぞ!」
「……はぁ。そんなの自分が陛下をお慕いしてるからに決まってますよ。では、ドリンクを用意してきます」
レイヴァスの背中を見送った、私の心臓はドキドキしていた。でも彼は覚えてない……私との最初の出会いを……
私は少し目を瞑るとすぐに眠ってしまった。
私はその後人間達との和平協定を見たがとても現実的ではなかった。不可侵協定などこっちの国民が納得しても、向こうが納得しないだろう。そう考えるとレイヴァスという人間は不思議な存在だ。我々吸血鬼の国に単身で乗り込み、住もうとするなど、普通の人では考えないだろう。きっと彼には彼なりの事情がある。
そう思い、申し訳なさを感じながらレイヴァスにはこの要件は飲めないと伝えつつ、お前がこの国にと私に尽力してくれてるのが最大の不可侵協定だ。伝えておいた。
ミラエスメイド次長はレイヴァス侍従長の為に朝の支度を手伝っていた。
「侍従長閣下、これ以上起きないようであれば陛下に侍従長は永眠したいと態度で示してきたとお伝えしますよ」
自分はミラエスのまたもや駄メイド発言に頭を悩ませながら答える。
「じゃあ起きるよ……」
いつの間にか侍従長の役職を拝命した時は夏だったが今は既に冬に近いづき、ベッドから離れるのが恋しくなる。
着替えを済ませ、陛下から頂いた剣を腰に提げるとミラエス次長の淹れた味と香りが、見事にマッチングした完璧なエスプレッソが出される。
飲みながら軽くミラエスに気になったことを聞いてみることにした。
「ミラエスはメイドの中ではトップ2なの?」
「はい、トップはレーン・ヴァルツメイド長です」
え?ヴァルツって名は……海軍元帥殿の知り合いなんだろうか……
「ヴァルツ海軍元帥との関係はある?」
「確か……妹だとお伺いしたことがあります」
「なるほどね。じゃあ今日の職務は……」
「ドレイク参謀元帥殿がお会いになりたいそうです。前々から侍従本部に伝えていたようでしたがなかなかタイミングが合わなかったので、私が今日入れておきました」
ドレイク参謀元帥か……あまり面識はないが冷徹な狙撃銃のあだ名を持つ吸血鬼だ。油断はできない。
「じゃあ向かおうか」
「はい、私の準備は出来ております」
ミラエスを一通り見てみるが特に武装はしてないようだ。
「ミラエスって武装してるの?」
「メイド服のスカートの中に手榴弾と投げナイフ、あと侍従長閣下だけを眠らせるガスがあります」
なるほど。バトルメイドか……ん?自分だけを眠らせる?
「え、えーと。何故自分を眠らせるの?」
「眠らせないと緊急脱出の際に大声をあげられては困るので」
ミラエスは人間のメイドだ。はっきり言ってそこまで運動神経が……
知らないうちにナイフを向けられ、片手には手榴弾。
「筋肉の速さと力はある程度の相関関係があります。閣下ならお分かりですよね?」
「うん、自分の降参だ……」
そのまま、このメイド次長にいつか殺されるかもと思いながら帝国軍統合参謀本部に向かい、ドレイク参謀元帥とお会いする。
広い執務室には海戦と陸戦の図上演習台が2個ずつ、世界各地の地図、銃砲や剣類など飾ってあり、冷徹な狙撃銃名に相応しかった。
「よく来てくれた。若き頭脳よ。早速だがこれを見てどう思う?」
ドレイク閣下は机の明かりを付けると地図と図面が浮かぶ。地図は見た感じ帝国と連邦。図面の位置からして要塞線か……
「まず、我が国の周辺地図なのは分かります。それを踏まえると隣にある地図は……要塞線の詳細図……!?」
「そうだ、これくらいは簡単だな。この要塞線を見て、閣下ならどう攻略する?」
自分は少し考える。確実に閉鎖できるように要塞線内での隔離が徹底的に可能で最深部は地下70メートル、東西250キロメートル、南北50キロメートル。しかも複数の地雷やトラップ、要塞砲にアリの巣ですらドン引きするほどの張り巡らされた塹壕。
自分は結論を出す。
「要塞線は攻略すべきではないかと。自分の結論です」
参謀元帥の表情が変わり、二人しかいない広い執務室はとんでもなく重い空気に包まれた。
ご拝読感謝します!黒井冥斗です!
無茶をする女王陛下……心配になってしまいますね。自分も今日はコーヒーパワーで乗り切りました。
私事ですが、姿勢が悪く、座って書くと1時間半から2時間程度で腰を痛めてしまうので実は寝ながら書いてます。不便はないのですがコーヒーをスマホまたはパソコンに落としてしまわないか不安な時もあります。
皆様も飲み物こぼしにはご用心を!




